tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

Ônibus 174

2006-12-16 15:05:00 | cinema

「このバスで一番の被害者は誰だかわかる?・・・それはあなたよ」
その日「174路線」を走るバスの強盗に失敗して、突発的にバスに立てこもってしまったサンドロに、ひとりの人質の女子大生が話しかける。サンドロは、しばらく考えて返事をにごす。

GDPが世界12位(2005年)のブラジル。まさに発展の途上にあると言ってよい。だが、発展途上国につきものの、国内の貧富の差はすさまじいものがある。こうした格差が700~800万人ともいわれるストリート・チルドレンを産み、多発する凶悪犯罪の発生原因となっている。そして、ブラジルの刑務所は犯罪者の更正のための施設ではなく、犯罪者に拷問を科すための修羅場となっている。定員3人の留置場に11人が拘置され、絶え間ない監守たちの暴力に晒され続ける。眠るためのスペースもなく、腐った食事が支給されることも・・・。檻の向こうで彼等は叫ぶ。<ここを出たらもっと激しい暴力で社会に報復してやる>と・・・。
暴力によって抑えこまれた怒りは、より激しい暴力となって吐き出されるのだ。

バス・ジャックの犯人サンドロは、スラム街の生まれではなかった。しかし、5歳の時に、強盗に母親が惨殺された現場を目撃したことで大きく人生が狂ってしまった。家を飛び出し、ストリート・チルドレンとして放浪と犯罪を重ね、クスリに溺れ、刑務所の出入りを繰り返した。
典型的な犯罪者の人生を送ってきた。リオデジャネイロ〈174路線〉バスに乗り込んだサンドロは、バスの強盗に失敗して、拳銃を手に乗客11名を人質に取って立てこもった。犯人のサンドロと警察の緊迫した交渉が続けられる中、ブラジル中のメディアはこの事件をこぞって報道。「自分はカンデラリア教会虐殺事件の生き残りだ」と発言するサンドロに対し、メディアの報道はさらに熱を帯びていく。
<彼に人質を殺す気はない。やるならもう殺っているはずだ。>
そう判断した警察は、犯人を射殺する映像がテレビに流されることを恐れ、特殊部隊による狙撃に踏み出せない。加熱する報道にパニックになったサンドロは、「6時に人質を殺害する」と宣言し、そして事件は最悪な方向へと動き出していく。 映画は、この事件の硬直した状況を、当事者であった人質と警官たちへのインタビューを交えて事件を再現していく。
映画『シティ・オブ・ゴッド』でも描かれていたように、ストリート・チルドレンはブラジルの深刻な社会問題だ。事件は最悪の結末を迎える。果たして、ブラジルに・貧困に悩む途上国に・すぐに効果のあがる対策はあるのだろうか・・・。

 

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