tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

安倍首相、経団連と春闘前哨戦

2019年12月27日 23時59分33秒 | 労働
安倍首相、経団連と春闘前哨戦
 昨26日、安倍総理は経団連の審議員会に出席、間接的な表現ながら、来春闘でもなるべく高い賃上げをお願いしたいと、7年連続、7回目の要請をしたそうです。

 賃金決定は労使の専管事項で、政府が介入すべきものではないということは年々の学習の結果理解したようですが、賃上げをすれば景気が良くなるという理解(誤解)は相変わらずで、内心はアベノミクスが巧くいかないのは賃上げが低いからだという意識も相変わらずのようです。

 今回は、経済発展にはイノベーションが大切で、新技術にどんどん投資してくださいと言い、次いで人材への投資も重要といい、だから賃上げにも期待しているとつなげたようです。
 中西経団連会長は、賃上げのモメントは続けたいと答えたようですが、経営者としては有限の資金の中で投資も賃上げもと言われても大変でしょうが、そこは「企業それぞれに」と答えたようです。

 官製春闘などと悪口を言われながら、6年続けてきて効果の見えなかったものをまた今年も言うのですから、普通なら「どこか違うのかな」と自分で疑問を感じるところでしょうか、安倍さんのいつものセリフ「国民の理解を得るために丁寧に説明する」というのは、ただ「同じ事を何度でも繰り返す」ことですから、7回目も繰り返したという事でしょう。

 さらに安倍総理は「ご参考までに」という意味でしょうか、「半世紀前の東京オリンピックの年の賃上げは12%だったそうですと付け加えたようです。
「冗談ですが」とも言わずに、こうした場で、こんな荒唐無稽な発言をすることは、一国の運営の衝に当たる責任者として、誠に不真面目という事になるのではないでしょうか。

 大体、安倍さんのいう事は賃上げなどについては素人の域を出ないような気がします。ただ、賃上げをすれば、消費が伸びて景気が良くなるという思い込みを繰り返しているだけで、論理不明です。

 このブログでも繰り返していますが、今、日本人の多くは、将来不安の意識が強く、賃金が上がったら将来のために貯蓄を増やそうと考えているから「平均貯蓄性向」が上がり、「平均消費性向」が下がって消費不振になっているのです。
 
 そして、将来不安を煽っている張本人は、誰かと言えば安倍政権でしょう。 財政赤字、年金不安、ゼロ金利、極めつけはプライマリー・バランス 回復不明という状態でしょう。
 国民は安倍政権が考えているよりずっと賢明で、そうした将来不安に備えているのです。

 最後に私の手元にある「半世紀前の東京オリンピック」の時の経済成長率と賃上げ率を見ておきましょう。
 前回の東京オリンピックは1964年でしたから、春闘で参考にしたのは1963年度の経済成長率でしょう。
1963年度実質成長率 = 12.5% (1964年度=10.5%)
1964年春闘賃上げ率 = 12.2% (大企業のみ調査)
 経済状態に見合った賃上げが合理的とすれば、今年度の実質成長率(政府発表:実績見込み)0.9%ですから・・・。