今年4月や4年前の岐阜県議選のポスター代の過剰請求分の返還を求める住民監査請求について、岐阜県監査委員は8月10日つけで結論を出した。
2003年分は棄却。2004年分については一部が県に返還されたことを認定して、住民監査請求は棄却した。
監査委員の記者クラブでの発表の骨子と全文が公表されている。
抜粋し、全文にリンクしておく。
こちらも、コメントを出しておいたので文末に紹介。私たちの意見はそちらをどうぞ。
このような監査では到底納得できないので、こちらは、地方自治法第242条の2の第2項の規定に従って、「結果通知を受け取った日から30日以内」に住民訴訟を岐阜地方裁判所に提訴することになる。
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印刷用8月11日新聞 第26報 PDF版 3ページ 0.55MB
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● ポスター代:岐阜県議選4候補の過剰請求認定 監査委員 8月11日 毎日
4月の岐阜県議選で県が公営負担した選挙ポスター製作費について、県監査委員は10日、候補者4人と4業者が公費負担の認められない室内用ポスター代などを請求し、計約143万円を過剰に受け取っていたと発表した。住民グループ「くらし・しぜん・いのち岐阜県民ネットワーク」が6月に行った請求に基づき監査した結果、判明した。だが県監査委員は「県選管の説明不足も否めず、不正な水増し請求ではない」とし、製作費の返還を求めた監査請求は退けた。同グループは住民訴訟を起こす方針。
監査請求では、03年と07年の県議選でポスター製作費が水増し請求されたとして、公費負担上限額の50%以上を請求した候補者と印刷業者に、50%超過分計約2888万円の返還を求めた。
県監査委員は、今年4月の県議選に関しては、4人について約24~61万円の過剰受給を認定した。しかし「県選管が候補者に対して制度の説明を行う際、室内用ポスターなどが公営負担されないと明言していなかった」と指摘し、請求を棄却した。03年の県議選分は「請求期間(1年)を過ぎている」と却下した。
その上で監査委員は、確実な制度説明や、請求書に納品書を添付させるなど、制度運用を改善するよう意見を付けた。
過剰請求が判明した4候補者のうち3人は当選議員。当選した1人は既に6月に約31万円を返還しており、残る3人も返還を申し出ている。【中村かさね】
● 岐阜県議選ポスター費問題 さらに3人、過剰請求 住民監査 読売 8月11日
今年4月の岐阜県議選で県議1人が、公費負担のポスター製作費を過剰請求していた問題で、新たに3人の候補者(うち1人は落選)が、公費負担の対象にならない屋内用ポスター代や選挙はがき代を製作費に含めて請求していたとして、県選管に訂正届を提出していることが10日、住民監査請求の監査結果でわかった。4人の返還額は約25万~61万円で、計約143万円。
住民監査請求で、市民グループが今年6月、2003年と今年の県議選のポスター製作費が相場より高いとして、県議らに対し、県に返還するよう求めていた。県監査委員は、2003年分の請求は請求期限が過ぎているとして却下し、今年4月分の請求については、「意図的な不正水増しの請求は確認できなかった」などとして棄却した。
市民グループは、「監査結果に納得できない」として、提訴する方針だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/c6/53d54f5a1c48e6f6a503589bce566129.jpg)
監査委員の記者発表資料
「岐阜県議会議員の選挙公営におけるポスターの作成費用の水増し請求による過払金の返還に関する住民監査請求」の監査結果について
本件の請求のうち、
(1) 平成15年執行の県議会議員選挙に関する請求については、請求を「却下」する。
・住民監査請求は、財務会計行為のあった日から1年を経過したときには、これをすることができない(地方自治法第242条第2項)とされている。
→ 当該請求は、地方自治法第242条第2項の期間制限の適用をうける。
(2) 平成19年執行の県議会議員選挙に関する請求については、請求を「棄却」する。
請求人の各主張について以下の判断をし、「棄却」とした。
① 「上限基準額の50%以上は、過払である」との請求人の主張
・選挙運動の自由や契約自由の原則を尊重する趣旨から、公職選挙法や条例は、上限基準額の範囲内の請求であれば、それは候補者の自由であるとしている。
