10.混濁した意識の中で
ふと、気がついて時計を見るともう夜の11時。テーブルでは、タカオカとニシザキが酔いつぶれ、居眠りを始めている。アヤカの姿は見えない。ヨーコがチョウとヤルダに囲まれて、談笑している。しかし、ヨーコもかなり辛そうにしている。睡魔をこらえながら彼等の様子を見ていたが、2~3秒意識が飛んでしまいそうになる。そろそろ帰ろうよと言ったつもりだが、眠すぎて体が言うことをきかない。そのうち、ぼくは睡魔に支配され、急速に意識を失っていく自分がわかった。
再び、朦朧としているが、まわりの状況がわずかにわかるほどに意識が戻ったときは、ぼくはダイニングに置いてあったソファーの上に寝かされていた。しまった、寝込んでしまったと慌てたが、体がしびれて動かない。焦点のなかなか合わない目を見開いて周りを見渡すも、かろうじてわかったのはまわりには誰もいないことだけだった。体を起こそうとして、ぼくは手足に全く力の入らないことに気づいた。なにかがおかしい。混濁した意識の中で、ぼくはとりあえず何かできることがないかを探った。部屋の天井を通して、おそらく直上の部屋であろう2階から、だれか女性の悲鳴が聞こえる。そして、床を踏み鳴らす物音。くぐもった話声。何か良からぬ事態が発生しているようだ。
自分の指先に意識を集中してみる。左手の人差し指を動かすイメージを必死に脳内で作り上げる。かすかに指先が反応しそうな感触が返ってくる。ゆっくり、ゆっくりと人差し指を動かす努力を続ける。指の反応がだんだん大きくなってくるのがわかった。人差し指の動きにあわせて、左手の指全体が徐々にではあるが動かせられるようになってきた。手のひらを握り締められるようになって、ぼくは気づいた。ぼくは両手首を後ろ手で縛られている。足もなんとか持ち上げるまで動かせるようになったが、足首も何かで縛り上げられているようである。
2階から聞こえていた物音は、大きな悲鳴とともに急に途絶えた。その後、床の上を歩き回っているらしい足音が時より聞こえてくる。
ぼくは、ソファーに腰掛けて立ち上がる努力をした。ソファーの上の腰をずらすと、両足が床の上に落ちた。そこから、ひざを曲げて立ち上がる体勢まで持っていく。なんとか上半身を起こして、ソファーに腰掛けた状態になることができた。ここから、上体をさらに前にかがませて、立ち上がる準備をする。時間がかかったが、なんとか立ち上がることができた。寝ているのと、立ち上がったのでは精神的にずいぶん違う。視野が高くなった分、気持ちが前向きになる。なんとか、事態に対処するため頑張ってみようと。
ふと、気がついて時計を見るともう夜の11時。テーブルでは、タカオカとニシザキが酔いつぶれ、居眠りを始めている。アヤカの姿は見えない。ヨーコがチョウとヤルダに囲まれて、談笑している。しかし、ヨーコもかなり辛そうにしている。睡魔をこらえながら彼等の様子を見ていたが、2~3秒意識が飛んでしまいそうになる。そろそろ帰ろうよと言ったつもりだが、眠すぎて体が言うことをきかない。そのうち、ぼくは睡魔に支配され、急速に意識を失っていく自分がわかった。
再び、朦朧としているが、まわりの状況がわずかにわかるほどに意識が戻ったときは、ぼくはダイニングに置いてあったソファーの上に寝かされていた。しまった、寝込んでしまったと慌てたが、体がしびれて動かない。焦点のなかなか合わない目を見開いて周りを見渡すも、かろうじてわかったのはまわりには誰もいないことだけだった。体を起こそうとして、ぼくは手足に全く力の入らないことに気づいた。なにかがおかしい。混濁した意識の中で、ぼくはとりあえず何かできることがないかを探った。部屋の天井を通して、おそらく直上の部屋であろう2階から、だれか女性の悲鳴が聞こえる。そして、床を踏み鳴らす物音。くぐもった話声。何か良からぬ事態が発生しているようだ。
自分の指先に意識を集中してみる。左手の人差し指を動かすイメージを必死に脳内で作り上げる。かすかに指先が反応しそうな感触が返ってくる。ゆっくり、ゆっくりと人差し指を動かす努力を続ける。指の反応がだんだん大きくなってくるのがわかった。人差し指の動きにあわせて、左手の指全体が徐々にではあるが動かせられるようになってきた。手のひらを握り締められるようになって、ぼくは気づいた。ぼくは両手首を後ろ手で縛られている。足もなんとか持ち上げるまで動かせるようになったが、足首も何かで縛り上げられているようである。
2階から聞こえていた物音は、大きな悲鳴とともに急に途絶えた。その後、床の上を歩き回っているらしい足音が時より聞こえてくる。
ぼくは、ソファーに腰掛けて立ち上がる努力をした。ソファーの上の腰をずらすと、両足が床の上に落ちた。そこから、ひざを曲げて立ち上がる体勢まで持っていく。なんとか上半身を起こして、ソファーに腰掛けた状態になることができた。ここから、上体をさらに前にかがませて、立ち上がる準備をする。時間がかかったが、なんとか立ち上がることができた。寝ているのと、立ち上がったのでは精神的にずいぶん違う。視野が高くなった分、気持ちが前向きになる。なんとか、事態に対処するため頑張ってみようと。