人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ヤルヴィ指揮ドイツカンマー・フィルでブラームス「ピアノ協奏曲第1番」「交響曲第1番」を聴く

2014年12月11日 07時00分44秒 | 日記

11日(木)。わが家に来てから75日目を迎えたなかなか友達が出来ないモコタロです 

 

          

            ぼく この子とは赤の他人だよ 白い顔してるけど・・・

 

  閑話休題  

 

昨夕、初台の東京オペラシティコンサートホールでパーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマー・フィルのコンサートを聴きました プログラムは①ブラームス「ピアノ協奏曲第1番ニ短調」、②同「交響曲第1番ハ短調」。①のソリストはラルス・フォークトです

 

          

 

ヤルヴィは2004年からドイツ・カンマー・フィルの芸術監督を務めていますが、ほかにもパリ管弦楽団の音楽監督も務め、過去に音楽監督だったフランクフルト放送交響楽団とシンシナティ交響楽団ではそれぞれ桂冠指揮者、桂冠音楽監督を務めています また、2015年からはNHK交響楽団の首席指揮者に就任する予定です。まさに世界のオーケストラから引っ張りだこの指揮者です 一方、ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団はドイツ・ブレーメンに本拠を置く世界でも指折りの室内オーケストラです。ここ数年、ヤルヴィの指揮のもとベートーヴェンやシューマンの交響曲の演奏で高い評価を受けてきました 

 

          

 

ロビーの掲示にある通り、NHKが収録するため会場のセンター後方、ステージ上の左サイド後方、中央のグランドピアノの鍵盤に向けて、それぞれテレビカメラがスタンバイしています

自席は1階18列3番、会場は3階席まで文字通り満席です。ざっと見る限り男性が圧倒的に多いようです。私の前後左右だけでも全員が男性です この日のコンサートは定期コンサートではないので、聴衆はわざわざ”選んで”会場に来ているわけで、男性の方が女性よりブラームスを好む割合が高いということでしょう。これはブルックナーにも共通する傾向です

拍手の中オケの面々が登場します。全員揃ったところで会場に向けて全員で一礼します。海外オケでは珍しい光景です オケは左奥にコントラバス、前に第1ヴァイオリン、右にチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります。ざっと見渡したところ総勢約60人といった編成です。”カンマー・オーケストラ”の名の通り”室内楽”オケです

ヤルヴィとフォークトが登場し1曲目のピアノ協奏曲第1番ニ短調の演奏に入ります。曲の冒頭、思いのたけをぶつけるようなオケの総奏で開始されます テンポはかなりゆっくりです。この演奏を聴いていて、グレン・グールドがバーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルをバックに演奏した超スローテンポの演奏を思い出しました あれほどではないにしても、かなり遅いテンポです。ヤルヴィとフォークトのコンビは、一音一音を噛みしめるように音楽を進めます 第2楽章は、愛するクララ・シューマンへの思いが込められたアダージョです。第3楽章へは間を置かずに突入します。フォークトはまさに男のロマンを奏でます。テンポも上がっています

大きな拍手と、会場のそこかしこから掛けられるブラボーに、フォークトは日本語で「アリガトゴザイマシタ」と言って、ブラームスのワルツ作品39-15を弾きました

 

          

 

休憩後は交響曲第1番ハ短調です。ハ短調はベートーヴェンの第5番”運命”と同じ調性です。前半は男性だったコンマスが後半は女性に代わりました。プログラムに掲載された団員名簿によるとサラ・クリスチャンという女性です。ロングスカートなんか履きません。活動的なパンツルックです

ヤルヴィが登場します。にこやかに会場に向かって一礼したかと思ったら、振り向きざまにタクトを振り下ろし、いきなり序奏部の3連音の連続演奏に入ります 驚いたのはそのスピードです。前半に演奏したピアノ協奏曲第1番がゆったりしたテンポだったので、その路線で行くだろうと予想していたのが、見事に覆されました これほど速い第1番の冒頭を聴いたのは生まれて初めてです。しかし、序奏部が終わるとテンポが落ち着き、大地に根を下ろしたようなどっしりした演奏が続きます

ヤルヴィの指揮の特徴は、かなりテンポを揺らすことと、メリハリをはっきりとつけて演奏することです プログラムに寄せた音楽評論家の舩木篤也氏の解説によると、ヤルヴィは「ブラームスの音楽はとても論理的で、完璧に整えられているわけですが、論理だけでは交響曲は作れませんし、演奏もよくはならない。演奏者はそこに一つのストーリーを見つけ、それを語る方法を見いださねばなりません」と語ったとのことです

ヤルヴィの指揮でブラームスを聴いていると、まさに彼自身が語ったように、まるで「ストーリーを語っている」ように感じます それも大袈裟に騒ぎ立てるのとは対極にある語り口で、流れが自然です。例えば、最後の第4楽章でアルペンホルンがクララへの愛を高らかに歌い上げる有名なメロディーの部分、あるいはその直後に弦楽器によって奏でられるベートーヴェンの第9の”歓喜の歌”になぞられる有名なメロディーの部分では、「さあ、これからがこの曲の聴きどころだからよく耳を傾けて聴いてよ」と肩に力を入れて演奏するのでなく、ごく自然体で音楽を奏でます。それが、返って静かな感動を呼び起こします

第4楽章フィナーレは、とても60人規模のオケとは思えない圧倒的な迫力で曲を閉じました。会場割れんばかりの拍手とブラボーがヤルヴィとカンマー・フィルの面々に押し寄せます 

何度もステージに呼び戻されたヤルヴィは、ブラームスのハンガリー舞曲の中でもアンコール曲としてはあまり演奏されない第10番を、自由自在のテンポで演奏し、拍手喝さいを浴びました それでも鳴り止まない拍手に、今度は定番のハンガリー舞曲第1番を、唖然とするようなノリノリの演奏で聴衆の心を鷲づかみにしました この日の演奏は間違いなく今年のマイ・ベスト10に入るでしょう

当日の演奏は来年2月15日(日)午後9時からNHK-Eテレで放映されるとのこと。前述の通り、ヤルヴィは来年N響の首席指揮者に就任するわけですが、在京オケの目玉になりそうです

 

          

     

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