全国の小学6年と中学3年の全員を対象に行われ、昨年は約77億円、今回は約58億円もの費用がかかり、しかも、その結果について情報公開の賛否・可否でゆれる全国学力テスト。
そもそも、各界や教師にも批判があり、マスコミの社説で「もう やめたら」とも指摘される。
それでも、文科省は昨日24日、「来年も学校別公表禁止、実施要領を決定」したという。
●鳥取/「学テ」公開情報、違反利用は学校ランクのネット掲載、学力上位地区PR 鳥取県教委 「お願いするしか」
●埼玉/学力テスト:埼玉県情報公開審が開示答申
●秋田/学力テスト公表めぐり平行線 秋田県教委と市町村教委
●全国学テ、来年も学校別公表禁止 文科省、実施要領を決定
●結果提供時の管理徹底を=学テ実施要領を発表-文科省
●実施要領にデータ制限明記せず 全国学力テストで文科省
●学力テスト もうやめてはどうか
●全国学力テスト 毎年続ける必要あるのか
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鳥取県教委 「お願いするしか」 2008年12月18日 読売新聞
鳥取県が来年度以降の全国学力テスト結果を開示する条件として、改正に取り組んできた情報公開条例。開示情報の使用に「配慮」を求める規定を追加したことには、「何をどう配慮すればいいのか」「どんな指導を受けるのか」などの疑問の声も多い。条例の運用方法は「まだ白紙に近い」(県教委)状態だが、水面下では条例違反のケースを想定した検討が進んでおり、今後、改正条例の是非を巡る議論が再燃しそうだ。
想定される条例違反を挙げると――。2009年のある日、ネット掲示板を主宰する男性が、鳥取県庁を訪れ、学力テストの学校別結果の開示を請求した。動機は興味本位だが、その目的は問われない。問題はその後だ。男性が開示情報を元に学校ランキングをネットに掲載すると、県教委から電話がかかった。「直ちに掲載を中止して下さい」
県教委によると、学校ランキングのネット掲載は理由がどうあれ、条例違反とみなされる。掲示板に下位校を中傷する書き込みが集中し、児童・生徒の動揺が想定されるためだ。
報道目的でも、学校別結果の掲載、放送が、「子どもたちが傷つく」との理由で違反になる可能性がある。県教委幹部は「いじめの件数とテスト結果の両方を並べ、相関を検証する記事などを掲載するのは違反と言えないかもしれない」と話すが、学校別結果を報道した場合は、責任者に事情を聞くこともあるという。
商業利用はどうか。マンション販売業者が、学校別成績を載せたチラシを配り「学力上位の校区に立地」とPRするケースや、学習塾が成績の低い校区内で成績一覧を配って生徒を集中的に募集する場合も、違反になる見込みだ。
県教委の担当者は「配慮規定といっても強制力はなく、お願いにすぎない。表現の自由や知る権利には抵触しない」と強調する。
しかし、鳥取県知事時代に情報公開条例を制定した片山善博・慶応大教授(地方自治論)は「情報の使い道を制限する配慮規定は、住民による情報の共有を阻害し、開示で不都合なことが起きた場合の責任を開示請求者に押し付けるものだ」と批判している。
●学力テスト:埼玉県情報公開審が開示答申 毎日 2008.12.24
全国学力テストの市区町村別と学校別結果について、埼玉県情報公開審査会は24日、県教委に「開示すべきだ」と答申した。開示答申は、都道府県レベルでは鳥取県に次ぎ2番目。答申に拘束力はないが、県教委の対応が注目される。開示を巡る各自治体の動きにも影響を与えそうだ。
埼玉県によると、07年10月、県民から県教委へ07年度全国学力テストの市区町村別と学校別結果の開示請求があった。県教委は「文部科学省の実施要領は、都道府県教委が市区町村別、学校別結果を開示しないよう定めている。開示は序列化や過度の競争につながる恐れがある」などとして不開示を決定した。
異議申し立てを受けた県教委が今年3月、審査会に諮問し、審査会は序列化などの恐れについて「具体的なものになっているといえず認められない」と判断した。
答申を受け、上田清司知事は24日の定例会見で「できるだけ発表すればいい」と述べた。子供たちの名前は公表されず、過度な競争や序列化にならないとしたうえで「むしろ教委や学校長の力(の差)が見えるのを嫌がっている人がいるんじゃないか」と指摘した。
島村和男県教育長は毎日新聞の取材に「対応はこれから検討する」としつつ、「市町村別、学校別結果を発表しない約束で各市町村教委に参加を呼びかけた。県教委には約束を守る責任がある」と話し、開示に否定的な認識を示した。
【和田憲二】
●学力テスト公表めぐり平行線 秋田県教委と市町村教委 2008年12月23日火曜日
