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次に引用するのは、照屋寛徳議員の「集団自決の検定意見」を巡る国会質疑である。
「悪魔の証明」に関わる重要な質疑なので次に抜粋引用する。
(2007年)
平成十九年九月二十日提出
質問第三三号
高校歴史教科書の検定に関する質問主意書
提出者 照屋寛徳
文部科学省が、高校歴史教科書の沖縄戦における「集団自決」について、日本軍の命令・強制・誘導をめぐる記述を、平成十八年度の検定で削除・修正させた問題が、沖縄において大きな社会問題に発展している。
唯一、地上戦が繰り広げられた悲惨な沖縄戦の実相については、これまで多くの住民や戦史研究者らから、様々に語られている。悲惨な沖縄戦の実相を全て語り尽くすことは、およそ不可能である。しかしながら、実相の一部を象徴的に表現するのが「鉄の暴風」「軍民混在の戦場」「正規軍よりも一般住民の死者が多かった」「住民虐殺」「『集団自決』への日本軍の命令・強制・誘導」などである。
ところが、教科用図書検定調査審議会(以下、教科書審議会という)では、文部科学省の教科書調査官が、検定意見の原案を作成・提示・説明し、原案どおりの結果となった。(略)沖縄戦においては、日本軍の命令・強制・誘導などによって「集団自決」が起こったことは紛れもない事実である。現に、日本軍によって「集団自決」を強いられた者が生存し、証言していることからも明らかである。
(略)沖縄戦の実相を歪曲・改ざんし、歴史の真実を教科書から抹消してはならない。政府は、教科書から「集団自決」における軍命の事実を削除・修正するように求める検定意見を速やかに撒回し、記述の復活を認めるべきである。
来る九月二九日、沖縄では「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が、五万人以上の規模で開催される予定である。なお、沖縄県議会や県内全ての市町村議会において、検定意見の撤回と記述の復活を求める意見書が採択されている。
以下、質問する。
一 平成十八年度の検定を担当した教科書審議会では、「集団自決」の記述について、審議委員間の話し合い、審議委員からの意見申し出があったのか。その有無を明らかにした上で、審議内容、意見内容を具体的に示されたい。また、審議委員からの意見申し出が全くなかったのであれば、審議実態がなく文部科学省の教科書調査官の原案どおりの検定結果になったものと理解するが、これに対する政府の見解を明らかにされたい。
二伊吹文明文部科学大臣は、「文部科学省の役人も、安倍首相や文科大臣としても、検定には一言も容喙できない仕組みで教科書検定は行われている」との発言を繰り返している。実際の教科書審議会では、文部科学省の役人が発案・作成・提示・説明した調査意見どおり、追認されたのが実態だと考えるが、政府の見解を示されたい。
三 政府は、沖縄戦における「集団自決」について、日本軍の命令・強制・誘導があったと考えるのか、見解を示されたい。
四 教科用図書検定規則(以下、検定規則という)第十三条一項でいう「誤った事実の記載」とは、どのような意味か。具体例を列挙した上で、政府の見解を示されたい。
五 沖縄戦における「集団自決」への日本軍の命令・強制・誘導が、一切存在しなかったかのように教科書に記載することは、明らかに、同項でいう「誤った事実の記載」に該当するのではないか。これに対する政府の見解を明らかにされたい。
六 検定規則第十三条四項では、検定を経た教科書に関する訂正申請勧告権が、文部科学大臣に付与されている旨、明記されている。同項は、いつから明定されたのか。明定された理由、明定後、今日まで文部科学大臣が訂正申請勧告権を発動した具体例を明らかにされたい。
七 沖縄戦における「集団自決」への軍命は明らかであり、動かし難い真実である。従って、「集団自決」への軍命の存在を否定するかのような教科書の記述は、検定規則第十三条一項の「誤った事実の記載」であり、同条四項に基づき、文部科学大臣は訂正申請勧告すべきだと考えるが、政府の見解を示されたい。
八 検定規則第十三条二項でいうT学習を進める上に支障となる記載」とは、どのようなものか、具体例を示されたい。また、検定を経た教科書に、沖縄戦における「集団自決」への日本軍の命令・強制・誘導が、一切なかったかのように記述することは、同項に定める「学習を進める上に支障となる記載」に該当すると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。
衆議員議員照屋寛徳君提出高校歴史教科書の検定に関する質問に対する答弁書
一及び二について
平成十八年度の日本史教科書の検定においては、文部科学省の教科書調査官が教科用図書検定調査審議会(以下「審議会」という。)の審議のための資料として調査意見書を審議会に提出しており、当該調査意見書において、沖縄における集団自決に関する記述の一部について、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」と指摘した。審議会では、当該指摘を踏まえ、調査審議を行った結果、審議会の委員から特段の異論はなく、当該指摘と同じ内容の検定意見を付すことが適当としたものである。
