木々が紅葉するのは、東アジアとアメリカである。これに対し、ヨーロッパでは木の葉は黄色に変わる・・・らしい。この違いの説明としてフィンランドの研究者たちが、木と昆虫における古来から戦いによる進化とする説を唱えている。
http://www.sciencedaily.com/releases/2009/08/090813142150.htm
”Why More Autumn Leaves Are Red In America And Yellow In Europe: New Theory”
Prof. Simcha Lev-Yadun of the Department of Science Education- Biology at the University of Haifa-Oranim and Prof. Jarmo Holopainen of the University of Kuopio and published in the Journal New Phytologist
前にも書いたが、秋になり気温が下がると、木々は冬じたくをはじめる。葉と枝の間に離層ができ、水や養分を運ぶ管を閉ざすのだ。葉緑素が壊れ緑色が消えると、今まで目立たなかったカロチノイドという黄色い色素が浮き出して見える。これがイチョウなどの葉が黄色になるメカニズム。ちなみに、常緑樹は春の終わりに新葉と交替する時に多く黄葉する。
一方、葉の中に残った糖分が使われて、アニトシアニンという赤い色素が形成され細胞内に広がる。これがモミジなどが紅葉するメカニズム。このアニトシアニンが形成される理由は、①減少する葉緑素に変わり紫外線から自身を守るため、②秋期に黄色の葉のアミノ酸を吸って卵を産む傾向のある昆虫(アブラムシなど)に対して、色を赤くすることで自身を守るため、の2つの説がある。
さて、紅葉する真の理由がどうであれ、ヨーロッパの木々が秋に赤くならずに黄色でとどまるのは、植物の進化上から言えば、昆虫による被害を一手に引き受けるということで不利でしかない。では、なぜヨーロッパの木々は秋に赤くならない進化の道を撰んだのだろうか?
その理由は太古にもどる。3500万年前は、地球の広い地域は熱帯の木で構成された常緑の森林、あるいはジャングルで覆われていた。その後、到来する氷河期、そして乾燥期。多くの樹種は凍結から身を守るため落葉性へと進化した。それと同時に、昆虫たちからの食害から身を守るため、赤い葉を生産するように進化した。
北アメリカ大陸では、そして、東アジア大陸でも、氷河期の到来にともなって、北から南へ先の樹種の進化のプロセスが進行していくのだが、昆虫たちもまた、食料を求め北から南へ移動していく。つまり、虫たちと木々の闘いは途切れることなく北から南へと続き、その結果、冬季に落葉する地域では、虫たちの食害から生き残るために葉を赤く染める戦略を得たのだ。
一方、古代のヨーロッパ。アルプス山脈で北と南が遮断されるヨーロッパでは、酷寒を乗り切れなかった多くの樹種が死滅。これにともなって昆虫たちも絶滅。こうして、繰り返し来た氷河期の終わりには、ヨーロッパで生き残ったほとんどの樹種は、食害をおよぼす昆虫がいないため、それに対処する必要がなかった。これにより、自身を守るため紅葉することで昆虫たちに警告を発する必要もなかったのだ。
ただし、スカンジナビアには、紅葉する小さい低木がある。低木は、雪の下で何とか氷河期を乗り切ってきた。同時に昆虫たちも、雪ノ下で低木とともに生きながらえてきた。つまり、例外的にスカンジナビアの紅葉する低木は、昆虫たちとの戦いを強いられ、赤い落葉を生産する進化のプロセスが進行したらしい。まさに生き残るための戦略。
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