14日(月)。また風邪を引いたのかもしれない 喉が少し痛いし咳も出かかる。熱もいつもより若干高い。クリニックに行ってこよう ということでわが家に来てから533日目を迎え、風邪知らずのモコタロです
その黒い物体は何かって? フン 知るものか!
閑話休題
昨日、晴海の第一生命ホールでクァルテット・エクセルシオの「アラウンド・モーツアルト Vol.1 未来への輝き」を聴きました プログラムは①サンマルティーニ「弦楽のためのシンフォニア ト長調」、②モーツアルト「弦楽四重奏曲第6番変ロ長調K159」、③サリエリ「4楽器によるフーガ風スケルツォ」より第2番、第4番、④モーツアルト「弦楽四重奏曲第14番ト長調K387”春”」、⑤同「弦楽五重奏曲第3番ハ長調K.515」です 出演は、約1年間の療養休業明けの西野ゆか(第1ヴァイオリン)、山田百子(第2ヴァイオリン)、吉田有紀子(ヴィオラ)、大友肇(チェロ)、そしてゲスト演奏者の柳瀬省太(⑤の第一ヴィオラ。読響首席)です
「アラウンド・モーツアルト」の趣旨は、「モーツアルトとその周辺」とでも言うべき 彼の同時代の作曲家の曲も併せて紹介することによりモーツアルトの音楽を浮かび上がらせようという試みです
自席は1階5列13番、センターブロック左通路側です。会場は8割方入っているでしょうか 弦楽四重奏団でこれだけの動員をかけられるのは常設クァルテットであるエクセルシオだけでしょう 4人の登場です。女性陣はデザインは異なるものの淡いピンクの衣装で統一しています 西野ゆかは本当に久しぶりです。「おかえりなさい ゆかさん」という気持ちを込めた大きな拍手が起こりました
1曲目は、サンマルティーニの「弦楽のためのシンフォニア ト長調」です サンマルティーニは1770年に14歳のモーツアルトが父レオポルドとともにミラノを訪れたときに、神童の演奏に接し温かく支援したことで知られています 言ってみればモーツアルトのイタリアにおける目標だったかも知れません。この曲は4つの楽章から成りますが、第1楽章「アレグロ・マ・ノン・タント」冒頭の演奏を聴いた時、何と柔らかい音だろうか と思いました。4人の一人一人が柔らかい音なのです。これがエクの魅力かも知れません。ソフトで優雅です 曲はいかにもイタリアの青空を感じさせるような明るい曲です
2曲目はモーツアルト「弦楽四重奏曲第6番変ロ長調K159」です。3つの楽章から成りますが、小曲ながら優雅でモーツアルトらしい歌心に溢れた曲です
3曲目はサリエリの「4楽器によるフーガ風スケルツォ」から第2曲と第4曲です。サリエリは モーツアルトの暗殺を描いた「アマデウス」で有名になったイタリアの宮廷作曲家ですが、今ではモーツアルトを暗殺したのはサリエリではなく、妻コンスタンツェとその母親であることが分かっています(女は怖いですね)。この曲はとても面白い曲ですが、モーツアルトはこういう風には作らないだろうな、と思うような音楽です
次いで、プログラム前半最後の曲、モーツアルト「弦楽四重奏曲第14番ト長調K387」です。この曲から第19番”不協和音”までの6曲は 尊敬する大先輩ハイドンに捧げた いわゆる”ハイドン・セット”と言われる作品群です 第1楽章冒頭から明るく清々しい音楽が展開します その瞬間、ああ生きてて良かったと思います。生きてモーツアルトを聴ける喜び 第3楽章「アンダンテ・カンタービレ」における西野ゆかのヴァイオリン独奏は歌心溢れる素晴らしい演奏でした
すごく良い気持ちで聴いていると、右側後方からイビキが聞こえてきます。イビキの音質から高齢男性であることが想像できます 隣の人は注意しないのだろうか?と不思議に思いました。演奏がフォルテの時はよいのですが、ピアノの時は、確実にイビキが演奏者にも聞こえています これは演奏者に対しても、同じ聴衆に対しても極めて失礼な行為です。隣か後ろの人は本人の足を蹴るなり、肩をゆするなり、首を絞めるなり(よい子はやめてね!)して、イビキを止めさせなければなりません
