tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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新入社員入社まで1か月、初任給2題 その2

2019年03月03日 22時58分26秒 | 労働
新入社員入社まで1か月、初任給2題 その2


厚労省:「賃金構造基本統計調査:所定内賃金」

前回述べましたように、初任給は、社会人、サラリーマンになって、初めて手にする給与、自分が社会の役に立っていることの証拠として受け取るものです。
 カネを払って勉強するという役割から、社会に貢献してカネをもらうという180度の大転換のスタートです。

 ところで、欧米流の賃金システムは通常、職務給ですから、日本で言えばパートと同じで、新卒でも高齢者でも同じ仕事に付けば同じ賃金です。
 では日本の初任給というのは何でしょうか。
はっきり言えば、「まだ仕事はなにも解っていないけれども、此の賃金でスタートして年々習熟に従って賃金が上がっていきます。頑張りましょう」という賃金でしょう。

 ではこれから年(勤続)と共に「賃金はどんな風に上がっていくのか」というのが標準的な賃金カーブという形で会社ごとに決まっています。会社ごとのものは、その会社の賃金規則や賃金協定になっているわけですが、日本中の会社の平均はどうなっているのかは厚労省の「賃金構造基本統計調査」でわかります。

 上の図は、同統計の最新版、平成28年版(27年6月調査)からで、ここでは典型的なものを示すという意味で、産業計、規模計(10人以上企業)男子大卒、標準労働者(新卒採用でずっと勤続している人)を取り上げています。
 初任給は大体20万円強、年々ほぼ直線的に上がって行って、50-54歳の所でピークになります。(これは所定内賃金、賞与は別)

 これは、以前、日本企業の定年は55歳が普通で、年々賃金が上がっていくというシステム(いわゆる年功賃金:年齢と功労が標準的に上がっていく)は、若い時は働きより安い賃金、高齢になると働きより高い賃金というシステムで、55歳到達時にバランスがとれるようになっていたことから来ているものです。(旧定年年利後は55歳到達時点で清算〈企業によっては60歳〉で清算したのでその後は職務・能力に見合ったものにしていくべきだろうというのが現状の考え方です)

 ちなみに20-24歳~50-54歳の30年間に賃金がどのくらい上がるかと見ますと、2.54倍になっています。
 では、その間平均的に1年で何%上がっていくかを計算しますと年3.15%という事になり、これが定期昇給という事になります。(勿論大卒男子の場合です、また70歳以上の所が高いのは、この年代の多くは役員だからでしょう)

 新卒一括採用の場合、初任給というのは、ある意味ではこうした賃金のオートマティックな上昇を前提にしたもの(将来は上がりますよ)という事になるわけです。

 初任給の前提になっている此の「賃金カーブ」は極めて日本的なもので、同一労働同一賃金の原則に立つ職務給とは全く相容れないものです。

 この日本的な賃金システムが、今後崩れて、欧米流の職務給になっていくのか、定期昇給のある日本型の賃金制度が今後も生き延びていくのか、学者にも、企業の事務者にも、賃金評論家にも、なかなか読み切れない問題のようです。