コロナが格差社会に拍車をかけているように思えてきました。
こども食堂、炊き出し・・・一見豊かに見えるこの国に、様々な矛盾が垣間見えはじめました。
今までも社会課題だったことをコロナがあぶり出した、加速化したと言えると思います。
もはや「格差」ではなく、「階級」
固定化し、次世代へ
「継承」される負の連鎖
900万人を超える新しいアンダークラスが誕生。
日本社会未曾有の危機。
帯に、何ともショッキングなコピーが並ぶ講談社現代新書の一冊。
1980年前後から始まった「格差拡大」というキーワード。
「一億総中流」という言葉が過去のものになりつつあります・・・。
さらに、「格差社会」という言葉が、2006年以降拡散し、今では日常的に使われています。
新・日本の階級社会
橋本健二著 講談社現代新書 900円+税
著者は、早稲田大学人間科学学術院教授。社会学を専門としています。
著書には、「階級社会」、「格差の戦後史」、「階級都市」など。
格差、階級を研究している学者です。
現代の日本社会には、5つの階級構造で構成されていると指摘します。
資本家階級・・・経営者、役員
新中間階級・・・被雇用の管理職、専門職、上級事務職
旧中間階級・・・自営業者、家族従事者、農業
労働者階級・・・被雇用の単純事務職、販売職、サービス職、その他マニュアル労働者
アンダークラス(非正規労働者)・・・パート、アルバイト、派遣社員
資本家階級・・・254万人 4.1%
新中間階級・・・1285万人 20.6%
旧中間階級・・・806万人 12.9%
労働者階級・・・3905万人 62.5%
アンダークラス(非正規労働者)・・・928万人 14.9%
同書では、政府の統計、SSM調査、首都圏調査データを駆使しながら、論点を浮き彫りにしていきます。
ちょっと修士論文を読むような感じでストーリーが展開されます。
目次
第1章 分解した「中流」
第2章 現代日本の階級構造
第3章 アンダークラスと新しい階級社会
第4章 階級は固定化していくか
第5章 女たちの階級社会
第6章 格差をめぐる対立の構造
第7章 より平等な社会を
最後に、格差、いや階級差を縮小していくために、著者は次の8つの切り口を提示します。
1.賃金格差の縮小
・均等待遇の実現
・最低賃金の引上げ
・労働時間の短縮とワークシェアリング
2.所得の再分配
・累進課税の強化
・資産税の導入
・生活保護制度の実効性の確保
・ベーシックインカム
3.所得格差を生む原因の解消
・相続税率の引き上げ
・教育機会の平等の確保
豊かな人はより豊かに、貧しい人はより貧しく・・・
著者は、日本型の階級社会に警鐘を鳴らします。
ひとり親世帯の半数(50.8%)が貧困層の社会。
男性の3割が経済的理由から結婚できない社会。
中間層は「上昇」できず、子どもは下の階級に転落する社会
もはや「自己責任」論では済まされない状況になっていると指摘します。
著者は、無階級社会ではなく、非階級社会を目指す・・・そのためには、リベラル派の結集が必要であると論をまとめます。
「自分らしくありたい」を一義とするリベラリスト・・・作家の橘玲さんは、逆に、そのリベラルな考え方こそが格差社会を作ったのだと指摘しています。
そして、インテリの多いリベラリストは、貧乏な人のことなど真剣に考えていないとします。
う~ん、悩ましいところです。
正解のない世界・・・もっともっとソーシャルな視点、視座を持たなければならないと思います。