tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本の国債が紙屑になる条件(4)経済の部

2020年12月13日 21時21分18秒 | 経済

 コロナの状況を見ますと、政府が「まだ医療崩壊には間がある」と言っているうちに、すでに医療崩壊が始まってしまいました。設備と人の両面です。
 建設は時間を要しますが、崩壊は急速に進みます。
 「国債紙屑」論にもそんな所があるかもしれないので、十分注意が必要です。

 経済面で注意すべきは先ず、インフレと国際収支でしょう。この場合のインフレは消費者物価のみならず株価や地価も見なければいけません。

 今、物価は安定といわれています。そしてこんなに金融の量的緩和をやってもインフレにならないというので、MMTなどという理論が出てきたのです。

 しかし本当に金融緩和の影響がないのでしょうか。
 確かに消費者物価には表れていません。しかし株価にははっきり表れています。また先日は菅総理が政府の経済政策が成功したかのように「地価が上がった」と喜んで発言していましたが、また土地バブルをやりたいのでしょうか。

 異次元金融緩和でじゃぶじゃぶのカネはマネーマーケットに回って株価を押し上げ、喉元過ぎたのか禁断の土地バブルに向かい始めているのでしょう。
 一方、実体経済は成長せず、給料は上がらず、一般国民は老後に備えて貯蓄に励み、消費性向は下がるばかり、これが消費者物価の上がらない原因です。

 起きていることは金融緩和のカネは金持ちの所に回り株価を押し上げ加えて地価上昇となれば「キャピタルゲイン」は増えるでしょうが、実体経済の不振で「インカムゲイン」は停滞、日常生活の物価は上がらないという「実体経済不振」「マネー経済繁盛」という図式です。
 その結果は明らかで、日本もいよいよ格差社会に突入してきているのです。

 「政府は貯蓄から投資へ」といって、NISAで積み立て、iDeCoで「キャピタルゲイン」を稼いで老後に備えて下さいと本気で言っています。
 国民は自助努力で「投資(投機?)」で稼ぐのがいいと教え、国民がそれに従えば、政府は楽です。現実は、政府も年金資金を株に投資して失敗することが結構多いですね。

 そんなことをしていたら、実体経済はどうなるのでしょうか。これからも0.5%成長の日本経済を続けていくつもりなのでしょうか。カジノも呼んできて、投機とギャンブルの国にしていくつもりなのでしょうか。

 現に日本の生産力は随分落ちてきているようです。直接目には入らなくても。大切な不織布マスクから多種多様な家電製品までよく見ればMade in China です。一時国産マスクが無くてマスクの値段が高騰しました。政府は中国から輸入を増やせばいいと思ったようです。国内の電機産業などが異業種参入して収まりましたが「足りなければ輸入」でいいのでしょうか。

 経済統計で見ますと、かつては常に黒字だった貿易収支が、今は殆どドトントンです。それでも経常黒字だというのは、第一次所得収支、つまり海外に進出している日本企業からの利子配当収入が増えたからです。生産活動は外国でその国の労働者によって行われているのです。だんだん日本は、得意だった「モノづくり」が下手になるでしょう。

 先を行っているアメリカの例を見れば、かつてはMade in USAが世界を制覇し、次いで安価な労働力を求めて海外に進出した企業が、多額の利子配当を齎したのですが、その結果、アメリカ国内の生産力(実体経済)はお留守になり、製品輸入が増加、貿易収支の赤字が第一次所得収支を上回り(海外での戦費などもあり)赤字国に転落、世界に迷惑をかけ、いま中国との貿易戦争ですが、アメリカの中国進出企業は多く、返り血を浴びています。
 このままいけば日本もアメリカと同じ道をたどることになるので要注意です。

話を「国債紙屑論」に戻せば、アメリカの轍をふめば、日本は基軸通貨国ではないので、通常の赤字国で、かつての韓国や、ギリシャのようにIMFの勧告を受けて、緊縮財政を強制され、円の価値は何分の1かになって、国債紙屑が現実になるのでしょう。

 すでにスマホでも有機ELでも海外に後れを取り始め、今回のコロナワクチンでも、政府は自力開発など一言も言わず、海外からの割り当て獲得ばかりに熱心という状態です。
 研究開発費の伸びない事はすでに指摘しましたが、日本学術会議への僅か10億円の支出を振りかざして研究開発の発信地に自己都合で揺さぶりをかけるというバランス感覚、先見性、洞察力の無さが目立ちます。

繰り返しますが。「建設には時間を要しますが、崩壊は早い」のです。コロナのように手遅れにならないことを願うばかりです。