14日(日)。わが家に来てから78日目を迎えた知恵熱が出たらしいモコタロです
頭が熱いよ~ 知恵熱かな~ んなわけないかぁ
閑話休題
昨夕、サントリーホールで東京交響楽団の第626回定期演奏会を聴きました サントリーホール前のカラヤン広場の噴水はクリスマス・イルミネーションで装飾されています
さて、当日のプログラムは①ワーグナー「ジークフリート牧歌」、②ブルックナー「交響曲第3番ニ短調”ワーグナー”」、指揮は音楽監督ジョナサン・ノットです
この日のプログラムは凝っています。2曲の共通項は『プレゼント』なのです ワーグナーの「ジークフリート牧歌」は、ワーグナーが二人目の妻(リストの娘)の誕生祝として、その翌日の1870年12月25日の朝、この曲を生演奏でプレゼントしたのは有名な話です 一方、ブルックナーの交響曲第3番は、ブルックナーが1873年9月にバイロイトのワーグナーを訪ねた時にワーグナーにこの曲を献呈することを認められたのです いわゆる『第1稿』です。ブルックナーは自分で書いた交響曲を、後で改稿することが多く、この曲も第3稿まであります。今回は第1稿による演奏です
1曲目の「ジークフリート牧歌」は弦楽器を中心に総勢33名ほどの小規模な編成で演奏されます コンマスはグレヴ・ニキティン。この曲はコジマの誕生日と、彼女が初めての男の子(その名もジークフリート)を生んでくれたことへの感謝の気持ちが込められた、穏やかで優しさに満ちた曲です この曲で目を覚ましたコジマの喜びはどれほどだったでしょうか
指揮をとるジョナサン・ノットの後ろ姿を見ていると、壮年期のカラヤンを思い起こしました。本当によく似ているのです
休憩後はいよいよブルックナーの交響曲第3番です。オケは弦も管も大幅に拡大してフル・オーケストラとなっています。弦楽器はノット・シフトである対向配置をとります
この日のためにセルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルによる演奏のCDで”予習”してきましたが、データによると、1888/89バージョンとあるので、第3稿による演奏です
1時間を超える大曲ですが、ノットは暗譜で振ります 第1楽章開始からすぐにトランペットが特徴的なテーマを奏でます この冒頭を聴くとぞくぞくします。いよいよブルックナーが始まるぞ!という期待感が大きく膨らみます ノットは堂々たる、しかし、引き締まったテンポで曲を進めます。ノットの良いところは、フォルテの部分でもがなり立てることがなく、非常に理知的というか、洗練されているところです
”予習”のチェリビダッケの演奏が第3稿だったのに対し、目の前で演奏されているのは第1稿なので、ところどころ明らかに違いが認められます。第3稿に慣れているので、ちょっと違和感さえ感じてしまいます。また、彼の交響曲の特徴である『ゲネラル・パウゼ(総休止)』が頻繁に起こります
第2楽章のアダージョは宗教的と言っても良いかも知れません。ブルックナーの交響曲を聴いていていつも思うのは、極めてオルガン的(ここではパイプオルガンのこと)だということです。この曲も例外ではありません
第3楽章はスケルツォです。ブルックナーの音楽の特徴の一つは「スケルツォ」でしょう。一度聴けば「これはブルックナーの交響曲だ」と当てることが出来るほど、極めて特徴的です
そして、最後の第4楽章のフィナーレを迎えます。弦楽器が波打ち、管楽器が咆哮します。この楽章でも『総休止』が頻繁に出現します。ブルックナーは、長い曲を最後まで聴いてもらいたくて総休止を入れて緊張感を持続しようと考えたのでしょうか
ノットのタクトが上がり、一瞬の”しじま”の後、2階席を中心にブラボーがかかり、会場一杯の拍手が起こりました ノットは何度もステージに呼び戻されましたが、ステージ中央に来ないな、と思っていたら、オケの後方に回り込んでホルン、トロンポーン、トランペットを中心にブラスセクションを立たせ、拍手を求めました。前任のスダーンも人気がありましたが、ノットも負けず劣らず人気があります
聴き終ってつくづく思ったのは、ブルックナーやマーラーの交響曲は、家でちまちま聴く音楽ではない、ということです。生で聴いてはじめて、作曲家の意図が分かってくるのです