狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

相撲協会の関与と軍の関与

2008-10-07 18:18:41 | 県知事選

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一昨日のエントリー「大相撲八百長訴訟」でこう書いた。

≪(八百長)裁判は原告側が「ウソの八百長の記事で名誉を傷つけられた」という名誉毀損の訴訟であり、八百長の有無を判定する裁判ではない。

従って、「八百長はなかったが、名誉毀損には当たらない」というねじれた原告敗訴だってあり得るはずだ。

同じことが「集団自決訴訟」の判決でもいえて、

集団自決で軍命令はなかったが、名誉毀損には当たらない」という判決もあり得る。

二つの裁判に共通することは物的証拠がなく、いずれも証言に頼っているということ。≫

 

これでは説明不足だが、係争中の「八百長裁判」の原告側は「同協会と、横綱朝青龍や5大関ら名前の挙がった17力士」、つまり相撲協会という組織と力士という個人である

つまり力士個人の名誉の問題と、相撲協会という相撲界全体の名誉の問題に関わる訴訟が複数件係争中なのである。

前者の個人訴訟の場合、ガチンコ相撲と名指しされてた稀勢の里らを除く17名の幕内力士が原告であり、その中にはあの露鵬、白露山も名を連ねているという。

その後露鵬兄弟は大麻事件で相撲協会を解雇されており、原告側から降りるという話もある。

突然の解雇で協会に恨みをもっていると思われる露鵬兄弟が、原告を降りて、被告側(講談社側)に有利な証言をしないという保証は無い。

それに同じく解雇され協会に恨みを持つ若の鵬がつるんだらこのような証言だって成り立つ。

≪露鵬:「原告側に名を連ねたのは、幕内力士のほとんどが連名なのでやむを得なかったが、実際は八百長をしていた。

被告代理人:「具体的に誰と八百長し、金銭はいくら渡したのか」

露鵬:「相手は若の鵬で、同じロシアの後輩なので話がつけやすかった。 金額は一回に付き50万円」≫(仮定の話です)

そして八百長の相手とされる若の鵬がこれを認めれば、両者の証言は一致する。

だが、両者の相撲協会に対する「心の闇」を考えれば、二人の証言の一致だけでは信憑性に欠け、これを補強する金銭授受等の証拠が必要になってくる。

金銭授受の証明には通常は領収証だが、この場合は日付けの誤魔化せない預金通帳に同じ金額の出入金があれば済む。だが、これは期待できない。

結局、裁判官は証人の証言だけでは「心の闇」まで読み取れず、真実は「藪の中」ということになる。

一歩譲って証拠の残った通帳があり、、更に二人が八百長の相談をしている場面を目撃した第三者の証人がいて二人の八百長相撲が立証されたとしよう。

だが、二人の八百長相撲は二人だけの都合で行われており、相撲協会が八百長に関与していたかどうかは別の問題である。

力士にもいろんな人物がいるもので力士全員が全て人格者とは限らないわけで、数ある力士の中で露鵬と若の鵬がたまたま八百長をしたからといって相撲協会が組織的に八百長相撲を行っていたとはいえない。

従って相撲協会は監督責任を問われることはあっても、相撲協会が八百長を指示したという証拠が出ない限り、相撲協会が八百長の法的責任はない。

ここまで書くと当日記を続けて読んでいる読者は先刻ご承知だろうが、この「八百長裁判」は「集団自決裁判」に酷似していることがわかる。 

先ほど「相撲協会は八百長に関与しているかどうかは別の問題である」と書いたが、この場合の「関与」は八百長を指示したという意味である。

ところが「集団自決訴訟」で原告側は、自決に手榴弾等が使用されている以上軍の関与は否定できないとする。 だが、関与にも「善意の関与」と「悪意の関与」があり、「自決命令や強制」を意味する悪意の関与はなかったと主張する。

一方、被告側は手榴弾の配布は悪意の関与であり、当然これが「軍の命令、強制」であると主張する。

このように「関与」という言葉は原告側と被告側では解釈が違うあいまいな言葉である。

 

