現在、新書のベストセラーになっているエマニュアル・トッドの新刊本。
読んでみました。
シルバーデモクラシー、老人民主主義を想定していたのですが、著者の指摘しているのは、少子高齢化、人口減少が日本の最大の危機であるということを指摘します。
老人支配国家 日本の危機
エマニュアル・トッド著 文春新書 850円+税
著者は1951年生まれのフランス人。
歴史人口学者であり家族人類学者。
ソ連崩壊やトランプ当選を予測したことで有名となりました。
目次
Ⅰ 老人支配と日本の危機
Ⅱ アングロサクソンのダイナミクス
Ⅲ ドイツ帝国と化したEU
Ⅳ 家族という日本の病
視点や視座を変えるということは、なかなか難しいものです。
が、フランス人の学者エマニュアル・トッドさんの考え方、切り口は、日本人ではとても思いもつかないエッジの効いたもの。
さすがは、哲学王国フランスです。
アングロサクソンの経験論ではなく、認識論、演繹法的なアプローチを取っています。
フランス風のエスプリもしっかり入れ込んでいます。
コロナで老人の健康を守るために「現役世代」の活動を犠牲にした
同盟は不可欠でも「米国の危うさ」に注意せよ
それでも米国が世界をリードする
中国の急速な少子化・・・中国が世界の覇権を握ることはありえない
「米国の介入による混乱」が中東から東アジアへ?
日本は核武装すべきだ
→理由はごもっともですが、広島の街を愛する自分としては複雑な心境です
「直系家族病」としての日本の少子化
「日本人になりたい外国人」を受け入れよ
安全保障より大事なのは「少子化対策」だ
高学歴の左派は「低学歴の労働者」の味方ではない
面白かったのが、9章の「トッドが読むピケティの21世紀の資本」。
同じフランス人の経済学者トマ・ピケティが著した大著をベタ褒め。
格差社会の現状を理解するための200年史を丁寧に解説していきます。
そして、フランスにとってドイツが支配するEUに加盟したことは失敗だった、ユーロはフランの敵だと喝破します。
このあたりは、平和ボケの日本に住んでいるとなかなか理解することが出来ません。
2021に新書大賞を受賞した斎藤幸平さんの「人新世の資本論」とともに、年末年始にゆったりと読むと良いと思います。
「老人支配国家 日本の危機」・・・面白い一冊でした。