むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ (河出文庫)

2024年11月01日 | 読書
 前作『サピエンス全史』では、我々ホモサピエンスが、知能も体力も上回る他の人類を凌駕し、生き残り栄えてきたかを明らかにしました。この本では、さらにその未来・可能性を考察する内容となっています。
 未来の可能性を考えていくことは、容易ではなく、半分以上を過去のおさらい、つまりサピエンス全史の内容の説明になっています。すなわち、ホモサピエンスの大きな革命である「認知革命」「農業革命」「産業革命」です。その中で特に重要なのは「認知革命」ですが、それにより、お互いに顔も知らない大勢の人間が協力し合うことができるようになりました。さらに「農業革命」により人口の爆発的な増加、「産業革命」による多様な価値観が創造されてきました。その辺までは、すでに『サピエンス全史』で読んでいた内容なのでたいくつでしたが、「人間至上主義」の登場から面白くなりました。
 人間至上主義は科学と提携を基礎とすることにより、理性と情動、研究所と美術館、工場とマーケットの微妙なバランスを保つことができているのです。
 しかし、現在、それが「データ至上主義」の登場により脅かされています。すべてのものがアルゴリズムで動いている(個人の感情や意志までも)というのです。個人の遺伝子配列、検索履歴、行動履歴などのデータを収集することにより、自分より自分のことをよく知るアルゴリズムが形成させることが可能になってきています。
 そして、すべてのモノのインターネットが完成すれば、人間至上主義は意味がなくなり、人間は、その構築者からチップとなり、さらにデータでしかなくなってしまうというのです。
 また、一部のエリートは、自分自身をアップデートすることにより、超人類・ホモデウスに進化し、無用階級と化したサピエンスを支配するようになるかもというのが、一つの可能性として提示されていました。
 冒頭に、人類は、飢饉、戦争、感染症を克服して、新しい段階に入ったとなっていますが、本書が出版されてからすぐに、コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻が起こり、文庫版では、これらは完璧に人災であり、人間の愚かさの表れだと嘆いています。しかしながら、新しい危機に対して結束して、解決に迎える兆しも相変わらず見えており、逆説的ながら未来への希望もつづいているのです。
 カーツワイルが書いた『シンギュラリティは近い』をややマイルドにし、別の可能性を示唆したところが面白いと思うので、興味がある人は一読の価値ありです。


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2 コメント

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>言語と道具 (鉄鋼材料エンジニアさん) (タック(takx007))
2024-11-02 20:21:32
AIなどの発展により大きく世界が変わってきていますが、結局は、意識無き知能が宇宙を支配できるのか? が焦点になってくると思います。
人間の意識のアルゴリズムは、まったく解明されていないところが、今の科学のネックとなっていますね。
原付バイクが普及しても100m10秒を切る陸上選手の価値があるように、AIがチェスの世界チャンピオンを負かせても、チャンピオンはチャンピオンなのでしょう。
人は、完全なものより不完全なものの方が好きなのかもしれません。そのあたりが、今後の政界が予測通りにいかないカギになりそうだと考えています。
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言語と道具 (鉄鋼材料エンジニア)
2024-11-02 10:26:13
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、トレードオフ関係の全体最適化に関わる様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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