tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本の国債が紙屑になる条件(5)技術開発の部

2020年12月15日 23時34分40秒 | 科学技術
日本の国債が紙屑になる条件(5)技術開発の部
 表題と逆に、国債が紙屑にならないようにするための条件という事であれば、「技術開発で世界に先行」が最も確実で、その故に最も大切な条件という事が出来るように思うところです。

 勿論、私は科学技術については素人で、持っている情報はマスコミ頼りか、状況証拠からの推定といったものです。
しかし、それでもなお、最近の日本の技術開発の状況は、何か、国債を紙屑にする条件の方に入ってきているような気がしてなりません。

 正直言って、少し前までは、おそらくリーマンショック前までは、日本が技術開発、技術革新で、世界をリードすることはあっても、次第に後れを取るような状態になるといった心配はないだろうと思っていました。
 しかし、最近は何か心配になることが多いような気がしています。

 太陽光発電が騒がれ始めたころ、日本は世界をリードする勢いでした。今は違うようです。蓄電技術はどうでしょうか。これから最も需要の多い技術開発の分野ですが、材料、部品の開発も含めて、日本が優位に立つことは十分可能だと思っていますが、大丈夫でしょうか。テスラは、松下の電池購入から自社開発に動き始めたようです。

 心配が始まったのは、 研究開発投資の統計、更には人件費の中の 教育訓練費の縮小といった研究開発に直結する数字を見て、これでは中国、韓国に後れを取るのも当然かと思うようになったことです。

 国家の命運に関わるような技術開発についての失敗:日本の知恵を集めたはずの「 もんじゅ」末路は哀れなものでした。
創られた神話の崩壊:大地震の時は原発に逃げ込めば絶対安全という見学者への説明が結局は創られた神話だったという現実を知りました(小泉元総理も同じ!)。
日本が世界に誇ったディスプレイ産業の衰退:ジャパン・ディスプレイはどうなるのか、有機ELは日本の得意分野ではなかったのか。今は韓国に負けています。
更にはネットワーク社会の進展の中で、どこまで重要な位置を占めるようになるのか解らないスマホの新製品開発の遅れも見えています。
そして、今やデジタル社会化、電子マネーの世界でも、訪日中国人の活用の広がりを見て驚く日本人になっています。

鳴り物入りで走り出したマイナンバー・カードはどうでしょうか。普及は遅々として進みません。お役所はまだまだ紙とハンコ、デジタル化担当大臣の事務所の届けは紙だそうです。

余計なことも書きましたが、このブログで科学技術の流れを追ってきて 大きな転換点になっているのはリーマンショックだったのではないかと考えています。

円高とバブル崩壊のダブルのデフレで始まった平成長期不況でしたが、日本経済は2000年に底入れし、アメリカのITバブル崩壊の影響は受けましたが、2002年か2008年のリーマンショックまでは、何とかジャパンアズナンバーワンの時代への復元を目指して頑張っていたように思います。

 しかし、リーマンショックによる再度の円高$1=¥75~80では日本経済は殆ど死に体でした。2009年から2012年まで、長期不況の最後に瀕死の経済を経験した産業界、一般家計は、節約により自己防衛という殻に閉じこもる消極性の中にサバイバルを見出そうとし、積極策は破綻への道と考えるようになったように思われてなりません。

 投資をするなら海外、国内では儲かるはずがないと考える企業。少子高齢化の進捗の中で、賃金も年金も良くなることは期待できない、大事なのは貯蓄して将来に備えることと考える家計、そして、言葉ばかりが立派でも(一億総活躍、全世代型社会保障・・)、全く実感の湧く政策をとらない政府、こんな構図が出来上がってしまい、2013~14年以降の円安政策の成功の後も自虐的に成長しない経済を作ってしまっている日本になっているのではないでしょうか。

 一つ「頑張る日本」の例を挙げれば、自動車産業でしょう。例えばトヨタは、ずっと「年300万台国内生産は死守」と言い続けています。このブログでは「涙が出るほど有り難い話」と書いた記憶があります。

