ここより先は汚染地帯となり、防疫服を着用することになります。
つなぎの防疫服を着て、手袋を2重にはめ長靴、ゴーグル、マスクを着用し、隙間にテープを巻いて進みます。
当然、デジカメなどをポケットから取り出すこともできない状態なので写真はありません。
ここの養鶏場は31万羽を飼育しており、まずは規模の大きさに驚きました。
31万羽と言ってもピンと来ませんが、1人で1日平均0.5個くらいの卵を食べるようですので、鶏が平均で1日1個産むとすると、62万人分の卵を毎日生産していることになります。
これを4日で殺処分するとなると24時間連続作業で、1分間に54羽殺さなければならないことになります。
だから、交代で24時間体制をとって作業することになるのです。
なぜ、急ぐかと言えば、収束しない限り、近くの養鶏場の卵も出荷できなくなり、何百万人分の卵の需給がストップしたままになります。
また、ウィルスが増殖し密度が増せば被害がさらに拡大する可能性もありますし、変異して人間にも感染する形態に変化する可能性も否定できません。
わたしの場合、実作業は、22時~2時の4時間ぶっ続けで行いました。
ポリバケツ(ゴミを出すための大きいヤツね)に20羽ずつ入られれた鶏に炭酸ガスを10秒噴射しふたをかけて窒息させます。
それをフレコンに投入する仕事をしました。(仕事は選べません)
殺し方については、非常に効率的だと感じました。
炭酸ガスを注入することにより急激に酸素の濃度を下げ二酸化炭素の濃度をあげると、能動的に血液中の酸素が空気中に放出され、二酸化炭素が血液中にとけ込むため、呼吸と逆の現象が起こり、速やかに窒息します。
首を絞めて呼吸を出来なくした場合は、血液中の酸素は残ったままになるので窒息するまで時間が長くなります。
つまり、死ぬまでの時間は、首を絞めるより短くて済むということです。
また、残酷な行為に気分が悪くなってしまうだろうかと心配していましたが、そのようなことはありませんでした。
すでに水とえさは経たれていて、空のえさ場や水場をつついている鶏たち。
皆同じ姿をしていて、遺伝的に偏差がないため、ほおっておいても強毒性インフルエンザで全滅することは明らかです。
そうなると、巨大なインフルエンザウイルス製造工場と化してしまうので、一刻も早く楽にしてやることが鳥にも人間にも一番良いと思われました。
ハードな作業に冬の夜中にもかかわらず発汗しましたが、防疫服の気密性が高いので気化熱がなく冷えても寒くなりませんでした。
作業場を離れるときは、全身を消毒され、うがい手荒いを何度もさせられて、消毒臭くなりました。
最後に健康診断を受けてタミフルをもらって帰還です。
作業用の防護マスクでは、ウィルスは通し放題だから、タミフルの予防的投与をしないと防げないと思いました。
貴重な体験だと思うのでメモ程度に記載です。