お恥ずかしい話だが、始まってからずっと「いつになったらアルプススタンドを走るんだろう?」と思って観ていた。アルプススタンドのはしり方だとばかり思っていた題名が、端の方だと気づいたのは声をつぶした熱血教師がもっと前に来て応援しろとしつこく説教したからだ。
原作は兵庫県の高校演劇の台本だと知って驚いた。
そう言われてみれば高校演劇らしい題材だと納得。それにしても高校野球あるある的な裏話を良くぞ物語にまとめ上げたと思う。演劇部の顧問先生が台本を書いたのかもしれないが、称賛されるべき作劇だ。
映画も舞台的な設定を意識して、アルプススタンド以外に映るのはトイレ前の通路とベンチだけ。映画としての広がりは吹奏楽部が奏でる応援団の音くらいか。
端の方に座る4人以外には前述した熱血教師と吹部部長と部員2名の8人しか台詞は無い。その辺も演劇っぽい演出を崩すことは無い。
自分の生き方を「しょうがない」とあきらめていた彼らが、いつしか前のめりになって声を張り上げ応援する姿がとっても良い。一度も映ることない野球グランドで汗にまみれて白球を追う姿が見えてくるような演出は、映画だからこそなかなかその勇気を持つのは難しい。個人的には地方予選の一回戦敗退のお話でいいと思う。その方が、一層現実的で親近感いっぱいだ。
映画に限らず見世物の作り方に一石投じるような快作だ。