 国内で、世界トップのモノづくりを続ける技術開発力を維持する、これこそが日本が本来の日本らしさを取り戻す「鍵」ではないでしょうか。

 日本を本来の日本に戻す責任は結局は政府にあるのでしょう。今、 政府は学術を目の仇にしていますが、学術は研究開発の根っこです。
 その意味では学術を自分の意に従わせようと、秦の始皇帝の焚書坑儒の焼き直しをやるのは、自らの手で「国債紙屑」を招いているようのものだと考えています。

2020年12月の日銀短観、回復基調ではあるが

2020年12月15日 00時04分26秒 | 経営
2020年12月の日銀短観、回復基調ではあるが
 今日、標記の「日本銀行短期経済観測」が発表されました

 日本経済も企業活動も家庭の消費行動も、緊急事態宣言で極端なまでに縮小した今年の4,5月の、いわばドン底状態から、コロナ禍の中でも、何とかビジネスを続けようという模索、試行錯誤の中で、業態転換や働き方(リモート方式)の工夫なども含めて次第に回復基調を掴めたかなという状態に入ったようです。

 しかし、些か問題があって、政府のGoToキャンペーンなどで、経済の一部分に重点が傾きすぎ、その結果、コロナの第3波が予想外の厳しさになって、年末年始にかけて、また経済活動を制限しなければならない状況になってしまっています。

 この所の推移を見ますと、企業の景況判断のうち、「良い」と答えた割合から「悪い」と答えた割合を引いた「%差」で企業の感覚とその動きが示されています。
 
 先ずは大企業「製造業」から見ていきますと、今年6月の調査が最大の落ち込みでマイナス35%、次の9月がマイナス27%、そして今回12月がマイナス10%(17ポイント改善)という結果です。
 一応順調に最悪から抜け出すという数字になっていますが、先行き(ほぼ3か月先)の回答はマイナス8%という予想で、あまり改善を期待していない企業が多いようです。

 業種別に見ますと改善していないのは造船重機のみで、改善幅の大きいのは自動車、木材・木製品、鉄鋼、非鉄、生産用機械などで、中国経済回復の影響が大きいようです。

 大企業「非製造業」で見ますと、宿泊・飲食サービスの9月マイナス87%、12月マイナス66%という大幅な落ち込みは別として非製造業全体では9月マイナス12%、12月マイナス5%で製造業に比べれば落ち込みは小さいようです。

 建設、小売り、通信、情報サービスなどは、リモートばやり、巣ごもり需要などでプラス10~30%という活況です 

 注目を集める宿泊・飲食サービスについては、GoToキャンペーンのせいもあってでしょうか、絶対水準は、まだマイナス66%と低いとはいえ21%の回復で、先行きはマイナス62%とゆっくりの回復を見込んでいますが、今日発表の年末年始のGoTo中止の政府決定は入っていないでしょうから、もう少し悪いかもしれません。

 中堅企業、中小企業はどうかと見てみますと、中堅企業製造業は9月のマイナス34%から12月はマイナス17%への回復、中小企業製造業は9月のマイナス44%から12月のマイナス27%に回復という事で、規模が小さいほど落ち込みは大きかったのですが、大企業の回復につれて順調な回復基調で、自動車、鉄鋼、非鉄、機械、電機などが順調です。

 中堅、中小の非製造業では、卸売り、運輸・郵便、対事業所サービス、対個人サービスなど、今後の悪化を予想するところがあり、競争激化予測でしょうか、落ち込みは少なかったが回復がなかなか見通せない所があるようです。
 注目の宿泊・飲食サービスについては、12月にはマイナス50%程度に回復するのですが、先行き悪化を見通している企業が多いようで、コロナ禍に対したは、かなり慎重に長引くことを予想しているようにも感じられます。

マスコミではGoTo関連が賑やかな話題ですが、日本経済としては、中国経済の回復と製造業基幹産業の関係などの行方、アメリカの政権交代、ヨーロッパのコロナ問題などプラス、マイナスの影響が交錯している中で、中国経済の回復が明るい材料なことは明らかでしょう。

 総じてアジアの回復が早いのではないかと思われますが、結局コロナを早く制圧したところが経済の回復を実現しているという事が見えて来ているのではないでしょうか。
 ところで、日本の政権は何をしようとしているのでしょうか。