金融庁の「老後は2000万円必要」という発表は国内に大きな混乱をもたらしました。
(そんなことはみんなアタマの中で薄々とは分かっているのに・・・)
「定年後」がベストセラーになった楠木新さんの新刊が出ました。
定年後のお金 貯めるだけの人、上手に使って楽しめる人
楠木新著 中公新書 840円+税
多くの定年本が、ファイナンスの話が中心なのですが、同書で著者は言います。
お金は単なる交換価値にしかすぎない
日本人は死ぬ間際が一番お金を持っている民族と言われています。
やりたいこともやらず、好きなことも我慢して、お金を貯め込んでいくというライフスタイル・・・しかも、株式や投資信託などではなく、郵貯、銀行預金でシコシコ貯め込んでいきます。
でも、ホントに、それでいいの?
著者は問いかけます。
お金を有効に使って、人生を楽しもう・・・ただし、収支管理をしっかりとして・・・
というのが同書の趣旨ということになると思います。
目次
第1章 老後不安の正体 原因はお金ではない
第2章 財産増減一括表 まず自分の財産を知る
第3章 固定費を見直す 使わなければ金は貯まる
第4章 老後不安と投資を切り離せ 投資とはそれほど重要ではない
第5章 老後資金は収支で管理 資産寿命をどう延ばすか
第6章 お金を有効に使う 人間関係に投じる
著者は、老後不安の正体は、お金の問題ではなくて、自分の中にある未来に対する不安であるのではないか、と分析しています。
この前提では、多少貯金を増やしたところで不安はなくならないということが出来ます。
であれば、人生をもっと楽しもう!と著者は言います。
小職の友人知人も、定年後にバイク免許を取ってハーレーに乗り始めたり、ずっと念願だったヨーロッパツアーに出かけたり、バイオリンを買って音楽教室に通いはじめたり・・・みんなそれぞれ幸せそうにしています。
彼らを見ていると、「お楽しみは、これからだ」という情熱が伝わってきます。
楠木新さんの言う「黄金の15年間(健康寿命と言われる60歳~75歳)」を思いっきりエンジョイしています。
その前に、自分の財産をしっかり把握すること、そのために、財産増減一括表を作って分析したり、固定費を見直したり、投資とは距離をおいたりすることを薦めています。
財産増減一括表は、個人版の貸借対照表、BSです。
資産、負債、純資産を「見える化」しようという取り組み・・・なかなか良いアイデアだと思います。
キャッシュだって、有価証券だって、ゴールドだって、不動産だって、あの世に持っていくことは出来ません。
立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明さんも言われています。
(死ぬ間際に・・・)「悔いなし、貯金(遺産)なし」
「お金は使わなければ、ただの紙切れ」
「人・本・旅」(に投資して、人生を楽しむ)
終活・・・もっともっと楽しまないと損だなあと強く感じた楠木新さんの新刊でした。
お楽しみは、これからだ!