さて、古い記事だが「週刊現代」出版元の講談社と記事執筆者の武田頼政氏を訴えた相撲協会と力士の記事を引用する。

名誉棄損と講談社など提訴へ  「八百長」報道で相撲協会
 日本相撲協会は8日、東京・両国国技館で緊急の理事会を開き、週刊現代の「八百長疑惑」記事で名誉を傷つけられたとして、同誌の編集長や発行元の講談社などに損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴訟を東京地裁に起こすことを決めた。  原告は同協会と、横綱朝青龍や5大関ら名前の挙がった17力士。今後は賠償請求額を決定し、3月には提訴の見通しという。被告はほかに週刊現代の発行人と、記事を執筆した武田頼政氏。  日本相撲協会が同誌の発売後、個別に力士らを事情聴取し、全員が疑惑を否定。このほど、該当力士へ配布した委任状を回収し、訴訟を起こす意思を確認していた。  同協会の伊佐次啓二弁護士は「放っておいたら(報道が)エスカレートする可能性もあるので、毅然とした対応が必要との声が強かった。力士の何人かは出廷していただくことになると思う」と徹底的に争う姿勢を示した。今後は刑事告訴する可能性もあるという。  週刊現代編集部は「内容には自信を持っており、事実が明らかとなって窮地に追い込まれるのは日本相撲協会の方ではないかと考えている」とのコメントを発表した。
2007/02/08 09:48   【共同通信】

                     ◇

「週刊現代」⇒「沖縄ノート」

講談社⇒岩波書店

と置き換えて、

日本軍⇒相撲協会

と置き換えて見ると、

両裁判とも「名誉毀損」という形を取ってはいるが、

最大の争点であり最大の関心事は、

「協会の八百長への指示、強制」の有無であり、

「軍の自決命令、強制の有無」である。

両裁判で共通点は外にも多々あるが、敢えて一つ挙げると、「真実の相当性」が争点になっていることである。

出版物で名誉を毀損されたと訴えた場合、執筆者として要求されるのは調査義務をどれだけ尽くしているか、真実と信じる相当な理由があったかどうかが争点になる。

二つの裁判の「真実相当性」とは、

「八百長裁判」では、八百長があったかどうかわからないけど、それを信じるに足りる調査をして書いたかどうか。

「集団自決裁判」では、軍の命令があったかどうかは分からないけどやるべきことはやって書いたかどうか。

両裁判とも、この二つがそれぞれ認められれば、「争点」が真実かどうかはさておいて、名誉毀損は免責される。

これが「真実相当性」という分かりにくい概念である。

 

 

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土俵ドロ沼化…真実は藪の中?元若ノ鵬が“八百長”実名

2008-10-07 07:27:56 | 県知事選

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弁護士がテレビのコメンテーターとして登場し始めたのはオウム事件以来ではなかったかと記憶する。

オウムの顧問弁護士青山吉伸 は京都大学在学中一発で難関の司法試験を通った秀才なのに、なんでオウムのような怪しげな宗教の虜になってしまったのか・・・こんな話題がお茶の間を賑わした。

当時、「頭のいいヤツとは一体何をもっていうのか」 という素朴な疑問に答えを見出すことは出来なかった。

オウム事件ですっかり当時のお茶の間の人気者になった灘高校⇒東大といった秀才コースを歩んだ某弁護士(名前は失念、メガネの小太りの)が、「弁護士や裁判官には常識に欠ける人物が多い」と自虐的に言って、次のような裁判官の例を紹介したことを今でも覚えている。

≪殺人容疑者の被告側弁護士が、「被告は仕事を終えると駅の近くの赤提灯に週に三回ほど立ち寄っていた」と論告したら、

裁判官が「被告は本業以外に提灯作りのアルバイトもしていたのか」と尋ねた≫とのこと。

本職の弁護士がテレビで発言したのだから、まんざらデタラメな話だとは思えないが、

常識で言えば笑い話にもならない浮世離れした話題ではある。

赤提灯の例は極端な話だろうが、司法試験合格に全てを犠牲にしたような裁判官や弁護士にはこのような常識に欠ける人物がいるのは事実であろう。 

来年から始まる裁判員制度もこのような「法律バカ」の弊害を少しでも緩和しようという目的だろうが、真実を法廷で解明するということは思ったより困難なことではある。

特に関係者の証言でのみ黒白を争う裁判の場合、証言自体が真実であることを証明することは困難を極める。

映画「羅生門」を数年前再度見たが、人間の証言がいかにあやふやなものであるかを感じさせ、それ(証言)を基に人を裁くことは、神ならぬ身の裁判官には不可能なことではないかとさえ考えさせられた。