(略)
三について
平成十八年度の日本史教科書の検定意見は、沖縄における集団自決について、旧日本軍の関与を否定するものではなく、不幸にも集団自決された沖縄の住民のすべてに対して、自決の軍命令が下されたか否かを断定できないという考えに基づいて付されたものである。
なお、沖縄戦における住民の犠牲者のうち、戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)の適用上、過去に戦闘参加者と認定されたものについて、その過程で軍命令があったとされた事例がある。
(略)
五及び七について ′
平成十八年度の日本史教科書の検定決定後の記述については、沖縄における集団自決について、旧日本軍の関与が一切存在しなかったとする記載はなく、御指摘はいずれも当たらないものと考える。
(略)
★
照屋寛徳議員の質問と、それに対する政府側答弁を抜粋して解説しよう。
照屋議員の質問
「前文 沖縄戦においては、日本軍の命令・強制・誘導などによって「集団自決」が起こったことは紛れもない事実である。現に、日本軍によって「集団自決」を強いられた者が生存し、証言していることからも明らかである。」
質問の形式を取っていないので政府側は答弁していないが、これは挙証責任のある照屋議員が、これを無視して「紛れもない事実である」とか「(証言者が)生存し、証言していることからも明らかである」などと自分の主張を恣意的に述べているに過ぎない。つまり照屋議員は「悪魔の証明」でいう「軍命派」の挙証責任を果たしていない。しかもその後、2022年5月現在に至っても客観的に「軍命」を立証できる証人・証拠は皆無である。
結局、照屋寛徳議員は「軍命派」であるにもかかわず挙証責任を怠ったまま、国会質問に立ったのである。
照屋議員の質問
「五 沖縄戦における「集団自決」への日本軍の命令・強制・誘導が、一切存在しなかったかのように教科書に記載することは、明らかに、同項でいう「誤った事実の記載」に該当するのではないか。これに対する政府の見解を明らかにされたい。
「七 沖縄戦における「集団自決」への軍命は明らかであり、動かし難い真実である。従って、「集団自決」への軍命の存在を否定するかのような教科書の記述は、検定規則第十三条一項の「誤った事実の記載」であり、同条四項に基づき、文部科学大臣は訂正申請勧告すべきだと考えるが、政府の見解を示されたい。」
質問三、五に対する政府側答弁
「五及び七について ′
平成十八年度の日本史教科書の検定決定後の記述については、沖縄における集団自決について、旧日本軍の関与が一切存在しなかったとする記載はなく、御指摘はいずれも当たらないものと考える。」
つまり従来の教科書には「旧日本軍の関与が一切存在しなかった」と言う記載はない。 照屋議員はこの事実を根拠に「誤った記述の記載」と断定しているが、これこそが「○○は存在しない」ことを事実として立証する「悪魔の証明」そのものである。
しかも同じく質問の形式を取っていないので、直接の政府答弁はないが「沖縄戦における「集団自決」への軍命は明らかであり、動かし難い真実」などと挙証責任を無視した説明である。
照屋議員の質問
「三 政府は、沖縄戦における「集団自決」について、日本軍の命令・強制・誘導があったと考えるのか、見解を示されたい。」
政府側答弁
「三について
平成十八年度の日本史教科書の検定意見は、沖縄における集団自決について、旧日本軍の関与を否定するものではなく、不幸にも集団自決された沖縄の住民のすべてに対して、自決の軍命令が下されたか否かを断定できないという考えに基づいて付されたものである。
なお、沖縄戦における住民の犠牲者のうち、戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)の適用上、過去に戦闘参加者と認定されたものについて、その過程で軍命令があったとされた事例がある。」
「軍の関与」に関し「慰安婦問題」で同じ問題があった。「慰安婦問題」では軍による慰安婦の強制連行の有無が争点であるが、「関与は認める」と言う曖昧な意見が、問題を混乱させた。 軍が利用した慰安所であるのが事実である以上「軍の関与」は当然である。だが、「軍の強制連行」とは何の関係もない。
「集団自決」の場合も沖縄戦の最中に起きた出来事であり、自決した住民の中に手りゅう弾による死亡者も数人いた。そのため、「軍の関与」を認めたのだろうが、これも「軍の弾薬管理の不備」の責任を問われることはあるとしても、集団自決の「軍の命令」とは何の関係もない。しかし、政府が沖縄メディアの誇大報道に萎縮したのか、「関与」を認めたのは残念である。
ただ、政府側答弁の中で注目すべきは、「戦闘参加者」に関わる次の文言である。
「戦傷病者戦没者遺族等援護法の、適用上、過去に戦闘参加者と認定されたものにに戦闘参加者と認定されたものについて、その過程で軍命令があったとされた事例がある。」
戦傷病者戦没者遺族等援護法に関しては、第十章で証明した通り、「政府の歴史捏造と援護法のカラクリ」こそが、「集団自決」に於ける軍命否定の決定的証拠になるのである。