挽歌.Ⅶ-終章「手紙」-
「前略 お知らせありがとうございました。僕はただ唯淋しいです。あの日から胸の中で広がり続ける虚しさを食い止める術を持たないのです。僕は唯唯、胸に空いた空洞の大きさに翻弄され、唯ただ虚空に師の声や言葉や顔を探し求める日々を送っています。僕は唯ただ、そんな風に侘しくて切ない日々を数えながら、改めて現世で師と巡り会った幸せもしみじみと噛み締めている毎日です。これからも決して消え去ることの無い精神の拠り所として、気付けば何時でもそこに居て下さる人として胸に抱きながら、僕の残生もanataと共に・・」
百回を優に超えるほどに書き慣れ、最早自身の住所のように諳んじてしまった師のいた場所へと手紙を送り出す。けれど封筒の宛名にはアノ人の名じゃない初めて書く名を書いて・・。
暫くの間は、其れがどれくらいの間になるのかは想像すらできないが、否、もしかして自身のイノチが尽きるtokiまで師の返書を待ちそうな気がする。
角張って几帳面で律儀で、如何にも物理教師然とした、漢字の多い、葉書の裏と表にまでびっしりと文字で埋められて届く葉書。鉛筆で引かれた短い行間に詰まった師の誉め言葉の数々。
ときどき虫眼鏡で覗いていた、何度も何度も読み返すに足る一番のお気に入りだった師からの便りを、僕は気長に待つことになる。
まるで僕が習得した待つ術の集大成のような、期限なしの歳月を。絶えず移ろう現世を移動する身の遙かなる時間を・・。師よ、これにて一先ずの”お別れ”を。
皐月中半 06:20 万甫