ニコライとは、ロシア最後の皇帝となったニコライ2世である。
開国間もない日本にやってきた皇太子ニコライに、警備の巡査がサーベルで切りつける事件が発生した!
世に言う大津事件である。
シベリア鉄道を建設しアジア進出の野望を着々と実行しつつある大国ロシアの前には風前の塵のごとき小国日本は、滅亡の危機に見舞われる。
大津事件が起きるまでの百ページほどは、ニコライの歓迎の記録を読まされているようで、かなり退屈でした。もう読むのを辞めようかと思ったほどでした。
しかし、大津事件が起きてからは、やはり読みごたえがありました。
特に、戦争を未然に防ぎ国家存続を図るため犯人を死刑にしたい政府と、立憲国家としての正義を貫き列強に肩を並べる国と認められるためにも法律に基づき無期懲役としたい司法の争いが読み応えありです。
司法に圧力をかける政府と、独立を保つために抵抗する司法の駆け引きは、政治と法の在り方について考えさせられます。そこを読むだけで、読んでよかったと思いました。
最後に、犯人とそれをとらえた車夫たちとニコライ2世の顛末が記されていますが、全員が不幸になってしまったのには愕然とするしかありません。