秋田県教委は22日、臨時の全県市町村教育委員長・教育長会議を開き、来年度の全国学力テストの成績公表について協議した。県教委は平均正答率の公表を強く迫ったが、市町村教委に理解を示す声はなく、議論は平行線をたどった。
県教委は、公表は市町村教委の判断に任せるとしながらも、(1)数値を示すことで結果が分かりやすく伝わる(2)保護者や地域の関心が高まる―など、平均正答率を明らかにする利点を強調した。
根岸均教育長は「運動会や文化祭だけでなく、学力向上という教育の本丸でも地域、保護者の協力を得るには情報共有が必要。過度な競争につながるとの懸念は、さまつな問題だ」と訴えた。
これに対し、東成瀬村の鶴飼孝教育長は「序列化という副作用を知りながら、なぜ数値公表に固執するのか」と反発。横手市の高橋準一教育長は「2回のテストで秋田県の全国的な位置はもう分かった。来年度からテストに参加しないことも選択肢では」と指摘した。
文部科学省の専門家会議がまとめた実施要領の改善案についても、両者の意見は対立。新たに「調査結果の一層の活用」との言葉が盛り込まれ、数値公表へ流れが変わったと主張する県教委に対し、北秋田市の三沢仁教育長は「『平均正答率にこだわることなく』との文言もある。逆の解釈をしてないか」と応酬した。
県教委は今年10月、市町村別成績の情報公開請求に対し、市町村名を伏せて平均正答率の数値のみを開示している。
●全国学テ、来年も学校別公表禁止 文科省、実施要領を決定 2008/12/24 17:26 【共同通信】
文部科学省は24日、来年4月の全国学力テストの実施要領を決定、各教育委員会に通知した。都道府県教委が市町村別や学校別の結果を、市町村教委が学校別の結果を公表するのは、序列化や過度な競争につながるとし引き続き禁止した。
結果公表では、大阪府の橋下徹知事や秋田県教委が、市町村別結果を部分開示。鳥取県は来年度から市町村別・学校別結果が開示できるよう情報公開条例を改正した。禁止事項への反発も予想されるが、文科省は「テストの趣旨を理解してもらえるよう努力する」としている。
橋下知事は府教委の提供で結果を開示したが、実施要領は、教委が関係機関に結果などを提供する際は「関係機関も実施要領を守ることが前提」と新たに規定した。
文科省の専門家会議は自治体の要望に応じて、一部資料を提供しなくても良いという資料提供の弾力化に言及していたが、同省は「責任回避のためという誤解を招く」として、実施要領に盛り込まなかった。
●結果提供時の管理徹底を=学テ実施要領を発表-文科省 時事 2008/12/24-17:52
結果の取り扱いが各地で議論となっている全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)について、文部科学省は24日、2009年度の実施要領を発表した。この中で、教育委員会、学校が外部にテストのデータを提供する場合は、要領通りの取り扱いが守られるよう管理徹底を求めた。市町村、学校別の結果公表は従来通り、各市町村教委、学校に委ねるとした。
文科省は外部提供の具体例として、都道府県教委が知事部局にデータを渡したり、研究者に分析を依頼したりする状況を想定。「各教委、学校は、提供先において要領の趣旨に基づいた取り扱いが行われるよう必要な措置を講ずる」と定めた。
●実施要領にデータ制限明記せず 全国学力テストで文科省 サンケイ 2008.12.24 20:31
文部科学省は24日、全国学力テストの来年度の実施要領を決定した。都道府県が市町村名と学校名を明らかにして成績を公表することを引き続き禁止し、調査結果の管理徹底などを求める内容で、同日付で各教育委員会に通知した。
15日の有識者会議で了承された方針に沿ったもの。方針には各教委などへの調査結果提供について、「学力テストの目的に留意しつつ、弾力的な対応を可能とする」とした表現があったが、実施要領には盛り込まれなかった。
この方針で、文科省は都道府県教委の要望に応じて提供データを制限することを検討していたが、大阪府の橋下徹知事らが「データの公表、非公表の判断を教委に丸投げするものだ」として反発。文科省は「地方に責任を押しつけるという誤解を招いた」として明記を見送ったが、「教委から相談を受ければ弾力的な対応は行う」としている。
結果公表では、橋下知事や秋田県教委が市町村別結果を部分開示し、鳥取県は来年度から開示できるよう情報公開条例を改正した。文科省は「テストの趣旨を理解してもらえるよう努力する」としている。
●学力テスト もうやめてはどうか 中日 2008年12月20日
全国学力テストは子供の学力向上に役立っているのか疑わしい。詳細な成績を公表すれば自治体や学校を序列化する懸念も消えない。文部科学省は来年度も続けるというが、もうやめてはどうか。
