【八重山】八重山戦争マラリアを語り継ぐ会(潮平正道会長)は15日、証言集「命の輝きを求めて-マラリアを生き抜いた人々の証言」を発刊した。ことしは結成10周年で、証言をまとめたのは初めて。戦時中、石垣島を中心にマラリアに侵されて家族を失うなどつらい体験をした36人から聞き取り、手記を含めて38編をつづっている。

 自らも体験者で手記を寄せている潮平会長らが市内で記者会見。軍命でマラリア有病地に避難を強いられ、八重山全体で3600人余が犠牲になったことを挙げて、「証言を集めて残さないと、歴史の中の重要な部分が消えてしまうという危機感がある。後世に残すことを決意し、努力した」と意義を語った。

 当初は2015年の戦後70周年に刊行を目指した記念事業。証言の掘り起こしという課題と向き合って13年に着手したが、思うように計画が進まず7年越しの発刊になった。証言者のうち9人が完成を待たずに他界したという。

 編集長を担った西村幸吉さんは「当事者が戦争体験を語るのはとてもつらかったと思う。しかし後世のためにと頼み込んで話してもらった。再び戦火が起きることがないようにしたい」と引き締めた。

 江川義久副会長は「沖縄本島や県外の人に読んでもらい、戦争マラリアの理解を深めてほしい」と強調。玉城功一前会長は「戦中、戦後を生き抜いた証言者の命の輝きに触れることができる」と活用を呼び掛けた。

 県や市立図書館、市内小中高校に配布するほか、市内書店で1冊千円(税込み)で販売している。