くたびれた上着を着た老齢の男は、バスから降りるとニューオリンズの秋の日差しを浴びた街中の道を、片足をやや引きずりながら歩いている。ポケットから紙袋に入れたジンを取り出し、時々のどに流し込みながら。
着いた先は、彼が愛していたハウスメイトのジャズ歌手のロレーンの葬式。
ジャズ歌手に入れあげて、身を持ち崩したアラバマの英文学専攻の大学教授と、それをずっと見守ってきた助手の話。ロレーンに捨てられて祖母に育てられた娘が加わって物語は進行する。全編を通して、ロレーンが出てくるのは最後の墓碑銘の所だけ。最後のシーンに向かってそのラブストーリーが明らかにされる。
大学教授を演じているのは、頭を白髪に染めたジョン・トラボルタ。あのトラボルタが老人の設定で、酒びたりの日々で体を壊した男を演じている。映画では、英文学専攻の大学教授ということで、しゃれた引用が数多く出てくる。
“Happiness makes up in height for what it lacks in length.”
幸せは長い間なかった分を高さで埋め合わせる (不幸せの期間が長いほど 幸せは大きい)」.
ROBERT FROST (1874-1963)
“He’d make a lovely corpse!”
彼は愛しい死体をこさえただろう。
CHARLES DICKENS (1812-70)
Bobby : "He'd make a lovely corpse." Come on、 man. Charles Dickens.
Lawson: Are you serious? It's Martin Chuzzlewit.
「彼は美しい死体をこさえただろう。」ってチャールズ・ディケンズじゃん。
「お前まじかよ。マーチン・チャズルウィットだろ。」
「くそったれ」
ただし、ディケンズの小説では
'Ah!' said Mrs Gamp、 walking away from the bed、 'he'd make a lovely
corpse.'
であるから、引用句を言ったのはミセス・セアラ・ギャンプ (Mrs. Sarah Gamp:産婆、看護婦、夜間寝ずの付き添い人、死体についての名もなき様々な業務を執行する人。酒に目のない、しゃがれ声の太った老婦人である。)
“We cannot tear out a single page of our lives、 but we can throw the whole book in the fire.”
我々は自分の人生のほんの1ページすら引き剥がせないが、1冊丸まるの本を火にくべる事はできる。
GEORGE SAND (1804-76)
“We die only once、 and for such a long time.”
我々は一度しか死なない。しかも永遠にだ。
MOLIÈRE (1622-73)
“Friend、 my enemy、 I call you out. You、 you、 you there with a bad thorn in your side. You there、 my friend、 with a winning air. Who pawned the lie on me when he looked brassly at my shyest secret. With my whole heart under your hammer. That though I loved him for his faults as much as for his good. My friend were an enemy upon stilts with his head in a cunning cloud.”
友よ、我が敵と呼ぼう。お前、お前。体にいばらのとげを持つお前。勝気な雰囲気をしたお前。ぼくの恥ずかしい秘密を厚かましくも見た時、ぼくにうその誓いをしたやつ。ぼくの心はお前の鉄槌の下にある。やつの良いところと同じくらい、やつの欠点が好きなんだけど。ぼくの友は狡猾な雲に頭を突っ込んだ竹馬に乗った敵だった。
DYLAN THOMAS (1914-53)
などなど・・・。ロレーンに捨てられた10代の娘が、アル中の2人の男達と少しずつ理解し合って成長して行く。そして、ラブソングの経緯を知り、愛を得て幸せな家庭を築いていく・・・。そんなお話。