私には、前から6列目のほぼ 真ん中の席を指定する人が演奏中にイビキをかくということが理解できません 高校生が 苦手な物理の時間に一番後ろの席で机につっぷしてイビキをかいて寝ているのとは訳が違うのです コンサートホールはどんなに小さな音でも大きく響く音響特性を持っていることは室内楽を聴きにくる人は特に十分理解しているのだと思うのですが、いい年した大のオトナが本当に恥ずかしいと思います。さすがに、楽章の間に隣の人が注意したのでしょう、イビキはやっと止みました 誰かが鼻に濡れタオルをかぶせたのでしょうか 当のご本人は さぞ日常生活がご多忙で 週末にはお疲れになりがちな紳士でいらっしゃるのでしょう。周囲の聴衆に成り代わってひと言申し上げます。顔を洗って出直して来い
休憩後はモーツアルト「弦楽五重奏曲第3番ハ長調K515」です。演奏を前にして、第2ヴァイオリンの山田百子とゲストのヴィオラ奏者・柳瀬省太がステージに登場しました。山田さんが柳瀬氏にインタビューする形で話が進められましたが、柳瀬氏とエクセルシオとは同世代で、エクのチェリスト・大友肇氏と柳瀬省太氏は小学5年以来の友人とのことで、昔から「しょうちゃん」「はっちゃん」と呼び合う間柄だそうです。ちっとも知りませんでした また、柳瀬氏は、小5の時にテレビでモーツアルトの生涯をドラマ化した番組(12時間位の長時間)を観て すっかりモーツアルト・ファンになったそうです 実は、私もその番組を観ました。今から35年くらい前の11月3日でした。なぜ覚えているかと言うと、文化の日で休日だったから、そしてある女性と初デートの日だったからです したがって、朝に幼少のモーツアルトのドラマを観て、デートから帰ってきて死ぬ間際のモーツアルトのドラマを観たことになります 途中が抜けてしまったので、後でレーザー・ディスクの何枚組かのセットを買って見直しましたが、1度観ただけで、ディスク・プレーヤーが壊れてしまったのでディスクは売り払いました
柳瀬氏が加わったことにより、5人は左から西野、山田、大友、吉田、柳瀬という態勢をとります。演奏に入ろうとしたとき、山田さんが西野さんや大友氏に何やら話しかけています。どういう内容なのかこちらには聞こえません。そのうち何事もなかったように第1楽章の演奏に入りました
この曲は4つの楽章から成りますが、第1楽章「アレグロ」の冒頭部分、和音の刻みが独特ですね そして、第2楽章以降に移っていくのですが、何か変です 第3楽章まで聴いてきて、やっぱりおかしいと思いました。あっという間に第4楽章に来ています 一瞬、「第2楽章を飛ばして演奏したのでは、でも まさかそんなことはあるまいな」と思いながら最後のフィナーレを迎えました
これは演奏後、ホール入口に掲示されたお知らせを見て、「何か変だ」という理由が分かりました。それによると、「演奏者の都合によりモーツアルト『弦楽五重奏曲第3番』は第1楽章、第3楽章、第2楽章、第4楽章の順に演奏しました」とありました これで、演奏前に山田さんが西野さんや大友氏に話しかけた理由が分かりました。山田さんは「演奏する前に演奏順を一部変えることをアナウンスすべきではないか」と問いかけたのです。たぶん、他の2人は「その必要はない」と答えたのでしょう エクのコンサートに来る人たちはモーツアルトの弦楽四重奏曲や弦楽五重奏曲などについては良く知っている人たちばかりだから、演奏を聴けば順番を変えたんだなと分かるはずだ、と考えたのかもしれません。しかし、これはどうなんでしょう。演奏する楽章の順番を変えるには相当の理由があるはず 通常であれば、このような行為は作曲者の意図に反するわけですから許されないと思います。それをあえて順番を変えて演奏するのですから、演奏者の明確な意図があるはず。事前に説明すべきだったと思います。あるいはプログラムに「お知らせ」を1枚挟み込んでおくべきだったと思います
そうは言うものの、やっぱりエクせエルシオのモーツアルトは素晴らしい この演奏では特に、3番目に演奏された第2楽章「アンダンテ」における西野ゆかとヴィオラの柳瀬省太とのダブルコンチェルト的な掛け合いが実に素晴らしかったと思います
エクはベートーヴェンも素晴らしい 今度、6月にサントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデンで演奏するベートーヴェン「弦楽四重奏曲全曲演奏会」がとても楽しみです。もちろん全部聴きます