月刊登記情報2009年2月号に「実務家による商業・法人登記Q&A(3)」が掲載されており、「Q1 取締役の辞任と定款の添付の要否」があり、「定款の添付は不要」と論じられている。登記実務の取扱いを支持するものであるが、この点は、私がかねがね疑問に感じているところであるため、以下に私見を述べることとする。
会社の登記における添付書面は、登記すべき事項の設定、変更又は消滅等を証するための書面である。会社の行為は、会社法が定める手続に則って行われるのが原則であり、原則どおりの場合には、所要の手続が履行されたことを証する書面を添付すればよいし、登記官は、会社法が定める原則に従って審査すればよい。
しかし、会社法が定款の別段の定めを許容している場合に、その定める手続に則って行われた行為については、手続が履行されたことを証する書面のほか定款の添付が必要となる。定款の定めがなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなるからである(商業登記規則第61条第1項)。定款の添付がなければ、登記官は、会社法が定める原則に従って審査することになるから、原則と異なる手続で行われたことを証する書面を添付してされた登記の申請を受理すべきではない。登記官は、間違っても「定款で任期を伸長したのだろう」と「善解」すべきではない。これを認めるのであれば、定款の別段の定めが許容されているすべての場合に「善解」理論が働き、定款の添付など不要となってしまうからである。
取締役が会社法が定める原則的な任期である2年以内に辞任したときは、確かに辞任届だけでよいであろう。可能性としては、定款で任期を短縮しており、実は任期満了していることもあり得るが、登記官は、会社法の原則に従って審査すればよいからである。しかし、定款で任期を4年に伸長している株式会社において、選任後3年を経過した取締役が辞任したという場合には、会社法が定める原則的な取扱いとは異なるわけであるから、定款の別段の定めに則っていることを証するために、定款の添付も要すると考えるべきである。
上記Q&Aでは、「辞任届に『誰がいつ辞任するか』ということを本人自ら記載している」から「退任を証する書面(商業登記法54条4項)により証明すべき事実すべてを揃えたことになり、定款の添付は不要である」と論じられているが、上述のとおり、辞任届のみでは「証明すべき事実をすべて揃えた」ことにならないのは明らかである。
また、「取締役が一方的に辞任する本問のケースでは、商業登記規則61条1項の問題ではない」と論じられている。確かに、取締役は、一方的意思表示により辞任することができるが、当該取締役が権利義務承継者である場合には、辞任することはできないから、辞任の登記をすることはできない。選任後3年を経過した取締役は、会社法の原則では、権利義務承継者と判断されることになるので、定款の別段の定めがなければ辞任の登記はもちろん受理されない。したがって、そのような登記の申請に際して、定款の添付がなければ、「定款の定めがなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請」(商業登記規則第61条第1項)に該当するので、定款の添付を要すると考えるべきである。
登記官は、定款の添付がなければ、定款の別段の定めはないものとして、会社法が定める原則どおりに審査すべきであり、定款の別段の定めがあるかもしれないからと「善解」して登記申請を受理すべきではないし、また「深読み」し過ぎて登記申請を受理しないなどということがあってはならないというべきである。選任後3年を経過した時点での取締役の辞任の場合は前者であり、選任後1年を経過した時点での取締役の辞任の場合は後者である。
会社の登記における添付書面は、登記すべき事項の設定、変更又は消滅等を証するための書面である。会社の行為は、会社法が定める手続に則って行われるのが原則であり、原則どおりの場合には、所要の手続が履行されたことを証する書面を添付すればよいし、登記官は、会社法が定める原則に従って審査すればよい。
しかし、会社法が定款の別段の定めを許容している場合に、その定める手続に則って行われた行為については、手続が履行されたことを証する書面のほか定款の添付が必要となる。定款の定めがなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなるからである(商業登記規則第61条第1項)。定款の添付がなければ、登記官は、会社法が定める原則に従って審査することになるから、原則と異なる手続で行われたことを証する書面を添付してされた登記の申請を受理すべきではない。登記官は、間違っても「定款で任期を伸長したのだろう」と「善解」すべきではない。これを認めるのであれば、定款の別段の定めが許容されているすべての場合に「善解」理論が働き、定款の添付など不要となってしまうからである。
取締役が会社法が定める原則的な任期である2年以内に辞任したときは、確かに辞任届だけでよいであろう。可能性としては、定款で任期を短縮しており、実は任期満了していることもあり得るが、登記官は、会社法の原則に従って審査すればよいからである。しかし、定款で任期を4年に伸長している株式会社において、選任後3年を経過した取締役が辞任したという場合には、会社法が定める原則的な取扱いとは異なるわけであるから、定款の別段の定めに則っていることを証するために、定款の添付も要すると考えるべきである。
上記Q&Aでは、「辞任届に『誰がいつ辞任するか』ということを本人自ら記載している」から「退任を証する書面(商業登記法54条4項)により証明すべき事実すべてを揃えたことになり、定款の添付は不要である」と論じられているが、上述のとおり、辞任届のみでは「証明すべき事実をすべて揃えた」ことにならないのは明らかである。
また、「取締役が一方的に辞任する本問のケースでは、商業登記規則61条1項の問題ではない」と論じられている。確かに、取締役は、一方的意思表示により辞任することができるが、当該取締役が権利義務承継者である場合には、辞任することはできないから、辞任の登記をすることはできない。選任後3年を経過した取締役は、会社法の原則では、権利義務承継者と判断されることになるので、定款の別段の定めがなければ辞任の登記はもちろん受理されない。したがって、そのような登記の申請に際して、定款の添付がなければ、「定款の定めがなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請」(商業登記規則第61条第1項)に該当するので、定款の添付を要すると考えるべきである。
登記官は、定款の添付がなければ、定款の別段の定めはないものとして、会社法が定める原則どおりに審査すべきであり、定款の別段の定めがあるかもしれないからと「善解」して登記申請を受理すべきではないし、また「深読み」し過ぎて登記申請を受理しないなどということがあってはならないというべきである。選任後3年を経過した時点での取締役の辞任の場合は前者であり、選任後1年を経過した時点での取締役の辞任の場合は後者である。