小学六年と中学三年を対象にした全国一斉学力テストは来年度で復活してから三回目となる。文科省は成績の扱いについて、市町村別や学校別での公表を禁じた現行の実施要領を維持するという。
これには橋下徹大阪府知事が怒っている。橋下知事は十月、市町村別データの一部を実名で公表した。住民の目に触れさせて自治体を奮起させ、学力向上につなげたいとの狙いからだ。
学力テストは全国規模で学力状況を調べ、学校現場や教育委員会の課題を明らかにすることが目的という。しかし、肝心の子供の学力向上に役立っているのか。
昨年と今年で得られた傾向に大きな変化はなかった。データが膨大で分析に時間がかかり、テストを受けた子供に利用しにくいという問題も浮上した。昨年は「授業の中で活用した」学校は小中学校とも半数に至らなかった。
テストを学力向上に結びつけるとしたら、結果を詳細に分析して対策を講じ、そしてあらためて検証していくのが手順だろう。
公立小中学校の設置者は市町村だが、都道府県教委が予算と人事権を握っており、市町村のできることは限られる。都道府県は結果を分析し、成績不振だった市町村に対策をとったのだろうか。
具体的には財政的支援だろう。少人数教育や習熟度別指導を行うには人員がいる。それなのに、市町村別で公表すれば、序列だけが独り歩きする。都道府県別の平均点でさえ“ランキング”化し、都道府県を一喜一憂させている。
かつての全国テストが中止になった要因に、先生が誤答を指さして子供に気づかせ、成績を上げようとした行為があった。東京都足立区の独自テストでも同じような不正が発覚した。そんな愚行が繰り返されるおそれがある。
子供それぞれの学力を測るだけなら、学校ごとに行う試験や自治体独自のテストで十分だ。
日本全体の傾向を把握したいのなら、学習到達度調査(PISA)や国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)といった国際調査の活用で足りるだろう。
教育は自治体が主体となって行うものだ。「全国一斉」にとらわれず、市町村は地域の実情を踏まえて子供と向き合ってほしい。
●全国学力テスト 毎年続ける必要あるのか 山陽 2008年9月2日
文部科学省が昨年に続き今年四月に実施した「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)の結果が公表されたが、やはり事前に予想されたような内容になった。
応用力に課題があることや、都道府県ごとの成績など全体の傾向は昨年とほぼ同じだった。学力は短期間で改善するものではあるまい。教育は「国家百年の計」とされ、結果反映には時間がかかる。このまま毎年、全国的な規模で多額の費用を投じ調査を継続する必然性があるのか疑問に感じざるを得ない。
全国学力テストは子どもの学力低下が指摘される中、全国的な状況を把握し、課題を明らかにする目的で昨年、四十三年ぶりに復活した。今年も昨年と同様、一部不参加の学校を除き小学六年と中学三年の全員を対象に行われ、昨年は約七十七億円、今回は約五十八億円の費用がかかった。
国語と算数・数学の二教科で基礎的知識を問うA問題と、知識の活用力をみるB問題が出題された。平均正答率は小中学校ともA問題よりB問題の方が昨年と同じように10ポイント余り低く、文科省は引き続き「知識の活用に課題がある」と分析した。学習状況調査では生活習慣の確立が重要などとしたが、専門家の調査で一般的に知られている内容にとどまった。
全国学力テストを行った以上、データを詳しく解析し、教育指導の改善などに生かす必要がある。同時に昨年の結果がどのように現場に反映されたのかもさらに検証し、全国の教育関係者の間で情報を共有してもらいたい。
全員を対象にした全国学力テストについては、昨年行われた時から毎年の継続実施に対し疑問の声が少なくなかった。全体の傾向を知ったり、各学校が全国での位置付けを確認するには、三年から五年ごとの調査で十分とする意見がある。一部の学校で実施する抽出調査だけで対応できるという指摘もある。
文科省は「データを積み重ねることで課題がより浮き彫りになる」と反論し、来年以降も継続する方針を崩そうとしない。しかし、基本的な知識に比べて応用力が低いことなどは既に周知の事実であって、文科省の主張は説得力に欠けよう。
それよりも、指導効果があるとされる習熟度別学習や少人数学級の拡充に向け、教員増加などの環境整備に巨額の費用を回す方が賢明ではないか。現場では市町村別などの成績公表をめぐり、混乱が表面化している。公表の在り方も含め、冷静に議論を深めるべきだろう。
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