tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

風を求めて(5)

2007-11-24 21:25:24 | 日記

ここ数回のフライトで、山のヘリにできる斜面上昇風を使ったリッジソワリングがプランどおりにできていたのでいい気になっていた。こんな時にえてして事故は起こるものだ。

今日は南の風、風力2m。いつものテイクオフは風がフォローとなるため使えずに、海に向かって南側の斜面になる白浜の崖上からテイクオフすることになった。もちろん、ぼくはこのランチャーは初めて。高さ100mぐらいの絶壁から海に向かって飛び降りることになる。アップした写真ではよくわからないが、海までは直線で100mぐらい。ランディングはさらに左手のずっと奥の方の砂浜だ。砂浜沿いに交通量の多い国道が走っており、国道と平行にJRの線路がある。すなわち、ランディングの砂浜にたどり着くには、海に向かって飛び出して、大きく左に進路をとり、いくつもの民家を飛び越えて、線路を渡り、道路を渡り、海風を横から受けながら、20mぐらいの幅の砂浜にランディングする必要がある。

いつか書こうと思っていまだにできないでいるが、パラグライダーをやる人たちって、結構、キャラが立っている。今日のメンバーは7人。中には国際線のパイロットもいれば、アルファロメオに乗った若旦那やら、めちゃくちゃかわいい女の子やら多種多彩。
スノーボードなども含め自然を相手にするスポーツで、上級者と言われる人たちには2種類のタイプがある。一方は、力で自然をねじ伏せていくタイプ。そして、もう一方は自然と調和して、その時その時でベストな技術を繰り出して対処するテクニシャンのタイプだ。ぼくが弟子入りしているインストラクターは後者のタイプ。かなりの強風でも一発でキャノピーを立ち上げて、あっという間に上空に昇っていく。
彼はどうも、日本のパラグライダーパイロットの草分けらしい。当初のメンバーはほとんど事故で亡くなってしまったという。インストラクターの車の運転などを見ていると非常に慎重で、だからこそ、これまでに無事でいられたのかもしれない。だが、自然に対して謙虚な、あるいは、慎重な彼は、人に対しては力でねじ伏せる対応をとるから人間って面白いって思う。いつか、このクラブに集まる雑多な人間たちをモデルに小説を書きたいと思っているが、パラグライダーのライセンスを取るまでは人間関係を壊したくないので、それまでは控えるつもりでいる。とにかく、インプレッシブな人たちである。

午前中は風が弱く、風待ちをしていたのだが、午後になって最初は2mぐらい、それから7mを越える強風となった。最初の一本目は、斜面上昇風を捉えて、民家を越えて線路も道路も越えてややフォローぎみの風での着地となったが無事に砂浜にランディングすることができた。迎えに来てくれた車で気分良くテイクオフに戻ると、教え魔の先輩からテイクオフの講義があった。
・・・・・・昨日も書いたが、ぼくはどうも色々なことを言われると、それらをすべて反復理解しようとしてその結果、頭の中がパンクしてしまうようだ。
自然を相手にするスポーツで、一つだけの正解というのはない。起こした行動が順次、違った状況を引き起こして行き、いろいろなことが重なって、最終的な結果となる。一連の行動の中で、やることは同じであっても、人によって得ることのできるコツと言うものは変わってくる。だから、ある人が会得したコツが、他の人に当てはまるとは限らない。キャノピーをどうしてもうまく立ち上げられずに、みんなからビービー言われている女の子を見るにつけ、”まわりの声は気にするな、自分で会得したものを大事にしろ”と声を掛けてあげたくなるが、これも彼女に当てはまるとは限らないから言わないつもりだ。

2回目のテイクオフ。7mを超える風。僕は最初のフライトの後で言われたキャノピーのコントロールに気をとられていた。クロスハンドでキャノピーをライズアップ。頭上に上がったキャノピーに引き上げられ、進行方向とは体が逆のまま、空中に引きずり出された。後でインストラクターが言うには、体の向きに関係なく、キャノピーをコントロール。テイクオフディレクターが言うには、心を決めてすばやく体を反転させて、そしてコントロール。教え魔の先輩が言うには・・・・・・、もうその時は脳のキャパシティオーバーで、いろいろ言われた言葉の一つも思い出せない・・・・・・。
最悪の状況は、テイクオフ直後に何もできないこと。この時のぼくは、困ったチャンになっていた。頭が真っ白のまま、何もできずに進行方向とは体が逆のまま墜落。このスタート直後の墜落を”スタチン”(スタート際の沈没?)と言う。そして僕は、グライダーごと崖下の木に引っかかり救助されることとなった。
事故の原因。今考えればいくつもある。だが、テイクオフは自分の責任。なにがあっても、たとえ考える能力が失われても、自分でこれまで培ってきた技術を反射的に出すことが肝心だ。考えずにコントロール。考えるとどうしても反応が鈍ってしまう。
今回のスタチンで、木に引っかかったグライダーを回収するのにメンバーに大分迷惑を掛けてしまった。いい風が吹いていたのに、何人もフライトを中止して回収を手伝ってくれた。”お互い様だよ”とみんな言ってくれるが、申し訳ないやら、悔しいやら。
次回は、とにかく考えずに回りの声を無視してコントロールするぞ。


