人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

アジア・ユース・オーケストラでベートーヴェン「交響曲第9番」を聴く

2015年08月30日 10時37分03秒 | 日記

30日(日)。わが家に来てから324日目を迎え,後ろにいるのが敵か味方か逡巡するモコタロです 

 

          

           後ろにいるのは 白ウサちゃんの関係者かな?それとも・・・

 

  閑話休題  

 

昨夕、東京オペラシティ・コンサートホールでアジア・ユース・オーケストラ(AYO)の東京公演第2夜を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「エグモント」序曲、②ハイドン「チェロ協奏曲第2番ニ長調」、③ベートーヴェン「交響曲第9番ニ短調”合唱付”」です ②のチェロ独奏はスティーヴン・イッサーリス、③の独唱はソプラノ=イー・ソヨン、メゾソプラノ=ジェニー・ホー、テノール=イ・ヨンフン、バリトン=ベンノ・ショルムで、指揮は芸術監督・指揮者のリチャード・パンチャスです

 

          

 

自席は1階25列10番,左ブロック右通路側です.会場は前日よりも多く9割以上埋まっている感じです 前日同様,ステージ上は約100人の若者がそれぞれのチューニングに勤しんでおり,会場アナウンスが良く聴こえません.これはカオスです

この日のコンマスは前日,コンマスの隣にいた女子です.二人で交替したようです.後で判りますがこの女子は台湾出身で,前日の彼女は予想通り中国出身でした AYO芸術監督・指揮者のリチャード・パンチャスがトレード・マークの白のジャケットで登場し,早速1曲目のベートーヴェン「エグモント」序曲の演奏に入ります 彼はタクトを持ちません.楽員とは目と目で合図をします.これをアイ・コンタクトということは,当ブログの読者の方は嫌と言うほど聞かされましたね

 

          

 

前日のバッハ「トッカータとフーガ ニ短調」と同じく,フル・オーケストラのマスの力が発揮され,迫力ある音楽が展開します 冒頭はかなりゆったりしたテンポだったので,このまま行くのかな,と思っていたら次第にテンポ・アップして力強い演奏を展開しました

楽員が大幅に引き上げ,総勢30数名のこじんまりした態勢になります.イッサーリスがチェロを抱えて堂々と入場します パンチャスの合図でハイドン「チェロ協奏曲第2番ニ長調」の演奏に入ります イッサーリスはオケによる序奏の時もチェロ・パートに同調して演奏したり,弓で指揮をしたり,自由自在に振舞っています チェロ独奏の部分に入ると,まるでチェロと一体になっているように弓を操り,ハイドンの明るい音楽を奏でます.演奏するのが楽しくてしかたがない,という表情で自由自在にチェロを弾きこなします

大きな拍手にアンコールに応え,弱音が美しい「鳥の歌」を演奏しました この曲は,チェロの巨匠カザルスが国連本部で演奏して有名になった曲です.イッサーリスは極限の弱音を追求し見事に鳥の歌を弾き切りました

残念だったのは,また拍手のフライングがあったことです イッサーリスの弓が降りないうちに,2階席から静けさを破る大きな拍手が起きたのです イッサーリスは2階の方を見上げ,「信じられない」という顔付を見せましたが,一旦止んだ拍手がまた再開したので立ち上がって一礼しました 彼にとっても余韻を味わえないアクシデントで残念だったことでしょう.名演に拍手をしたい気持ちは分かりますが,どういう曲が演奏されたのかを認識した上で拍手をするタイミングを図るべきです 曲によっては,せっかくの感動が台無しになります

 

          

 

休憩後は,いよいよベートーヴェンの「交響曲第9番ニ短調”合唱付き”」です.オケの後ろには約100名のコーラスがスタンバイしています よくもあんなに狭いスペースに並んだものだと感心します.フル・オーケストラと合唱団とがステージ一杯に広がる景色を見ると「これはマーラーの”千人の交響曲”でも演奏するのかい」と言いたくなります.さすがにソリスト4人を収容するスペースが取れないようで,2階正面のパイプオルガン下のP席に4つ椅子が並べられました

チェロ・セクションにイッサーリスが加わると,ステージ上の若者たちから歓迎の歓声が上がりました パンチャスの合図で,第1楽章に入ります.冒頭,ホルンがちょっとずれたようですが,何事もなかったかのように演奏は進みます オケ全体を見渡しながら聴いていると,まさにオケの中央・後方に位置するティンパ二の女子が凄く良い演奏をしているのに気が付きます リズム感が良く,メリハリのある音楽を形作っています.管楽器群もそれぞれが上手く,安心して聴けました

第2楽章「スケルツォ」は前進あるのみの素晴らしい演奏でした この楽章が終ったところでソリストの4人が2階正面P席の所定の位置にスタンバイします

第3楽章のアダージョは弦楽器を中心にベートーヴェンの”穏やかな良さ”を発揮しました ヴィオラと第2ヴァイオリンが主旋律を奏でた時,「ベートーヴェンは何と素晴らしい音楽を作ったのだろうか」と,目頭が熱くなりました.演奏が素晴らしかったからこそです

この第3楽章はかつて,(西)ドイツ映画「マリア・ブラウンの結婚」で使われていました マリアが,戦地から帰るはずの夫を駅で待つシーンで流れていました つまり第3楽章の穏やかな音楽は第4楽章の歓喜の前兆であるわけで,マリアは夫が帰るはずの列車(=第4楽章)を駅で待っているという設定です

第3楽章が終わり,間を空けることなく第4楽章に入ります.その瞬間,2階席のソリストたちに緊張感が漂いました この楽章では「歓喜の歌」のメロディーがチェロとコントラバスで奏でられ,ヴィオラ,ヴァイオリンへと受け継がれていきますが,弦楽器群の演奏は美しく素晴らしいものがありました

4人のソリストも声が良く通り,素晴らしい歌声を聴かせてくれ,コーラスも熱唱でした 総力戦でのフィナーレの畳み掛けは圧倒的でした

終演後,パンチャスがマイクを持って英語でAYOが今年25周年を迎えたことを説明し,例年通り103名のメンバーを国別に紹介していきました 国名を挙げられたメンバーはその場で立ちあがり,ステージ上の仲間や聴衆から大きな拍手を受けました 次いでパンチャスは,メンバーは6週間の中で,最初の3週間はプロのレッスンを受け,次の3週間は上海,北京,天津,香港,台北,韓国,大阪,そして東京へと演奏旅行を続けてきて,この日を最後としてオケは解散し,メンバーはそれぞれ別の道を歩むことを説明しました 

そして,アンコールとしてエルガーの「エグニマ変奏曲」から「二ムロッド」を演奏しました 作品自体が感動的な曲なので,演奏側も聴衆側も否が応でも感傷的になります 演奏後,そこかしこでスタンディング・オベーションも見られ,惜しみない拍手を送る聴衆を前に,103名の若者たちの中には涙を隠せない者が少なくありませんでした これをもって彼らの6週間の”夏の研修合宿”は終わりを告げました

AYOの皆さん,素晴らしい演奏をありがとう 世界の各地で紛争が絶えない現状の中で,皆さんは「音楽に国境はない」ことを演奏で示してくれました またいつかどこかで皆さんの演奏を聴く機会があれば嬉しく思います それぞれの国に帰っても,この6週間の体験を忘れずに,そして日本の聴衆のことも忘れないでください メンバーが入れ替わっても,私は来年も聴きに行きます

 

          

 

コメント (2)
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