宮古島市の陸上自衛隊「保良訓練場」への弾薬搬入に関し、玉城デニー知事は15日、容認していないとの考えを示した。県庁で記者団に答えた。14日の搬入を受けて出したコメントでは「自衛隊は宮古島市と協議し、事前に情報を共有して搬入準備を進めたと承知している」という認識にとどめ、立場を明確にしていなかった。

 知事は、自衛隊の島しょ配備に関しコメントで「引き続き、地元の理解と協力が得られるよう丁寧な説明や、地元の安心・安全への十分な配慮を求める」と要求している点を挙げ、容認が前提ではないと強調。地元住民らの反対がある中、「配備計画ありきで進めているのは遺憾だ」と述べた。

 搬入に抗議する住民らを県警が強制排除したことには「公権力に排除される方々のことを思うと胸が痛むのは、県民誰でもそうだと思う」と指摘。「国は、国防の政策だからと言って強引にやるべきではない。そこは重視してもらわないと、われわれも認めるわけにはいかない」と述べた。

[断面]波紋呼んだ搬入日コメント

支持層配備反対 不信払う

もともと急患空輸や災害救助評価

 宮古島への陸上自衛隊の弾薬搬入に関し、玉城デニー知事は15日、容認していないと強調し、容認と取られかねない14日のコメントを釈明した。知事の支持層にはミサイル部隊の配備反対が根強い。配備自体に根本から反対していない知事の政治姿勢に不信が膨らむ前に火消しを図った格好だ。配備を巡り県政与党の「オール沖縄」勢力にも立場に違いがあり、知事は難しいかじ取りを迫られている。(政経部・大城大輔、宮古支局・知念豊)

 知事はもともと自衛隊に関し、緊急患者空輸や災害救助などで評価し、一定の理解を示している。一方で「住民の理解が得られないスケジュールありきの部隊配備は反対」とし、「反対」には前提条件が付く。

 14日のコメントは「自衛隊は宮古島市と協議を行い、事前に情報共有しながら搬入の準備を進めたと承知している」とし、市と自衛隊のやりとりについて把握している事実関係を述べるにとどめた。弾薬搬入そのものの是非に「言及していない」(県関係者)。

 コメントの最後で「地元の理解と協力が得られるよう丁寧な説明や配慮を求める」とし、配備には「住民の理解が前提」との意思を示したつもりだったが、分かりにくさは否めない。

 コメントに関し、県政与党関係者は「地元への配慮を重視してきた考えが変節したかのように映り、誤解を招いた。常に丁寧な説明を心掛けるべきだ」と苦言。野党関係者は「自衛隊に反対していない知事としては当然の対応だ」と、逆に「評価」してみせた。

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 難しい対応を迫られているのは、知事と足並みをそろえてきた座喜味一幸市長も同様だ。これまで「自衛隊容認だが、安全保障は住民の理解が必要。国には丁寧な説明を求める」としていたものの、今回は「行政手続き上、瑕疵(かし)はなく、やむを得ない」として平良港使用を許可した。

 防衛省は市に搬入日時などを事前に伝えつつ、公表しないよう求め、それに沿う形で市側は記者会見で明らかにしなかった。革新系支持者には公然と座喜味市長を批判する声も上がる。

 結果的に爆発物を積んだ陸自のトラックが人口の多い市街地を、住民が知らぬまま通過することとなり、市民からは反発の声も上がった。県幹部は「オール沖縄は左から右までいる。配備ありきでは駄目だと住民に明確に示す必要があった」と自省した。

(写図説明)宮古島市への陸自弾薬搬入に関し、容認していないと説明する玉城デニー知事=15日、県庁