風を求めて(4)

2007-11-23 21:09:00 | 日記

今日は午前中は9mオーバーの北風。パラグライダーの講習地で風が弱くなるのを待っていたら、みんなで講習地の整備をやりだした。暇をもてあましていたぼくも積極参加。スコップで土を掘って一輪車で運び、凹凸のあるテイクオフに運び平らにする。フライトの邪魔になる木を・・・・・・どいてもらう。もちろん、私有地じゃないからこっそりと。

昼過ぎになってようやく、上級者たちが強風をものともせずにキャノピーを立ち上げてテイクオフしていく。ぼくはそれを横目で見ながら一人でグランドハンドリングの練習。これが良かった。みんなヒマだと色々教えてくれるけれど、キャノピーを操作中にいろんなことを言われると頭がついていかない。だから、操作がおろそかになってキャノピーが墜落というのが今までのパターンだった。今日は、一人で集中して納得が行くまで練習できたから、達成感が大きい。
で、夕方になって風が3m程度になってからフライトの練習。もう、インストラクターも、ほとんどぼくのフライトに指示を出すことは無い。
リッジソワリングして旋回を繰り返し、高度が低くなってきたらランディングに向かい、高度処理をしてランディング。
ランディングはまだ課題が多い。鳥のように、ぴたりと降りるのはもっともっと練習が必要だ。
早く鳥の視点から世界を見てみたい。
明日もがんばるぞ。

下の写真は上級者のテイクオフ。まだ、ぼくはフライトスーツも持っていないので、アップでお見せするような姿じゃない。


ハンバーガー4個の幸せ

2007-11-22 21:07:54 | プチ放浪 都会編

外出先で午前中に予定していた仕事があっという間に終わり、午後のアポイントまで1時間半の空き時間が突如できた。
こんな時、外出中のサラリーマンたちはどうするのだろう。やっぱり、喫茶店で報告書作成なのだろうか。
かばんの中に放り込んでいた文庫本を読んで時間をつぶそうと、いったんは駅前のスターバックスに向かう。
スタバのジャバチョコチップフラペチーノのグランデとシナモンロールで至福のひと時をと考えたのだが、昼食の時間帯も近いことなので急遽スタバをやめてマックへ。
マックのカウンターの上の掲示を見ると、期間限定のMEGA MACの表示があった。バリューセットで650円。ダイビング時のピチピチのウェットスーツで苦しんだシーズンも終わり、そろそろリバウンドに気をつけなければならないのだが、職場での話題提供のためにMEGA MACを注文。11月21日10時47分 get。約754Kカロリー(MEGA MACだけ)。これはチャーハン1杯分、または野球のピッチャーが1試合に消費する量と同じらしい。味はてりやきバーガーにチーズを加えただけでBIG MACと同じ。
ナイフとフォークでオープンサンドのようにして食べると食べやすい。検索してみると、この厚いハンバーガーをどのように食べるか攻略方法を書いたサイトでいっぱいだ。

そういえばMEGA MACって、数年前にアメリカに出張で行ったときに食費節約のため良く利用していたワシントンDCのマクドナルドで初めて見た。さすがアメリカ。でかい!って思った。一緒に食事をしたヒスパニック系の細身の女性が、キングサイズのオレンジジュースを注文するのを見て映画スーパーサイズミーを思い出してしまった。なにしろ、容器がバケツかなと思ったぐらい。つられて注文したのが、クリスピーチキンサンドとエクストララージのオレンジジュース。これほど大量のオレンジジュースを飲んだのは生まれてはじめてだったので、ジュースでトリップしそうになったことを覚えている。ポテトのケチャップやマスタードがフリーなのは日本と異なる。そういえば、韓国のマクドでもケチャップは自由に持ってけたような気がする。・・・・・・外国に行っても、僕はろくな食事をしていないんだなあ。
ジャパンマクドナルドは店舗数が多いので、新製品は香港よりも後になるのだろうか?昔、ハローキティ人形の第一弾を買い逃した香港の女の子から、日本で発売されたら買っといてと頼まれたことがあった。彼女によれば、いろいろと香港の方が先行することが多いらしい。確かにハローキティ人形のジャパンマクドでの売り出しは、半年ぐらい遅れたような気がする。

