若き日に買った池波正太郎さんの著作。
著作というよりは、語り下ろし・・・九州の由布院で大いに語られた池上語録を一冊の本にまとめたものです。
池波さんの時代もの小説は読んだことはありません・・・残念ながら。
男の作法
池波正太郎著 新潮文庫 350円+税
解説を書かれているのが、常盤新平さん。
「男の作法を、私はもっと若いころに読みたかったと思う。学生のころ、あるいは就職してまもないころに、読んでおきたかった。」
「繰り返すれども、私はこの本を20代のころに読んでおきたかった。おそくとも30代に読みたかった。若いころに読んでおけば、それだけ私の生活が豊かになったはずである。」と書かれています。
幸いなことに、この書を読んだが20歳代後半。
神田神保町の書店で、たまたま見つけました・・・実に幸せな男です。
ただ、分かっていても出来ないことが多々あります。
池波先生が採点とれたら、「キミは、30点!」と言われそうです(笑)。
刺身はワサビを少しとって刺身に乗せて食べる(醤油に混ぜない)、ホテルのBARで飲む、気の合うバーテンダーと仲良くする、死を意識して生きる(ハイデガーの実存主義ですね)、万年筆はサムライの刀であるから分不相応の高いものを使え(高い時計はダメ)、チップで感謝の意を示せ、お土産、つけとどけは有効、結婚相手の条件・・・ずっと考え続けてきました。
とくかく、男を磨け!というのが池波先生の提言です。
ダイバーシティ、ジェンダー、インクルージョンの時代、「男」というキーワードだけで怒られちゃいそうですが・・・。
でも、オスのミッションというのはあるわけで・・・。
「男のみがき砂として役立たないものはない・・・」
「自分は死ぬところに向かって生きているんだ・・・」
これが、池波先生の遺言だと思います。
同書は、男の衣食住全般について語られています。
主なものを紹介させていただきます・・・食べ物系がほとんどですが・・・笑。
鮨屋に行ったときはシャリなんて言わないで普通に「ゴハン」と言えばいいんですよ。
そばを食べる時に、食べにくかったら、まず真ん中から取っていけばいい。そうすれば、うまくどんどん取れるんだよ。
てんぷら屋に行くときは腹をすかして行って、親の敵にでも会ったように揚げるそばから、かぶりつくようにして食べなきゃ。
たまにはうんといい肉でぜいたくなことをやってみないと、本当のすきやきのおいしさとか、肉のうま味というのが味わえない。
コップの1/3くらい注いで飲んじゃ入れ、飲んじゃ入れして飲むのが、ビールの本当のうまい飲み方なんですよ。
池波先生は、江戸っ子ながら、それを鼻にかけません。
江戸っ子だ、浪速っ子だというのは、その周辺の出身者でインチキだから無視していいと喝破します(笑)。
同書では、和服、帯からネクタイ、スーツ、靴まで、男を磨くためのファッションコーディネートまで解説されています。
昭和の男のダンディズム・・・池波先生の教えは、実に深いです。
これからも、決してあきらめずに、「男」を磨いていきます!