ススキは「芒」と書くが「草冠にほろぶ」と教えられる。なんとも気の毒な構成になっている。イネ科の多年草で荒地にでも繁茂し大群落を作る。背丈は2㍍ほどもあり、あきの七草の一つとして飾られる姿はほかのそれよりよく知られている。また、有用植物として茎葉は古くから屋根を葺くのに用いられた。子供のころには近所で見かけたが今では姿が消えた。
中州に群生するススキ、穂先が光り輝いていた勢いはいつしか時を重ね、翁の風貌を感じるススキとなり、優しい黄金色の波となって揺れている。人の一生にも似ているように感じる。まもなく今年の勤めを終える。この群生は数百㍍も続いているが、群生の手前が雑草や雑木にふさがれ容易に近づけないこともあり、切り取る人を見たことがない。それだけに自然のままでその生涯を終える。
まもなく宿根からの新芽が生ずる。成長すると青い葉となって夏の暑さに立ち向かう。青い葉のススキを「青芒」として夏の季語という。ただススキといえば秋の季語。昔の人は供華にとして捧げたススキに月の神が降りてくると信じたという。ススキは古くから人のそばにあったことが伺える。
黄金色となって風に吹かれるススキ、色変わりはしているがいつもの冬場のそれに比べれると力が残っているのか、しおれた姿でなく全体がびしっとしてるように見える。枯れススキ「俺は川原の枯薄 同じお前も彼薄」の歌のように哀愁をおびたススキもいい風情を醸し出すのだが、もう少し待ってみよう。