そんなことを思い出しながらMEGA MAC完食。ハンバーガー4個なら平気で食べられそうな自信がついた。次の企画には、 GIGA MAC を 宜しく。
 
Christopher Cross- Arthurs Theme


街角にはクリスマスツリー

2007-11-21 18:44:34 | bad news

あわてんぼうのサンタクロースがもう街にやってきたのだろうか。
街角には気の早いクリスマスツリー、金色のきらめき。

♪恋人がサンタクロース~♪
この曲が街に流れた頃、僕は独身で仕事に忙殺されてた。クリスマス・イブだろうと関係なかった。アークヒルズの前で、サンタの衣装を着たケーキ屋の女の子たちの前を、目を合わせないように急いで通り過ぎたのを覚えてる。当時の僕には、まるで無関係なよその世界の事だった。

ユーミンのこの歌はエポックメイキングだった。不特定多数に愛を運ぶはずのサンタクロースは、恵まれていないと思い込んでいる個人のものとなった。この歌を悪く言うつもりはない。むしろ、スキーに行く時はいつも車の中で聞いていた曲だ。だが、ユーミンは"恋人がサンタクロース"と今でもそう思ってるだろうか?
彼女の歌と時を同じくして、自己中心主義が蔓延した。自分の好みや都合を基準に、社会をどう楽しむかというのが若者達の考え方を支配した。商業主義もその後押しをした。

本当は、クリスマスはもっと豊かな愛で満ち溢れているはず。街角のサンタは恵まれない人々のために奔走してる。絵本だけのお話ではない。外国での話だ。
今の日本では格差が広がり、ネットカフェ生活者など定住の場所を持たない若者が増えている。
『日雇い派遣』という名の日々雇用と手配師に身を任せる若者たち。『高度成長期』と呼ばれた時代の三谷や西成が頭をよぎる。「貧困の連鎖」はますます加速している。労働市場にまかせておいたら、賃金は1円でも安い方がいいに決まっている。最低賃金に対する政府が介入が今こそ必要な時だ。

幸せな人だけがクリスマスを祝うのは哀しい。僕らにできる小さな行動のことをずっと考えている。
絵本だけのお話にしないためにも。


松田聖子 - 恋人がサンタクロース


ナイフで切った夏

2007-11-20 20:34:13 | old good things

昔のPARCO のキャッチコピーにあった「ナイフで切ったように」、季節が変わった。あの年の夏の終わりもこんな感じだった。
まるでスプレー缶が空になるように、さまざまな思い出をはき出していた夏は過ぎ去り、一足飛びに秋を飛び越して枯葉が舞う冬がやってきたような印象を僕に与えた。

ー大道芸人になりたいー
そう言ってユウカは、かばんから取り出したボールでジャグリングした。その見事な手さばきに、僕は机に腰掛けたままあっけに取られて、他のみんなはもう下校してがらんとした教室を見渡した。ストリートで大勢の観客が拍手する姿が目に浮かんでは消えていった。
ユウカに誘われて春先の横浜大道芸を一緒に見に行ったのは、それから間もなくの頃だ。野毛はもちろん、他にイセザキモールと吉田町地区、馬車道通り、赤レンガ倉庫やクイーンズパークまで足を伸ばして、僕らは日が暮れるまで大道芸のパフォーマンスに見入っていた。
僕らは、よく旧東横線高架下も散歩した。まわりの恋人たちが湘南やら横浜に繰り出したり、校舎の裏で唇を重ねあうのと同じ理由だった。高架下のウォールペインティング。そこには、音楽やポップカルチャーがあふれていた。
バスキアやキース・へリングが牽引した80年代のグラフィティアートのムーブメント。ペインティングの世界は、抽象絵画の模索を続けていた。高架下のグラフィティアートは、表現力への無数の実験の痕跡や音楽的なメディテーションを想像させ、アメリカへの大きな夢をはぐくませた。僕らは街中を歩きつかれると、よく冷えたペプシを手に道端に座り込んでいつまでも夢を語り合った。笑ったり怒ったり、時々には泣いたりもしながら。
その年の夏が「ナイフで切ったように」終わりを告げ、僕らのムーブメントは終焉を迎えた。枯れ葉舞う冬空の下、僕らの影が冷たい地面に伸びていた。それが僕にとって忘れられない季節となった。あの18歳という季節を巡る恋の想い出は、昇華も消滅もせずに今も僕の胸にある。冬枯れた街並みを見れば、今でも時々ユウカのことを思い出す。そんな時僕は、ユウカに教わって覚えたブレークダンスを無意識に踊っている。

nakamura singing koibitomo-nurenumachikado