「すいません」と言う声に、目を開けるとそこに着物姿の吉永小百合が映った。
・・・つり革につかまって寝てたのか・・・
意識が飛んでいたから、1~2秒ほど立ったまま寝ていたのかもしれない。目を開けると、電車の窓越しに駅のAQUOSの広告が目に飛び込んできて、一瞬、吉永小百合に声をかけられたような勘違いをした。電車の席を立って出口へ向かう女性を通してあげながら、水曜日の早朝の眠い通勤電車の窓から、線路の防音壁に張られたAQUOSの巨大な広告を見つめていた。
ハリウッド映画で40歳以上の女性が主人公になっているのは、キャサリン・ヘプバーン、スーザン・サランドン、メリル・ストリープ、キャシー・ベイツ、ジェシカ・タンディ、ヘレン・ハント、フランシス・マクドーマンド、ホリー・ハンター等が出演した映画があるが、それを思い出すのには苦労する。そして、それらの映画はいずれも主婦役はあまりないように思う。
これに対し、男優の方はメル・ギブソン、ロバート・レッドフォード、ハリソン・フォード、アンソニィー・ホップキンスなど、50代、60代どころか、さらに年老いてなおも活躍している。この男女の差は、ハリウッド映画に求められる女優は、若さと容姿に優れていることが前提であることによる。このため、40歳を過ぎたら女優には声がかからなくなる。つまり、アメリカではヨーロッパに比べ大女優が育ちにくいと言える。
これが、邦画に目を向ければ、結構年配の女優が活躍している。吉永小百合しかり、八千草薫しかり・・・。円熟味を増した演技で、我々の心に触れてくる。日本映画は、ファミリー映画が多いせいか・・・。たとえば、ストレイト・ストーリーを見たときのような、贅沢な時間を費やしたような気にさせる映画をもっとたくさん観たい。吉永小百合や八千草薫クラスなら、彼女達が主役のロードムービーでかなりの観客を動員できると思う。
ところで、以前、日本で家計をコントロールしているのは家庭の主婦だとアメリカの友人に告げたことがある。彼には信じられないようだった。なぜ、自分の稼いだお金を自由に使わないのか理解できないのだ。それが、夫婦円満の秘訣なんだよと答えておいたが、最近の熟年離婚を見るとどんなものだろう。奥さんが家計をすべてコントロールする日本のやり方が、旦那を苦境に追いむ原因となるケースが増えて来たようだ。