20日(月・祝)その2.よい子は「その1」から読んでね.モコタロはそっちに出演しています
昨日午後7時から東京文化会館小ホールで「Voice’n Violin」コンサートを聴きました.これは「東京・春・音楽祭」参加公演です プログラムは①モーツアルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲(オケ),②同「魔笛」より「なんと美しい絵姿」(シャーガー),③同「ロンド ハ長調K.373」(バイチ),④ワーグナー/モットル,フレッツベルガー編「ヴェーゼンドンク歌曲集」(シャーガ-),⑤サン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」(バイチ),⑥レズ二チェク:歌劇「ドンナ・ディアナ」序曲(オケ),⑦J.シュトラウス2世:喜歌劇「ジプシー男爵」より「小さいときに孤児になり」(シャーガー),⑧リスト/バイチ,フレッツベルガ-編「愛の夢第3番変イ長調」(シャーガー&バイチ),⑨同「ハンガリー狂詩曲」(バイチ),⑩レハール:喜歌劇「ジュディッタ」より「友よ,人生は生きる価値がある」(シャーガー),⑪クライスラー/フレッツベルガー編「ウィーン奇想曲」~「愛の悲しみ」(バイチ),⑫J.シュトラウス2世/フレッツベルガー編「シュトラウス一家の作品によるメドレー」(シャーガー&バイチ)です
出演は,昨年の東京・春・音楽祭のワーグナー「ジークフリート」でタイトルロールを歌い,圧倒的な存在感を見せつけたオーストリア生まれのテノール,アンドレアス・シャーガー,ロシアのサンクトペテルブルク生まれで世界的に活躍するヴァイオリ二ストのリディア・バイチ,管弦楽はトウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア,指揮はウィーン生まれのマティアス・フレッツベルガーです
自席はD列19番,左ブロック3列目の右通路側です.開演時間2分過ぎ,会場はすでに埋まっているのに,通路を挟んだすぐ右のセンターブロックの最前列の席が空いています.いや~な予感がしました 予感は当たるものです.やってきました,背中に大きな荷物を背負ったサスペンダー爺さん いつものように草履を履いての登場です.「また あんたかよ」という感じです.しかもすぐ近くの席だし そうでなくても目立つのに ほとんど目の前なので絶望的な景色です
さて,トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアの面々が登場し,配置に着きます.コンマスは東響コンマスの水谷晃,他にもどこかで見た顔がちらほら見受けられます それもそのはず,このオケは国内外のオーケストラやソロで活躍する日本人の若手演奏家の集団で,「トウキョウ・モーツアルト・プレイヤーズ」がその前身です 20人ほどのメンバーがステージ所狭しと並びます.指揮者マティアス・フレッツベルガーが登場し 早速1曲目のモーツアルトの歌劇「フィガロの結婚」序曲の演奏に入ります.コンマス水谷の大きな動きに合わせて軽快な音楽が進行します
ここで,お待ちかね,昨年のハルサイ・リング「ジークフリート」でお馴染みのアンドレアス・シャーガーの登場です 多くの聴衆が昨年の「ジークフリート」を聴いた経験者らしく,熱狂的な拍手が送られました シャーガーは満面の笑みです まず手始めにモーツアルトの歌劇「魔笛」よりタミーノのアリア「なんと美しい絵姿」を歌いましたが,しょっぱなから度肝を抜かれました 前から3列目という好条件を抜きにしても,あまりの迫力です あの声だったら 3人の侍女の力を借りなくても 声の迫力で大蛇を倒すことができるだろうと思うほどです
次いで,ピンクの花模様のドレスを身にまとったリディア・バイチが登場しモーツアルトの「ロンド ハ長調K.373」を演奏しました ヴァイオリンの音色が美しいと思ったら,オーストリア国立銀行から貸与されている1732年製のグァルネリ「エクス・ギレ」とのことでした.この人には華があります
次に再度シャーガーが登場,ワーグナー作曲モットルとフレッツベルガー編曲による「ヴェーゼンドンク歌曲集」を歌いました この曲は1857年当時,ワーグナーのパトロンだったベーゼンドンク夫人のマティルデから贈られた詩に曲を付けたものです 第1曲「天使」,第2曲「とまれ」,第3曲「温室にて」,第4曲「悩み」,第5曲「夢」の5つの歌から成ります.私は,この歌は女性が歌うものとばかり思っていましたが,そうではないのですね シャーガーは曲に応じて表情を変えながら 張りのある歌声で5曲を歌い上げました 最後の「夢」では,いつの間にか登場したバイチも演奏に加わり,シャーガーの歌に華を添えていました 会場はやんややんやの喝采です
