予感に
何かが生まれそうな予感に優しく満たされながら、僕は、瞬間また瞬間を軽やかに跨いでゆく。
電柵に鳥たちも立ち止まり、風景は穏やかな眼差しで僕を包む。
何かに出逢えそうな兆しは、確かに天上の蒼の一隅に潜んで、静かにそのTOKIを待っているようだ。
それだから、僕はジャンパーを脱いで腰に巻き、手袋を脱いで素手になり、頭に被ったニット帽を丸めてpocketに押込み、左手にmemo帳を右手に四色ball penを握り、ほんの些細な気流の変化も、ほんの微細な振動も見逃さぬように歩く。
太陽は白い円球になって、淡いグレーで統一された東の山並みの上に在る。
其れが遣って来るまで、僕は5000歩40分の約束を反故にし、其処からは無設定のTOKIの間に間を漂泊するのだ。
其れは必ず遣って来る!!
”恙なき一日でありますように・・”と、何時もの場所で六地蔵に手を合わせると、もはや一時間が経過したみたいだ。腰に取り付けた歩数計はナニナニ”7272”を記録したが、まだ”お告げ”はない。
僕はLOGのテーブルに腰かけて暫く休息をとる。
何事にも、そう!ゆとりは必須なのだ。
気が付けば、セーターに押し付けて来る風はまだ冬の牙を隠して鋭く冷ややかで、有無を言わせず直接肌まで手を伸ばす。已む無く腰に括り付けたジャンパーを解いて再び羽織る。
有無・・、まだ降ってこない。まだ過らぬ。まだ湧いて来ない。まだ掠めぬ。
計器の目盛りは既に”9669”を指し示し一万の大台も目前になったが、まだ何も訪れないのだ。
終着点が近づいてきた。此のmamaで行けば七キロを越えて流石に疲労感が鮮明になる。是非もなし!!最後まで待っても来なかったという事は、今日は駄目だったという事。諦めるしかないようだ。
よく起こる現象なのだ。
何しろ、何一つの”契り”もない、唯、ひたすら待つだけの、あの日あの時の片思いにも似た、一方的な思い込みのようなものだから僕の・・。
03/10 06:50 まんぼ