23日の沖縄全戦没者追悼式では、玉城デニー知事の平和宣言に会場の外にいた市民から拍手が送られた一方、岸田文雄首相があいさつすると「辺野古の海を守れ」など抗議の声が相次いだ。3年ぶりの首相の出席で公園内の警備態勢が厳重になり、お年寄りや足に障がいがある人が移動に苦労する場面もあった。

 式典会場は二重の規制線が張られ、市民は十数メートル離れた場所から知事や出席者のあいさつに耳を傾けた。

 首相がマイクに向かうと、市民から「帰れ」と短いやじが響いた。「沖縄が経験した戦争を心に刻み、発展に全力を尽くす」と話す間も「基地が県民生活を脅かしている」「銭で(県民を)釣るな」などの声が次々と上がった。

 プラカードを掲げながら声を上げる市民の前で県職員が「静粛に」と書かれたボードで注意を促し、警察官数人が前に立ちはだかるなど一時騒然とする場面もあった。

 新垣善典さん(68)=那覇市=は「これまでの首相の発言と同じ。自分の言葉で話してほしい。沖縄の発展と言うが、新基地建設の強行やミサイル配備など、言っていることとやっていることが違う」と憤った。

 首相の移動で規制線が多く張られたため、高齢者が芝生の斜面など足場の悪い道を歩かざるを得なくなる場面も。昨年に続き来場した70代の女性は「式典も離れた場所でしか聞けない。誰のための追悼式か。このままでは県民が公園の外に追い出されるのでは」と不満を口にした。(社会部・銘苅一哲、矢野悠希)

(写図説明)追悼式会場周辺に集まり、プラカードを掲げる人たち=23日午前、糸満市摩文仁・平和祈念公園