人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

高関健+音楽大学フェスティバルオーケストラでマーラー「交響曲第6番イ短調」他を聴く~プロ顔負けの演奏

2017年03月27日 07時47分51秒 | 日記

27日(月).「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので,今朝 都内でも雪が舞ったようです 全然当てはまらないじゃん.朝から寒いし ということで,わが家に来てから今日で909日目を迎え,トランプ米大統領が大統領選の公約に掲げた医療保険制度改革(オバマケ)の撤廃・見直しが早くも頓挫したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

       トランプのオバマケア撤廃提案はケアレスミスだった  保険をかけておけば良かったのに

 

                   

 

昨日,東京芸術劇場コンサートホールで「第6回音楽大学フェスティバル オーケストラ」を聴きました プログラムは①ドビュッシー:交響詩「海」,②マーラー「交響曲第6番イ短調”悲劇的”」です 指揮は東京シティ・フィル常任指揮者,京都市交響楽団常任客員指揮者の高関健です

このオーケストラは首都圏の9つの音楽大学と熊本地震(2016年4月)で被災した九州の2音大の学生奏者が集まり,復興支援と交流を図るために編成されました 参加大学は,上野学園大学,国立音楽大学,昭和音楽大学,洗足学園大学,東京音楽大学,東京藝術大学,東邦音楽大学,桐朋学園大学,武蔵野音楽大学,平成音楽大学(熊本),大分県立芸術文化短期大学(大分)の各音楽大学です

 

       

 

15時の開演に先立ち本番10分前から指揮者・高関健氏によるプレトークがありました 前日はミューザ川崎で同じプログラムで演奏,この日が2回目ということで「昨日より上手く演奏すると思います」と宣言しました そして,今回の公演でドビュッシーの「海」とマーラーの「第6交響曲」を取り上げたキッカケは,この2曲が同じ時期に作曲されたからだという説明がありました すなわち,ドビュッシーの「海」は1903年8月から1905年3月にかけて作曲され,マーラーの「第6交響曲」は1903年7,8月に第1~第3楽章が,1904年6月~9月に第4楽章が作曲されたということです さらに,マーラーの妻アルマの「夫とドビュッシーは仲違いしていた」という見解は誤解で,マーラーとドビュッシーの関係は良好なものであったことが紹介されました また,マーラーの「交響曲第6番」で中間の第2楽章と第3楽章を「アンダンテ」と「スケルツォ」のどちらを持ってくるかの解釈について,マーラーは3回自身の指揮でこの曲を演奏しているが,第2楽章を「アンダンテ」,第3楽章「スケルツォ」の順番で演奏したことから,これまでいろいろ演奏方法に変遷があったが,現代ではその順番で演奏されるようになった,という説明がありました 高関氏はスコアの読み込みが徹底的であることで知られていますが,彼もその順番で演奏することを選びました.高関健ならではのプレトークでした

さて,自席は1階P列26番,右ブロック左から2つ目です.会場は出演学生の家族・親戚・友人・知人,債権者,赤の他人を中心に9割方埋まっている感じです

学生諸君が入場し配置に着きます.弦楽器の配置は,左奥にコントラバス,前に左から第1ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリンという対向配置をとります 高関健の時はこの編成で,いわば「高関健シフト」です 弦楽器を中心に圧倒的に女子学生の多さが目立ちますが,学生の数が多いのでステージが狭く見えます

プログラム冊子のメンバー表を見ると,前半のコンマスは東京藝大の柘植彩音さんです.名前は覚えているので多分彼女の演奏をどこかで聴いたことがあると思います

再度,高関健が登場し,1曲目のドビュッシー「海ー3つの交響的素描」の演奏に入ります この曲は第1曲「海の夜明けから真昼まで」,第2曲「波の戯れ」,第3曲「風と海との対話」の3つの曲から成ります 驚くべきは管楽器群の素晴らしい演奏です 木管も金管も冴えわたっています.もちろん厚みのある弦楽器も侮れません ドビュッシーならではの色彩感豊かな音楽が展開します これが本当に学生の演奏だろうか,と思うほど素晴らしいパフォーマンスでした

最後の1音が鳴り終わるや否や,上階(2階か3階)から絶叫に近い「ブラボー」が発せられましたが,明らかにフライングです あれでは余韻に浸る猶予がありません こういう人を日本語で「無粋者」と言います 一人で聴いているわけではないのですから,演奏する側と聴く側の両方の立場に立って どうすべきか考えた上で行動して欲しいと思います 明らかに高関健は「ブラボーが早すぎた」という反応でした 案の定,休憩後のアナウンスでは「演奏後の余韻を楽しむため,拍手などは指揮者の手が下されてからお願いいたします」という注意喚起がありました

 

       

 

プログラム後半はマーラーの「交響曲第6番イ短調」です 前述の通り,20世紀初頭の1903年7,8月と1904年6~9月に作曲されました.4楽章から成りますが,前で触れた通り,第1楽章「アレグロ・エネジコ・マ・ノン・トロッポ」,第2楽章「アンダンテ・モデラート」,第3楽章「スケルツォ」,第4楽章「フィナーレ:アレグロ・モデラート」の順番に演奏されます 管楽器群は前半とメンバーが入れ替わります.コンマスも東京音大の福田俊一郎君に代わります

高関健のタクトで第1楽章が開始されます.行進曲風のリズムでグングン音楽が進みますが,中盤では,マーラーの指示通り,クラリネットがベルアップ奏法で演奏します ホルンが抜群に上手い 実に味のある演奏をしています.第2楽章ではオーボエ,クラリネットを中心に木管楽器が冴え,弦楽器が美しいアンサンブルを聴かせます 第3楽章では重心の低いスケルツォが奏でられます.先日同じ曲を取り上げた上岡敏之+新日本フィルの演奏はエクセントリックなものでしたが,高関健+大学選抜オケの演奏は整然としたもので,「楽譜通り」といった調味料なしの演奏でした

最後の第4楽章が,ハープとチェレスタによるグリッサンドによって開始されます この楽章でも木管,金管を問わず管楽器が冴えわたり,弦楽器も渾身の演奏を展開しました この楽章でも高関は時にクラリネットに,ホルンに,オーボエに,ベルアップ奏法を求めます 高関健のことですから,すべてが楽譜通りなのでしょう

この楽章では中盤とコーダ近くにハンマーによる打撃が2回ありますが,床が揺れ,振動が椅子に伝わりました 最後に第1楽章冒頭の忘れがたいメロディーが戻ってきてコーダになり,突然全楽器による強奏により衝撃的な結末を迎えます

今度は,アナウンスが効いたようで,しばしの しじまがあって,指揮者のタクトが下されてから会場いっぱいの拍手が起こりました これが普通なのです

この日の学生選抜による演奏は,とても学生オケとは思えないほど技術的にも優れており,素晴らしいパフォーマンスでした 今回の大成功は,寄せ集め学生オケの力を最大限に引き出し 熱演を繰り広げた高関健に依るところが大きいと思います

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