・上限基準額の50%以上の支出があったとしても、法令が許容するものである。
→ 「上限基準額の50%以上は過払である」との請求人の主張には理由がない。
② 「不正な水増し請求がなされていた」との請求人の主張
・関係人調査の結果、不正な水増し請求がなされていたことを確認できなかった。
→ 「不正な水増し請求がある」との請求人の主張には理由がない。
③ 「県に違法又は不当な財産の管理を怠る事実がある」との請求人の主張
・関係人調査の結果、選挙ポスター代に係る68件の請求のうち、4件の請求について合計1,432,332円の過払の事実を確認した。
・しかし、市町村課において、8月6日までに上記金額について戻入手続(納入の通知)がなされた。
→ 「県に違法又は不当な財産の管理を怠る事実がある」との請求人の主張には理由がない。
4 付言
選挙ポスター作成費の公費負担に係る支出手続の誤りを防止するため、改善すべき
事項について監査委員の意見を付した。
① 候補者に選挙公営について説明する際に、室内用ポスター等については公費負担の対象とならないこと、作成単価の計算は条例及び規程に従って確実に行うことなどについても周知徹底し、選挙公営に係る候補者及びポスター作成業者の手続において誤びゅうが生じないようにされたい。
② ポスター作成業者からの請求に、公費負担の対象とならない他の印刷物が含まれていないか、また、対象となる枚数及び金額に誤りがないかなどを確認できるよう、請求書を提出させる際に、納品書等の証拠書類を添付させるなど、選挙公営制度の運用の改善を図られたい。
監査結果の全文へのリンク
(ここでは、要点を抜粋) 平成19年8月10日
岐阜県議会議員の選挙公営におけるポスター作成費用の水増し請求による過払金の返還に関する住民監査請求に対する監査結果
第1 請求の受付
第2 請求の要件審査
第3 監査委員の除斥
第4 監査の実施
第5 監査の結果
1 監査対象機関に対する監査の結果
2 監査対象機関の意見
以下の事項について選挙管理委員会及び市町村課に対して7月23日に監査を実施したところ,監査請求に対する意見が,次のとおり述べられた。
(1) 選挙公営制度における選挙ポスターの支払金額が,実勢価格に比べて高く,条例基準額の50%以上は不正請求であるという主張について
条例で定めた限度単価及び限度枚数の範囲内の請求である限り,どのような質(デザイン,写真,紙質など)のポスターを何枚作成するかについては,各候補者の判断にゆだねられている。
また,県は,定められた手続に沿って確認の上で支払を行ったところであり,条例で定めている作成単価の限度額の50%以上の金額の請求が一律に不法行為になるとは考えられない。
(2) 県議会議員選挙において不正な水増し請求がなされているという主張について山県市議会議員選挙において水増し請求がされたとの新聞報道があったことは,承知している。しかし,現時点において,岐阜県議会議員の選挙においても同様の不正な水増し請求があったことについて,他に合理的な証拠や根拠が示されていない。
なお,本件選挙に関して,過払分を県に返還する旨を選挙管理委員会及び県に対して届け出ている候補者及びポスター作成業者がいる。この件については,関係者から聴き取り調査を行った上で,候補者及びポスター作成業者の届出内容が相当と判断し,過払分を戻入させる手続を行った。
3 関係人調査の結果
(1) 調査方法
前記のとおり,監査対象機関を監査するのみでは,本件選挙における選挙ポスター作成費の公費負担において「違法又は, 不当な財産の管理を怠る事実」の有無を確認することはできなかった。
そこで,事実を確認するために,選挙ポスター作成費の公費負担分に係る支出を受けた候補者及びポスター作成業者のすべてに対し,任意の協力の下に自治法第199条第8項に基づく調査を実施した。
まず,本件選挙に係る選挙ポスター作成費の支出を受けた候補者68名及びポスター作成業者58者のすべてに対して文書による調査を行った。調査に当たっては,選挙管理委員会へ届け出た書類に誤りがないか確認するとともに,これを証明する証拠書類の提出を求め,以下のとおり関係書類を入手した。
提出された証拠書類
候補者見積書,納品書,出荷案内書,請求書,契約書
ポスター作成業者見積書(控え),納品書(控え),
請求書(控え),内訳明細書,
売上台帳,売上票,売上日計表,
得意先元帳,仕訳帳,
預金通帳,原価計算表,印刷価格表
