tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2019年春闘大手妥結へ

2019年03月14日 15時28分21秒 | 労働
2019年春闘大手妥結へ
 今年の春闘は今日が集中回答日ですが、主要企業では昨日から交渉をまとめようとの労使の努力で、交渉結果がマスコミから報道されています。

 アベノミクスが喧伝されるようになってから、政府が毎年春闘に介入し、官製春闘などと言われてきましたが、今春闘では労使ともに、賃金決定は労使の専管事項という世界の常識に回帰してきたようです。

 折しも、世界経済情勢は米中貿易摩擦などを中心に、先行き不透明な様相になり、日本でも中国経済の減速の影響、これから本格化する日米のFTA交渉の先行きなどを含めて、労使双方がともに 慎重な賃金決定に動いたようです。

 春闘というのは、一般的には労使が交渉して、賃金が何円、何%上がるかという交渉という事だけのように見えますが、この実は、年1回のこうした全国の企業に影響力を持つ労使の活動によって、日本経済のあるべき姿を見定めていく重要な行動なっているのというのが本当の姿というべきではないでしょうか。

 ご承知のように、日本経済の規模はGDPですが、これは1年かけて国民が働いて生み出した経済的価値(付加価値)で、これが雇用者報酬(賃金)と営業余剰(利益)に分配されて、政府は雇用者報酬から所得税や社会保険料を取り、営業余剰からは法人税や社会保険料を取り国家予算を組んでいるということにつきます。
 
 つまり、労使が働いて生み出した付加価値を労使間でどう配分するかが「春闘」で決まるのです」。経済の歴史を見れば、この労使の分配のしかたがその国の経済の先行きを決める基本的なものということが知られます。

 もう少し付け加えれば、労使が生み出した付加価値という「パイ」が大きくなれば労使への配分は増え、「パイ」があまり増えなければ分配もあまり増えないというのは当然で、この「パイ」の分配に失敗すると分配関係が歪んで、経済的、社会的不安定が発生するということになっていくというのがこれまでの経験なのです。

 こうして「春闘」は、日本経済の在り方の基本を形作る作業を、日本経済を担当する労使が年1回、全国的な規模で議論し決定するという大変な行事なのです。
 労使に良識があれば合理的に平穏に収まりますが、労使関係が悪ければ、ゼネラル・ストライキや暴動にまで発展することすら起きるわけです。

 戦後日本の労使関係は、そういった時を克服し、世界に冠たる安定した「日本的労使関係」を確立してきました。
 そして今、日本の労使関係は、健全で安定した社会の実現のため、格差社会化に流されがちな世界的な風潮の中で、格差社会化阻止を目指して、新たな方向を模索しているように思われます。

  日本的労使関係の特徴は、労使それぞれの事情は大事にしながらも、その先にある労使共通の目標である日本経済・社会の安定的発展を目指しているという点が明確なところにあるといってよいでしょう。(「連合白書、経団連「経労委報告」など」

 そんな視点で、今日の集中回答日から、中小企業まで決着を見る6月ごろまでの春闘の姿を見ていくことが「春闘の役割」への理解としては必要ではないでしょうか。