人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ピアノ独奏によるベートーヴェンの「第9」を聴く~若林顕ピアノ・リサイタル

2014年12月22日 07時00分48秒 | 日記

22日(月)。わが家に来てから86日目を迎えますます肥えるモコタロです 

 

          

              ドアップで驚いた? でかい口きくなと言われそうだな

 

  閑話休題  

 

12月は、ガッカリするほどコンサートがありません。正確に言えば「聴くべきコンサートがない」と言うべきでしょうか。つまり、在京オケは12月に入ると毎日のようにベートーヴェンの「第9」を集中的に演奏して荒稼ぎをするので、言わば「第9しかない」のです。そんな中、例年オーケストラで聴いている第9を今年はピアノ1台による演奏で聴いてみようと思い立ちました。

という訳で昨日、晴海の第一生命ホールで「若林顕 ピアノで聴く『第9』」コンサートを聴きました プログラムは①リスト「コンソレーション第3番」、②同「愛の夢 第3番」、③同「ハンガリー狂詩曲第2番」、④ベートーヴェン/リスト「交響曲第9番」(ピアノ独奏版)です

 

 

          

 

若林顕は東京藝大卒業後、ザルツブルク・モーツアルテウムやベルリン藝術大学で学び、85年ブゾーニ国際コンクール2位、87年エリーザベト王妃国際コンクール第2位に入賞、その後、国内外のオーケストラと共演を重ねています

自席は1階19列13番、センターブロック左通路側、最後列から2番目の席です。会場は8割方埋まっている感じです 開演時間直前に、ロビーの片隅で若林顕氏の伴侶でヴァイオリニストの鈴木理恵子さんらしき人を見かけました

この日の演奏会でプログラムの主役となるフランツ・リストは1811年に生まれ1886年に死去しました。ピアノ演奏の歴史の中でリストの存在はダントツの位置にいます 史上初めてピアノのソロ・リサイタルを開き、ピアノの表現可能性を最大限に向上させました 私は知らなかったのですが、プログラムの解説によると、リストは「敬愛するベートーヴェン記念碑の設置基金を募るため、また、ドナウ川の氾濫で被災した人々の救済基金を募るために、8年間に1,000回ものコンサートツアーを遂行した」そうです 私は、リストは自らの技巧を世間に見せつけるために数々の超絶技巧曲を作曲し、自ら演奏したのだと思っていました。そのイメージが一変しました

開演時間の2時になったのに会場が暗転する気配がありません。5分経過したところで、遅刻者が約10名くらいドドッと入場してきました 忙しいサラリーマンが午後7時の開演に滑り込むのとはシチュエーションが違います。日曜の午後2時です。どうして遅刻するのか理解できません 5分とはいえ、開演時間に間に合うように来場した”真面目な”聴衆が待たされるのはおかしな話です。開演時間になったら会場を閉鎖すべきです 因みに私の場合は、開演30分前には会場に到着し、ホワイエでコーヒーを飲みながらプログラムを読み、開演5分前に指定席に着きます。なぜなら、いつも通路側席を取っているので、同じ列の奥の人がすべて入ってから着席するためです。あまり早く着席すると、後から来た人が中に入るとき大抵不愉快な思いをするからです。2人に1人は「前を失礼します」のひと言が言えません

1曲目の「コンソレーション第3番」は優しい曲です。コンソレーションとは”慰め”という意味ですが、まさにそのような曲想です 気分よく聴いて、曲が終わったと思った瞬間、まだ拍手が起こらないうちに、いきなり後ろの扉が開かれ、アテンダントの案内で高齢男性が入ってきて左サイドの最後部席に着き、ドタンという音とともに腰かけました 何という無神経な案内と”お客”なのか、演奏者に対しても他の聴衆に対しても失礼な態度です この”お客”は休憩後に、アテンダントから「お客様の本来のお席までご案内します」と言われ、「席が決まっているんですか?」と訊き返していました。呆れた話です。遅刻してきたので、取りあえず最後列に案内されたのだから、休憩後は自分で自分の指定席に行くべきなのに、それさえも理解していないのです 案内された席が相当前の良い席だったので、誰かから招待されたのかも知れません。こういう人はもう来なくていいです 周りの聴衆はコンソレーションが欲しいと思ったに違いありません

2曲目の「愛の夢」はアンコール・ピースとしてよく演奏されるロマンティックな曲です。リストと言えば”超絶技巧”ですが、こういう曲もいいですね

3曲目は「ハンガリー狂詩曲第2番」です。普段オーケストラで聴き慣れている曲ですが、ピアノ独奏で聴くのも感慨深いものがあります。若林顕のピアノは力強く、フルオーケストラにも負けない迫力があります

 

          

 

休憩後はいよいよベートーヴェンの「交響曲第9番ニ短調」のリスト編曲版です。考えてみれば物の順序が逆ではないかと思います。というのは、ベートーヴェンは交響曲を作曲するに当たって、まずピアノでメロディーを弾いて、後から肉付けしていったはず もちろん、第9交響曲を作曲している頃はほとんど耳が聞こえなかったということはありますが。ところが、リストは、交響曲をピアノ1台で演奏するという、まったく逆のことをやってのけたのです ラヴェルがムソルグスキーのピアノ曲「展覧会の絵」をオーケストレーションしたのと逆のアプローチです

リストは20代の頃からベートーヴェンの交響曲全曲をピアノ1台で演奏することを始めましたが、最後の第9に至っては、さすがに1台では演奏困難と考えたのか、まず2台のピアノ版を手がけ、その後、1台のピアノ演奏版を作曲したようです 第9ピアノ版の完成は54歳の時といいますから30年位の年月をかけて全9曲を手がけたことになります

リストのピアノの師はツェル二ーですが、ツェル二―はベートーヴェンの弟子でした。したがって、リストはベートーヴェンの孫弟子に当たります リストは少年期に1度だけベートーヴェンに会ったことがあるそうです。それからベートーヴェンはリストにとって神のような存在になったのでしょう。その意味で、交響曲のピアノ演奏版はベートーヴェンへのオマージュなのかも知れません

若林顕のピアノは渾身の演奏でした 私が一番懸念していたのは第3楽章「アダージョ」でしたが、弛緩することなく見事に弾きました 第4楽章の”歓喜の歌”の場面では、ピアノ1台から100人の合唱が聴こえてきたように感じました 60分ほどの大曲を若林は終始、緊張感を保ちながら、力強く、また祈るように、最後まで弾き切りました

これで心身ともに疲れ果てているはずなのに、若林は聴衆の熱狂的な拍手とブラボーに応え、バッハの「プレリュード」を静かに演奏し、コンサートを締めくくりました。何というスタミナでしょうか

コメント
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