人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

METライブビューイング,ドヴォルザーク「ルサルカ」を観る~魅惑的なオポライスのルサルカ / 遠藤周作著「十頁だけ読んでごらんなさい.十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい」を読む

2017年03月22日 08時14分53秒 | 日記

22日(水).わが家に来てから今日で904日目を迎え,政府が 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

          ぼくがご主人さまに噛みついたりすると適用されるの? それは「狂暴罪」だって?

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「鶏のトマト煮」と「生野菜とアボガドのサラダ」と「野菜とベーコンのスープ」を作りました 「鶏の~」は初挑戦ですが,美味くできました

 

       

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,新宿ピカデリーでMETライブビューイング,ドヴォルザーク「ルサルカ」を観ました これは今年2月25日にニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演された公演のライブ録画映像です

出演はルサルカ=クリスティーヌ・オポライス(ソプラノ),イェジババ=ジェイミー・バートン(メゾソプラノ),水の精ヴォドニク=エリック・オーウェンズ(バスバリトン),王子=ブランドン・ジョヴァノヴィッチ(テノール),外国の王女=カタリーナ・ダライマン(ソプラノ),指揮=イギリス出身のマーク・エルダー,演出=アメリカ生まれのメアリー・ジマーマンです

 

       

 

「ルサルカ」はアンデルセンの「人魚姫」などに代表される「水の精」です

物語は,水の精ルサルカが人間の王子に恋をして,魔法使いのイェジババに人間にして欲しいと頼むが,「人間の姿になる代りに愛のあかしを得るまでは口がきけなくなり,王子に裏切られた時は破滅する」と忠告される それでもルサルカは人間になる道を選ぶ.森の奧で王子はルサルカを見つけて城へ連れ帰り,結婚式を挙げる.しかし,王子は口がきけないルサルカに不満を抱き,外国の王女に心を移す 絶望したルサルカはイェジババの元へ戻り相談するが,「王子の命を奪えば呪いが消える」と短剣を渡す.しかし,ルサルカはそれを拒否する.王子と再会したルサルカは口づけを求める王子に「私と口づけすれば命を落とす」と忠告するが,王子はそれを拒む.二人は口づけし湖に消える

 

       

 

この公演はルサルカを歌ったクリスティーヌ・オポライスに尽きます 美しい「水の精」そのものです 魅惑的な美声と 役柄に成り切った演技力,さらに理想的なプロポーションと美貌を兼ね備えた類まれなソプラノです 前回のMETライブでルサルカを演じたルネ・フレミングに対抗できるのはオポライスしかいません

第1幕で,大きな月が昇るシーンを背景にして ルサルカが歌う「月に寄せる歌」は,ドヴォルザークの魅力を凝縮した名アリアですが,オポライスは惚れ惚れするソプラノで抒情的に歌い上げました ルサルカは第2幕では王子を相手に口がきけないので,20分以上も舞台上にいながらセリフもなければ歌も歌わないという状態にありますが,オポライスによる ルサルカの不安な心理を反映した”背中で見せる演技”が光りました 

イェジババを歌ったジェイミー・バートンは,先日のMETライブ「ナブッコ」でフェネーナを歌ったメゾソプラノですが,今回の魔法使いの役柄の方が伸び伸びとした演技で,彼女にピッタリだと思いました  歌が抜群に上手いだけでなく,顔と身体全体を使ったオーバーアクション気味な演技力は特筆に値します

水の精ヴォドニクを歌ったエリック・オーウェンズはアメリカ生まれの黒人歌手ですが,深みのあるバスバリトンで説得力がありました

今回の演出はアメリカ生まれの女性演出家メアリー・ジマーマンによる新制作ですが,メルヘンタッチの物語に相応しい美しい舞台作りが印象的です また,第1幕では水の精たちによるバレエ・シーン,第2幕では結婚披露パーティーでの舞踏シーンがありますが,マコーミックによる振付が素晴らしく,このオペラに華を添えていました

幕間のインタビューで指揮者のマーク・エルダーが

「40年前からこのオペラの魅力に取りつかれて上演してきたが,実際に指揮をしてみて分かったのは,『ルサルカ』にはワーグナーの影響が表れている,特にオペラの暗い側面を表す場面でワーグナーの影響を見い出すことが出来る,ということです

と語っていましたが,第3幕を聴いていて,なるほどと思いました ベートーヴェンと同じように,ワーグナーは後の作曲家に大きな影響を与えているのだということをあらためて感じました

今回の公演はチェコ語での上演ということで,歌手陣も普段より数倍の努力が必要だったのではないかと思います 

約10分の休憩2回と,歌手等へのインタビュー,次シーズン予告などすべてを含めて3時間53分の長丁場でしたが,見ごたえ十分でした

中でも,現在METで進められている 歌劇場がリンカーンセンターに移設されて50周年を記念して企画・収録中の「特別企画」の映像の中で,50年前のこけら落とし公演,バーバーのオペラ「アントニオとクレオパトラ」でクレオパトラを歌ったレオンタイン・プライスがインタビューに応じ,マイクの前で当時歌ったアリアの一部を歌い「これで合ってるかしら?」と言うのですが,これが全盛期から50年後の歌声かと驚くほど現役のような見事な歌唱力なのです.これには度肝を抜かれました

METライブビューイングはこういう特典映像も魅力の一つです

 

  最後の,閑話休題  

 

遠藤周作著「十頁だけ読んでごらんなさい.十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい」(新潮文庫)を読み終わりました 私がこれまで読んだ本の中で一番長いタイトルの作品です 遠藤周作は1923年東京生まれ.慶応義塾大学卒業.55年「白い人」で芥川賞,66年「沈黙」で谷崎潤一郎賞を受賞.96年9月逝去

 

       

 

遠藤周作没後10年の平成18年(2006年)に,光文社の編集者だったS氏に預けられたまま46年間も埋もれていた未発表原稿が発見されました それは,昭和35年4月5日から同年9月5日までに書かれた185枚の原稿で,タイトルはなく,「ちょっとしたことだけれども・・・」という最初の書き出しの後,「十頁だけ読んでごらんなさい.十頁読んで飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい」というユニークな書き出しで始まる原稿でした それを復活させたのがこの作品です

「序」で「ちょっとしたことであなたの人生が変わる」を語り,以下,「筆不精をなおすちょっとしたこと」,「手紙を書く時に大切なちょっとしたこと」,「真心を伝える書き出しのちょっとしたこと」,「返事を書く時に大切なちょっとしたこと」・・・・「相手の心をキャッチするラブ・レターのちょっとしたこと」,「彼女を上手くデートに誘うちょっとしたこと」,「恋愛を断る手紙で大切なちょっとしたこと」,「先輩や知人に出す手紙で大切なちょっとしたこと」など,実生活ですぐに役立つ「手紙を書く時のちょっとした気遣い」が書かれています 見出しからも分かるように,どちらかと言うと,若者向けの「手紙の書き方指南書」のような内容です

スマホやケータイでのメールが主な通信手段となっている現代では,紙の「手紙」による意志の伝達はあまり身近に感じないかも知れませんが,手紙だろうが,スマホやケータイのメールだろうが,伝える内容は同じことです 遠藤周作氏が57年前に伝えたかったことを要約すれば「相手の立場になって手紙を書きなさい」ということです 若者に限らず広くお薦めします

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする