「会社一神教」から脱して、人生を複線化するために・・・
疲れたら立ち止まる。そして、私を生き直す・・・
成果主義と新自由主義が産業界を中心に社会全体に蔓延、浸透化・・・。
その中で、戦後、日本人は、共同社会を捨て、宗教も忘れ、すべては自己責任・・・。
「逃げ場」のない社会になりつつあります。
そういえば、最近、書店の平積みで奇妙なキーワードが目立つようになってきました。
「逃げる」「賢くやめる」「逃げ場」「レジリエンス」・・・
ちょっとネガティブな言葉ですが、ネガティブととらえる自分自身が既に成果主義と新自由主義に汚染(!?)されていると言ってもいいかもしれません(笑)。
改めて考えてみたのですが、「逃げ場」というのは、本当に少ないように思います。
わたしの場合、まずは、書斎。
いつもの焼鳥屋のカウンター。
定番席のあるホテルのBAR・・・こんなところでしょうか。
人生の逃げ場 会社だけの生活に行き詰っている人へ
上田紀行著 朝日新書 760円+税
著者の上田さんは、東京工大リベラルアーツセンター教授。
スリランカでのフィールドワーク、「癒し」という言葉を作った文化人類学者です。
理工系の大学でリベラルアーツを専門とする部署があるのも素晴らしいと思います。
池上彰さんもここの客員をされています。
目次
第1章 私たちはなぜこんなに生きにくいのか
第2章 「できる人」より「魅力的な人」になる
第3章 勇気を持って休む。すると見えてくることがある
第4章 過去の記憶が、自分を助けてくれることがある
第5章 子供が私と社会をつなげる
第6章 共同体のしがらみをあえて引き受ける
第7章 絶対肯定できるものを見つけると、人の心は安定する
第8章 人生最後の20年を価値あるものにする
終章 私たちの人生を、誰のものでもない私自身のものにするために
同書の中で、著者は強調します。
2週間以上の休みを、勇気を出して取得する・・・まずは管理職から・・・
心と身体が発している警告サインに素直になる
転地療養のススメ
若者は早めに結婚して、家庭という別の線を持とう
お節介焼きになることを恐れない
均質性が高い街ではなく、多様な人が住んでいる街を選ぶ
60歳を過ぎたら、次の世代の人のために生きる
人生最後の大仕事は、自分が死にゆく姿を子どもや孫に見せること
どう生きたいのか、どう死にたいのかを普段から家族と話し合う・・・
著者自身、自分自身のネガティブな経験を同書の中で吐露しながら、素直な気持ちで回顧します。
仕事は順風満帆・・・でも、悩みは山積・スランプ、複雑な家庭環境(母子家庭かつ母との葛藤)、離婚、子供さんの病気、母との別れ・・・はたから見ると、かなり壮絶な著者の人生。
でも、著者は、それぞれの場面で起こる出来事を客観的に、第3者的に見つめ、冷静に分析している・・・さすが文化人類学者。
すごいことだと思います。
今、壁にぶち当たっている人、悩み前に進めなくなっている人、モチベーションが下がりつつあるミドル、シニア世代の方々に、ぜひ目を通していただきたい一冊です。
学者の書いた文章ですが、同書は口語体的な文章運びで進みます・・・1時間程度で、新たな視点を獲得できます。