プログラム前半の最後は,サン=サーンスが1863年に作曲した「序奏とロンド・カプリチオーソ」です バイチにより超絶技巧で演奏され,大きな拍手を受けました
プログラム後半の幕開けはウィーン出身の指揮者・作曲家レズ二チェクが作曲した歌劇「ドンナ・ディアナ」から序曲です 初めて聴きましたが,フルートをはじめ管楽器が大活躍するテンポの速い曲で,実に楽しい曲でした 同じウィーン出身の指揮者で編曲もするフレッツベルガーの強い意志で選ばれた曲でしょう 曲が終わると「どうですか,この曲,いいでしょう」といったドヤ顔が見られました
ここで再び大きな拍手に迎えられシャーガーが登場,J.シュトラウス2世が1885年に初演した喜歌劇「ジプシー男爵」より「小さいときに孤児になり」を迫力のある歌声で陽気に歌い上げました またしても度肝を抜かれました
次いで,シャーガーとバイチが揃って登場し,リスト作曲バイチとフレッツベルガ-編曲による「愛の夢第3番変イ長調」を 歌とヴァイオリンで演奏しロマンティックな世界を表出しました
次にバイチが再登場し,リストの「ハンガリー狂詩曲第2番嬰ハ短調」を超絶技巧で鮮やかに演奏しました
次いで,シャーガーが三度登場,レハールの喜歌劇「ジュディッタ」より「友よ,人生は生きる価値がある」を,またしてもド迫力で歌い上げ 会場を興奮の坩堝と化しました
次に三度バイチが登場,クライスラー/フレッツベルガー編「ウィーン奇想曲」と「愛の悲しみ」をニュアンス豊かに演奏しました
プログラムの最後は,まずバイチが登場し,J.シュトラウス2世/フレッツベルガー編「シュトラウス一家の作品によるメドレー」を演奏,途中からシャーガーが加わり,シュトラウスのオペレッタのアリアを歌い華を添えました
これで用意されたプログラムは終了ですが,指揮者のフレッツベルガーがニコニコ顔で聴衆に「サムシング・ワン・モア?」とアンコールを暗示します.もちろん聴衆は大拍手です すると「サムシング・ワーグナー?」と訊くので聴衆は熱狂的な拍手を送ります
会場割れんばかりの拍手の中シャーガーが登場,ワーグナー「ワルキューレ」から「冬の嵐は過ぎ去り」をヘルデンテノールで歌い上げ 会場を圧倒しました
次いでバイチが登場,ヴァイオリン曲のアンコール・ピースとしてお馴染みのモンティ「チャルダーシュ」を鮮やかに演奏し,大きな拍手を受けました
ここで誰も帰らないので,フレッツベルガーが「ワンモア?」と2曲目のアンコールを暗示するので,聴衆はさらに大きな拍手で応えると,フレッツベルガーは「ワン!」と最後の1曲であることを強調し,シャーガーとバイチを迎えました レハールの「メリーウィドウ」から「閉ざされた唇に」をバイチとオケの伴奏でシャーガーが歌い,熱狂的な拍手とブラボーが飛び交う中,コンサートを締めくくりました
このコンサートはS席8,700円,A席7,200円と 小ホールでの公演としては決して安くない料金でしたが,このコンサートを聴いた聴衆のほとんどは,それ以上の価値を見出していたと確信します 特に「最強のヘルデンテノール」アンドレアス・シャーガーの歌が聴けたことは最高の喜びです まだ3月ですが,今のところ今年のマイベストです
さて,ここで気持ちよく終わりたかったのですが,どうしても書かなくてはならないことがあります.サスペンダー爺さんのことです
公演が終わって,聴衆が帰ろうとしているとき,最前列の中央席のサスペンダー爺さんが荷物を背負って立ちあがり隣のおばあさんと話を始めたので,客席前方の通路が塞がって人々が通りにくくなってしまったのです 皆「じゃまなんだよ この爺さん」という顔で爺さんを避けて通って行きます.それを見かねた係りの女性が飛んできて爺さんに注意をしていました 本人には背中に背負った荷物が見えませんから,他の人に迷惑をかけているとは夢にも思っていないのでしょうね 自己中を絵に描いたような爺さんです.この爺さん,草履を履いて 大きな荷物を背負って あちこちのコンサート会場に開演直前に登場して最前列に座るパフォーマンスで有名ですが,その有名は famous ではなく notorius の方だということを本人だけが理解していないようです 自己顕示欲と承認欲求の固まりの爺さんには多くの音楽愛好家が怒るとともに困り果てています
あ~やだやだ,毎回こんなことを書かなければならないなんて