tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

家庭(家計)の貯蓄保有額はどのくらいか

2019年03月24日 16時50分41秒 | 経済
家庭(家計)の貯蓄保有額はどのくらいか
 日本の個人貯蓄の額は総額1800兆円を超えているということはよく言われます。GDPの3倍以上の大きな金額で、平成不況に耐えて最近は生活防衛に徹している日本人の勤勉さの表れと説明されます。

 この金額は、日本銀行の「資金循環表」の中で「家計」部門の運用しているお金という形で示されているものです。家計といっても、サラリーマンや年金生活者のほかに自営業主も含みます。1800兆円の中身は現金・預金、証券、保険、その他と家計が貯蓄として持っているものはすべて入ります。

 あまり金額が大きすぎて実感がわかないかもしれません。でも人口12000万人で割れば、日本人1人当たり1500万円ほどということになります。
 もう少し実感に近い数字というのは「家計調査」の「貯蓄・負債編」に詳しく出ています。(日銀の数字と違って現金「タンス預金?」は入っていません)。

 ここでは最も代表的な2人以上所帯(総所帯の73%、単身所帯は27%)の数字を見ていきます。
 日銀の「家計」と家計調査の「所帯」は同じと考えてよいでしょう。また貯蓄の中身は家計調査では現金は入っていませんが、あとは同じとみてよいと思います。

 家計調査では所帯の中に、「勤労者所帯」という区分もありますから、「2人以上所帯」とその中で「勤労者所帯」についての貯蓄残高を図にしました。



「青」は平均値ですが、実感と比較するために「中央値」も「赤」で併記しました。
 ご承知のように、平均値は特別に高額の貯蓄を持っている人がいるとそれに引っ張られて上がります。中央値の方は、最高値の所帯から最低値の所帯まで1列に並べて、真ん中の所帯の貯蓄保有額ですから、分布が歪みを持っている場合にはより実感に近いものになるでしょう。
 (例えば11人のうち10人が1000円から順に1万円まで持っていて、1人が5万5000円持っていれば総額は11万円、1人平均1万円持っていることになりますが、中央値は下から6番目、上からも6番目の人の6千円になります。
 つまり、平均値と中央値の格差が大きいほど、格差社会ということになります。)
 
  図で見ますと自営業を含む2人以上所帯の場合は、平均貯蓄残高は1812万円、中央値は1074万円、勤労者所帯の場合は平均値は1327万円、中央値は792万円(いずれも2017年)となっていて、額としては自営業所帯を含む方が、大分多くなっています。

 一方平均値と中央値の関係を見ますと平均値の60%前後が中央値という比率はほとんど同じで、過去10年間の推移を見ても、年によりプラス・マイナス1~2ポイントの上下があるだけで、貯蓄残高における格差化はあまり見られていないようです。

 実は、もう少し格差化傾向が出るのではないかと思っていたのですが、あるとすれば、問題はこれからということでしょうか。
 「平均と実感の違い」ということも含めて、家計の貯蓄の状況を見てみた次第です。