tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「IR」の変遷と経済・社会

2017年05月20日 11時20分26秒 | 経済
「IR」の変遷と経済・社会
 IRという略語をご覧になって、皆様は何のことだと理解されるでしょうか。多分、お仕事の専門領域や年代によって違うのではないかと思います。

 私が学生の頃(昭和30年前後)から、高度成長期を経て、 二度のオイルショックなどもあってその後ジャパンアズナンバーワンなどといわれた昭和の末期から平成のはじめまで、ほぼ1980年代まで、IRといえば Industrial Relation つまり、「労使関係」という読み方が普通だったように思います。

 戦後の荒れた労使紛争の時代から、世界屈指の良好な労使関係を実現し、それに支えられて、ジャパンアズナンバーワンと言われるような 経済社会を作り上げたというのがエズラ・ボーゲルの指摘でもあります。日本が世界の花形の時代でした。

 1985年のプラザ合意で大幅な円高になり、その対策として取られた大幅な金融緩和がバブル景気を作り、それが崩壊(1990-91年)して、「失われた20数年」に入り、リーマンショックによる経済どん底も経験した時代になって、IRは別の意味で使われることが多くなりました。

 日本の実体経済は円高で極度に不振となり、アメリカ流のマネー資本主義が滔々と流入する中で、IRといえば Investor Relations つまり「投資家情報」という理解がマスコミの中でも定着することになりました。
 実体経済の影が薄くなり、 マネー経済が主役のような時代でした。

 この時代はまだ続きていますが、最近はまたIRが全く違った意味で使われることが多くなりました。
 それは  Integrated Resort です。直訳すれば、「統合娯楽施設」でしょうが、その娯楽施設の中に「カジノ」が入っていなければ、Integrated Resort(IR)とは言わないようですから、はっきり言ってしまえば、「Casino」ということでしょう。
 このIRは今後、マスコミの中でも頻繁に使われることになるような情勢です。

 ということなのですが、この変遷を、このブログの趣旨である「付加価値の重視」という立場から考えてみると、そこには大きな問題があります。

 先ず、労使関係のIRは、まさに生産現場の問題です、社会のために付加価値を生産する場で起こる問題がテーマです。
 
 次に、投資家情報のIRは、投資の対象は、付加価値生産を業とする企業ですが、マネー市場でで飛び交うおカネが目的とするのは、付加価値生産よりも、カネでカネを稼ぐ投機資本です。

 そして統合娯楽施設のIRになりますと、これはもう投機も超えたギャンブルそのものの世界です。公認賭博で自分のカネさえ増えればいいということでしょう。社会を豊かにする付加価値生産は影も形もありません。

 IRの世界は、自分たちで付加価値を創って豊かになろうという人間本来の社会から、誰かが付加価値生産をしてくれるから、俺たちは持っているカネさえ増やせばいいという社会への「 進化(劣化)」のように感じられます。

 さて、これからどうなっていくのでしょうか。真面目な日本人の多くが心配しているようです。