さらに,証拠書類の内容を確認するため,必要に応じて候補者及びポスター作成業者に対して聴き取り調査を実施したほか,ポスター作成業者の事業所において関係帳簿の閲覧を行うなどの現地調査を実施した。
(2) 確認した事実等
ア関係人調査から得られた回答及び証拠書類から,以下の事実を確認した。
(ア 選挙ポスター作成費の公費負担に係る68件(候補者68名及びポスター作成業者58者)の請求のうち,10件(候補者10名及びポスター作成業者8者)
について,県へ提出していた請求書などの記載内容に誤りがあった。
(イ その内訳については,次のとおりであった。
① 6件(候補者6名及びポスター作成業者4者)については,請求書の枚数記載欄などに記載誤りがあったものの,公費負担額には影響がなかった。
② 4件(候補者4名及びポスター作成業者4者)については,室内用ポスター等の公費負担の対象とはできない印刷物の作成費が含まれていた,あるいは作成単価の算出を誤ったとの理由によって,公費負担の対象とならない費用(1,432,332円)が請求金額に含まれていた。
したがって,上記②に相当する部分の支出金額(1,432,332円)は,過払であった。しかし,入手した証拠資料や関係人の説明などを総合的に考慮しても,これらの過払が,不正な水増し請求の意図によって行われていたなどの確証は得られなかった。
イ 一方,関係人調査を進める中で,選挙管理委員会及び県における次のような対応が判明した。
(ア 6月20日から8月7日までに,請求書などに記載誤りがあった候補者及びポスター作成業者から,選挙管理委員会及び県に対して訂正する旨の届出があった。
そのうち,候補者4名及びポスター作成業者4者は,室内用ポスター等の公費負担の対象とはできない印刷物の作成費が含まれていた,あるいは作成単価の算出を誤ったとの理由によって,合計1,432,332円の交付金の過払を受けていたとするものであり,選挙管理委員会及び県はこれらを受け付けた。
(イ 7月19日から8月6日までに,選挙管理委員会及び県は,上記候補者4名及びポスター作成業者4者の届出を相当と認め,その上で,県は上記の過払に係る戻入金について納入の通知を行った。
ウ そして,監査委員が過払と認定した金額(1,432,332円)は,県がポスター作成業者に戻入させる金額(1,432,332円)と一致している。また,その戻入手続については,岐阜県会計規則(昭和32年岐阜県規則第19号)などの関係法令を遵守して,適正に執行されていた。
エ これらをまとめると,次表のとおりである。
(略)
また,上記4件の内訳は,次表のとおりである。
(略)
オ 以上のことから,選挙ポスターの公費負担に関して不正な水増し請求が行われていたとする事実や,違法又は不当に財産の管理を怠る事実を確認することはできなかった。
4 監査委員の判断
以上のような監査対象機関に対する監査及び関係人調査の結果に基づき,本件請求に対して,次のとおり判断する。
(1) 上限基準額の50%以上の支払部分が過払であるとの主張について
ア 本件選挙における選挙ポスター作成費の公費負担について,監査対象機関を監査した。その結果,定められた作成単価の限度額及び確認枚数によって公費負担額が計算され,候補者一人当たりの公費負担の限度額を超えていた支出はなく,公職選挙法第141条第9項及び第143条第15項の規定に基づく条例第3条及び第5条,規程第5条ないし第5条の5などの規定に照らして,適正に執行されていた。
イ また,候補者及びポスター作成業者に対して,関係人調査を実施した結果,選挙ポスター作成費は,企画,編集,デザイン,仕様(①写真の程度,カメラマン,ヘアメイク,②印刷の方法,工程,③仕上がりの修正の度合い,④紙の種類,質,⑤コーティングの種類など)などの要素によって,実際に千差万別であることが確認できた。
上記のとおり候補者によって選挙ポスター作成費が千差万別であったとしても,公職選挙法や条例などは,選挙運動の自由(憲法21条第1項)の重要性及び民法(明治29年法律第89号)上の契約自由の原則を尊重する趣旨から,候補者とポスター作成業者との間のポスター作成契約の内容などについて特段の規制を設けず,各候補者の趣向,選挙への方針,考え方などによって自由に選挙ポスターを作成することを許容している。
ウ 以上より,条例に規定する金額の50%以上の請求を行ったポスター作成業者があったとしても,それは法令が許容するものであり,条例に定める上限基準額の50%以上の支払部分が,県の過払であるとの請求人の主張には理由がない。
(2) 不正な水増し請求があるとの主張について
