話はチェンマイ2日目の朝に戻る。ホテルのフロントにだまされて、で教えてもらって、旧市街をさんざんさまよい歩いたぼくは、朝食後、今度はしっかりと地理を頭に入れて、旧市街のマーケットを中心に歩いて回ることにした。そして、ターペー門の付近で目に止ったのが、パンジャビ・ドレスを着た恰幅の良いインド人の女性のいる旅行会社。一部のインド人達は、東南アジア諸国・アラブ周辺諸国へ深くその生活を根ざしていて、チェンマイにもインド人は多く、インド・レストランやみやげ物屋がある。
ちなみに、チェンマイを訪れる観光客の数でいけば、第一位がマレーシアで、日本、韓国、中国と続き、イギリス、アメリカ、オーストラリア、シンガポール、ドイツ、そしてインドだ。
話が長くなるので省略するが、空に一斉に打ち上げられるコムローイを見るためのメージョー大学行きを思いとどまらせてくれたのが、このパンジャビ・ドレスを着たインド人の女性だった。ついでに、3日目の首長族訪問ツアーと4日目のドーイステープ見学ツアーを世話してくれたもの彼女だ。チェンマイ市内のロイカートンの見どころも、親切に教えてくれた。英語がほとんど通じないチェンマイで、英語が堪能な彼女と話すのは、地獄(失礼!)で仏(?)に会ったような気持ちだった(比喩がめちゃくちゃだが、それだけ嬉しかったのだ・・・)。
その首長族訪問ツアーは、マレーシアの若い夫婦、ドイツの夫婦、そしてイギリス人の女の子2人組が同行メンバーだった。皆、非常にいい人たちばかりで、ツアーそして楽しい昼食を気持ちよく楽しむことができた。問題は、4日目のドーイステープ見学ツアーの方だ。
ピックアップのマイクロバスに乗り込んできたのは、2人づれの中国人2組@大陸。中年ゴルファーがよく着るようなスポーツシャツ、長めの黒いスラックスに、派手な飾りのついた白いローファー、ウェストポーチ。女性たちは蛍光ペンを塗りたくったようなド派手な服装。
狭いマイクロバスに乗り込むや、4人は大声で話し始めた。あたかも自分たち以外の人間は周りにいないかのように。。
すぐ後ろの座席に陣取りゲラゲラ笑い転げる中国人たちの声に、ぼくは一瞬にして憂鬱になった。これから半日、こいつらと一緒なのかと・・・。真後ろの席の女は、3分毎に大きなあくびを繰り返すし、その左の男は大きなゲップを繰り返している。5分に一度はあたりに響きわたるような嬌声を上げるし、ガイドが説明しているにもかかわらず中国語でしゃべりまくっている。。
・・・結局、彼らは英語があまり得意じゃないことがわかった。だから、ガイドの話なんて全然聞かないんだ。
外国で、大勢で大声で話しながら道を占領して歩くのは、中国人だけじゃない。日本人もそうだ。道を譲るしかない他の国の人々の眉を顰めさせている。だが、同じ騒ぐにしても、多くても4~5人までの日本人たちの方が、中国人たちのよりはまだマシだろう。初日の夜のホテルのレストランは、20人ほどのやりたい放題の中国人たちで占拠され、無礼講のカラオケバーとダンスフロアに化していた。
「飛行場やバスの中など公共の場では、他人に迷惑をかけないように小声で話すようにすれば、日本人はもっとステキになれるに違いない」・・・こんなことを、そのツアーバスの中で考えていたのだが、翌日、チェンマイからバンコクへの飛行機の中では、もっと最悪な日本人の男を見て気持ちがへこんだ。
・・・飛行機のすぐ後ろの席に座った40代の男は、大きな声で、しかも幼児のような言葉を関西弁で話していた。・・・タイ人の若い女性と。
聞きたくなくても、大きなダミ声が耳に入ってくる。日本語を話さないうら若きタイの愛人に対して、懸命に歓心を得ようとしているのだろうが、なにぶん、みっともない。日本人として、同属とは思われたくは無い・・・。こんな日本人はそばにいてほしく無いのだが、飛行機の座席は変われない。
他人のことだからどうでもいいけど、心が通った会話が成立しなければ恋愛の成就なんて無理だ。・・・だからお金での援助交際なんだろうけど。
顔を見ただけでは、中国人も韓国人も日本人も見分けがつかないタイ人たちにとってすれば、お金で何でも買えると思っている日本人や韓国人たちも、マナーの悪い中国人たちも、すべて同一の民族に見えるに違いない。だから、彼らのアジア人に対する軽蔑はそこから来るのだろう。
実は、超大手のコンピュータ会社のSEをしている、若いチャーミングな台湾の女性もそのツアーに参加していた。
ツアーが終わって、ぼくらは2人だけターペー門でバスを降りたのが縁で一緒に食事をした。彼女との会話の中で、ぼくには大陸の中国人たちと、台湾の人々との区別がつかないと口を滑らせたら哀しそうな顔をしていた。
・・・全然違うわよ。だって、大声で話をしないし、タバコの吸殻を道路に捨てたりしないし。
ツアーで一緒だったオランダの女の子たちが、路上でタバコを吸う中国人に眉をしかめていた。ツアーに参加したみんなが、一緒の中国大陸のバカップルに対して不快な感情を抱いていた。
でも、ぼくは中国人の彼らが嫌いなわけじゃない。ツアー中、一人でドーイステープを見て回るぼくにくっついて観光していたのは彼らだった。バスの到着を待っていたら、「くるまがきました」と日本語で話しかけてくれたのも彼らだった。彼らは、一日中大声でおしゃべりて、食事して、大きなゲップをして、女と寝て、一日が終わる。人間として当たり前のことを、やりたいようにしているに過ぎない。根はいいヤツラなのだ。・・・品格は最低だけど。
さて、唐突だが、台湾の女性SEと食事をしながらチェンマイの片隅で過ごした時間は、数十年も前に日本の各地で流れた時間に近いような気がした。騒音渦巻くチェンマイなのだが、それでも古い時代の感覚がわずかに残されていて、近代化が徹底した欧米の人びとにとっては憧憬の地であるに違いない。そして、ゴミゴミしたチェンマイの建物の奥には、こうした木々に覆われた静かな一画がある。木陰では微風も吹いて酷暑を遮断してくれ、人生の一時期において、地図を読めない、あるいは、英語を話さない人たちとともに午後のお茶を楽しむのは至福のひとときだろう。了
気に入った写真や記事がありましたら応援のクリックよろしくお願いします。
![にほんブログ村 写真ブログ スナップ写真へ](https://photo.blogmura.com/p_snap/img/p_snap88_31.gif)
にほんブログ村