政府支出の効率はどうか
現状、日本の国債残高はGDPの3倍ほどです。これでも主要国の中では常にトップクラスで、「日本の財政は危機的状態」などという海外からの批判は絶えないようです。
しかしマーケットでは円は信用があり「何かあると円高」といわれるような状態です、当然国債の価値もマーケットの様子を見る限り問題はなさそうです。
では残高がGDPの5倍になったら、10倍になったら・・・といっても、なってみなければ解らないというのが本音でしょう。
問題は、何倍だったら駄目というのではなくて、その時の日本の実体経済がどんな状況になっているかという事ではないでしょうか。
今年度はコロナ禍で国債発行は大きく増えました。政府は経済の落ち込みを小さくしたいから3次にわたる補正予算を組んでいます。この補正予算について見てみましょう。
年度早々の4月に組んだ第一次補正予算は、安倍さんの言葉を借りれば、事業規模108兆円で財政支出26兆円、その差は、財政投融資や民間の関連事業という事になります。
5月の第二次補正は財政支出32兆円で事業規模117兆円、この時は30兆円の予備費が組み込まれているという事で30兆円は大き過ぎると問題になっていました。
そして今回、菅内閣で纏めつつある第三次補正は、本年度分で財政支出20兆円で事業規模73兆円となっています。
いずれにしてもこうした補正予算の財源は、殆どが国債で、国債残高は急速に増える事になります。
政府としてはコロナ対策として「最大限の努力」と国民に見せたいのでしょうが、この事業規模をみんな足し合わせたらどのくらいになるでしょうか。
108+117+73=293 つまり日本経済の中で約300兆円の事業が行われるという事になるのです。
日本経済が昨年度550兆円ほどで、今年はコロナで減って、500兆円になると予測されていますが、これらの数字を比べてみてもかなりのギャップがあります。
政府の発表する数字に合理性があると仮定して、計算してみれば、550兆円-293兆円=257兆円ですから、3次にわたる補正を組んでその波及効果も含めて考えれば、「放置すれば日本のGDPはコロナのせいで、257兆円にまで落ち込んでいた」という事になるのです。
日本よりずっと大きな人的被害を受けている諸先進国でも、GDPの落ち込みは2割から3割といわれていますが、日本の場合GDP6割減という数字が見込まれていたことになります。
補正予算の事業規模が政府の指摘通りに実現されていた場合には、例え日本のGEPが昨年度の半分に落ち込んでも 275兆円+293兆円=568兆円 という事で、日本経済はコロナにも関わらず、アベノミクス以降最高の3.3%の経済成長率という事になるようです。
という事は一体どういう事でしょうか。
はっきり言ってしまえば、政府支出を増やして経済活動を活発にしようという財政政策の効果が「政府の目論見通りの効果を上げていない」可能性が大きいという事です。
政府は気前よく金を出せば、国民は喜ぶと思っているのでしょうが、その裏には非効率な金がばらまかれ、財政悪化に拍車をかけているという事があるようです。
次回はその辺りの痕跡と、その齎す問題を考えてみましょう。