原作は芥川龍之介の短編小説『藪の中』だが、同作者の短編小説『羅生門』からも一部内容ととタイトルを借りている。

「藪の中」は、旅に出た若夫婦(森雅之、京マチコ)が、盗人(三船敏郎)に襲われ、検非違使(当時の警察兼裁判官)が事件の目撃者から証言を聞くという構成。

男の死体を発見した木こりや、夫婦を目撃した旅法師、妻の老母などの供述が順番に語られるが、目撃者の証言が微妙に違って検非違使には真実が見えてこない。

目撃者証言の外に当事者の証言も加わるが、夫の見ている前で妻が盗人に犯されたということもあって、妻と盗人二人の証言が違ってくる。

盗人は、自分が男を殺したと言うが、女も、自分が男を殺したと言う。

盗人は、男を解き放して勝負をしたと言うが、妻は、犯されたあと、木に縛り付けられていた夫を刺して、すぐに後を追うつもりだったが、死に切れなかったと言う。

外にもいろんな証言が入り混じり、証言が増えれば増えるほど真実は見えなくなってくる。

誰かが嘘をついているのか、それとも証言者に心の闇が潜んでいるのか。

心の闇とは何か。

証言を聞いた検非違使に証言者達の心の闇まで解明することを求めることはムリであろう。

結局、証言を聞けば聞くほど真実は『藪の中』というのが芥川龍之介の言いたかった事なのだろう

「藪の中」は、青空文庫から無料でダウンロードができます。

 

土俵ドロ沼化…週刊現代に元若ノ鵬が“八百長”実名 (夕刊フジ) 10月6日 16:49 また、ドロ沼の闘いが始まるのか。先月29日、記者会見を開いて自らも八百長相撲に手を染めたことを明かし、「詳しいことは裁判の中で話します。(八百長告発記事で相撲協会と係争中の)週刊現代のために」と古巣を裏切った元幕内・若ノ鵬(20、本名ガクロエフ・ソスラン)の告白記事が6日発売の「週刊現代」に12ページに渡って掲載された。

 その中で、問題の八百長相撲をやった相手として実名をあげられたのが十両の春日錦と大関琴欧洲。5日、時津風親方(元幕内時津海)の引退相撲のため、両国国技館に姿を見せた2人は、申し合わせたように戸惑いの色を浮かべた。

 中でも春日錦は、大相撲界立て直しに全力投球中の武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)と同じ出羽一門のベテランだけに怒り心頭。「全然、身に覚えがないし、なんでオレの名前が週刊誌に出るのか分からない。今年の春場所、彼を怒ったことがあるんですよ。ドテラを着て場所入りしてきたもんですから。力士はちゃんと正装して場所入りしなくてはいけない、と人前で注意したのを逆恨みされたのかな。(春日野)親方には事情を説明しました」と真っ赤な顔で全面否定した。

 2度も勝たせてくれるように頼み、合わせて200万円を支払ったとされる琴欧洲も「まだ(週刊誌は)見ていないけど、全部(事実と)違うよ。優勝した場所で八百長したって書いてあると聞いたけど、一生懸命取ったのに悲しいよ。師匠とは読んだ後、相談する」と血相を変えていた。

 これまで相撲協会は「週刊現代」が八百長記事で力士名が出るたびに巨額の損害賠償と謝罪広告を求めて提訴し、今月3日には横綱朝青龍も相撲協会サイドの証人として出廷している。掲載誌が発売されたばかりで具体的な反応は出ていないが、今回も提訴しないとおかしなことになる。週刊現代は次週も元若ノ鵬の告白を載せることを予告しており、提訴件数が果てしなく増える可能性も。このマイナーな“モグラ叩き”、いつになったら終わるのだろうか。

2008年10月6日 16時49分 夕刊フジ

                    ◇

さて、物的証拠もないまま次々登場する証言者達の心の闇の解明まで裁判官に求めるのは困難だろう。

証言のみの裁判でも、金を渡した方と受け取った方が揃って証言し、通帳等に金銭の授受の記録でも残っておれば「八百長の存在」を立証できるだろう。

だが、実際は被告側の一方的証言のみである。

裁判官は、「名誉毀損の有無」の決着のみで裁判はチョンチョン。

結局「八百長の有無」は藪の中。

証言の真偽の判断を「法律バカ」に求めるのは、八百屋に魚を求めるようなものかも知れない。

 

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