何度もドラマ化された名作。
自分は、心理描写が多い小説を好まないのですが、これだけ複雑な心理を丁寧に描写されると引き込まれてしまわざるを得ないという感じでした。
一人の人間の中で、矛盾した心理が重なるように動いていく様子がリアルです。
ドラマなどでは、こういう描写は無理だろうと思いながら読みました。
客観的に見れば模範的な家族が、一つの事件をきっかけに、歯車が狂っていきます、主人公の陽子の何事にも負けず明るい性格が、凍り付く瞬間まで描かれています。
清く正しく逞しい心の氷点とは。
複雑に揺れ動く人々の心に救いがあるのか。
いろいろな感じ方があるかと思いますが、わたしは、人の心の不完全さが愛おしくなりました。