ア 監査委員として事実を正確に探知するために,候補者及びポスター作成業者に対して,関係人調査を実施した。しかし,請求人の主張する不正な水増し請求に係る事実を確認できなかった。
イ また,県が行った戻入手続についても監査した結果,関係法令が遵守され,必要な要件を具備していることを確認した上で,適正に執行されており,違法又は不当な財務会計行為があったことを確認できなかった。
ウ なお,住民監査請求の対象とする行為には,当該行為の違法性又は不当性について,単なる憶測や主観だけではなく,具体的かつ客観的な根拠を示す必要があると解されている。確かに,請求人は,山県市議会議員選挙における選挙ポスターの公費負担に関する新聞報道などを引用している。しかし,監査した結果,本件選挙においては請求人の主張するような不正な水増し請求に係る事実を確認できなかった。したがって,請求人の主張は,具体的かつ客観的な根拠に基づくものとはいえない。
エ 以上より,本件選挙において候補者及びポスター作成業者が真実でない請求を行うなど不正な水増し請求があったとする請求人の主張には理由がない。
(3) 知事が財産の管理を怠る事実があるとの主張について
自治法に規定する財産の管理を怠る事実とは,作為義務に反してなすべき行為を怠っている不作為の意味と解される。本件請求でいえば,特定された選挙における不法行為について,刑事事件として捜査当局に立件され,その裁判の判決が確定するなど,その行為により損害の発生が認められているにもかかわらず,損害賠償請求権が行使されない場合がこれに該当すると解する。
前記のとおり,県は,過払に係る戻入金について納入の通知を行った。そのため,自治法第242条第1項に定める違法又は不当に財産の管理を怠る事実は認められない。
以上のことから,請求人の本件請求には理由がなく,これを棄却する。
第6 付言
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2007年8月10日
県政記者クラブの皆様
くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク
寺町知正
岐阜県議選・ポスター代の過剰な請求・交付分の返還に関する住民監査請求の結果に対する請求人のコメント
標記に関しての監査結果の内容の分かる書類がFAXで案内されてきましたので、住民監査請求人を代表して以下コメントいたします。
(1) 従来の岐阜県監査委員は、住民監査請求を受けても県以外のものについての監査はできないとしていた。その点からすれば、業者からも書類を提出させてたことは従来の監査と比べて前向きであったとはとらえる。
(2) 6月18日に私たちが住民監査請求したわけだが、県の市町村課及び選挙管理委員会に対して6月20日から8月7日のまでの間に交付額に変更を生じない6候補(6業者)からの書類の訂正があったこと、他に4候補者(4業者)からの金額の訂正の申し出があり、最終的に合計143万2332円の減額・返還手続きがとられたことは、住民監査請求の効果と考える。
(3) しかし、本件監査結果は、(2)記の自主的返還事実を単に記載したのみであって、監査の実を得ていないことを明らかにしただけである。(2)記の事実があれば再度厳しく監査すべきことは当然であるがこれを行わなかったのであるから、監査委員による適法かつ意義ある監査がなされたとはいえない。
(4) 平成19年選挙において(2)の事実があったということは、県及び監査委員は平成15年選挙においても同様のことがあった想定して厳しく調査・監査すべき責務が生じたというべきである。高額請求がより多いが故に、一層そのようにいえる。しかし、平成15年選挙分を却下したことは、違法な監査である。
(5) 以上(3)(4)のとおり、請求人は、本件違法な監査結果には到底納得できない。よって、住民訴訟を提訴し、裁判所の判断を仰ぐこととする。
なお、本件監査によって、「ポスター掲示場の2倍の枚数まで公費負担の対象となるのは、1回のはり替え分まで公営の対象とする趣旨である」と手引きにおいて明らかとされているという(監査結果6ページ)。しかし、たった10日間の県議選において、ポスターを張り替えることを事前に企画し実行した候補をきかない。この点からすれば、掲示場の数を超える枚数を請求した候補は、その越える部分につき悪意をもって違法に請求したわけであるから、訴訟の請求原因の一つになるものである。
以上
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