人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「 Voice’n Violin ~ アンドレアス・シャーガー & リディア・バイチ 」公演を聴く~拍手とブラボー鳴りやまず!

2017年03月20日 11時10分46秒 | 日記

20日(月・祝)その2.よい子は「その1」から読んでね.モコタロはそっちに出演しています

昨日午後7時から東京文化会館小ホールで「Voice’n Violin」コンサートを聴きました.これは「東京・春・音楽祭」参加公演です プログラムは①モーツアルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲(オケ),②同「魔笛」より「なんと美しい絵姿」(シャーガー),③同「ロンド  ハ長調K.373」(バイチ),④ワーグナー/モットル,フレッツベルガー編「ヴェーゼンドンク歌曲集」(シャーガ-),⑤サン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」(バイチ),⑥レズ二チェク:歌劇「ドンナ・ディアナ」序曲(オケ),⑦J.シュトラウス2世:喜歌劇「ジプシー男爵」より「小さいときに孤児になり」(シャーガー),⑧リスト/バイチ,フレッツベルガ-編「愛の夢第3番変イ長調」(シャーガー&バイチ),⑨同「ハンガリー狂詩曲」(バイチ),⑩レハール:喜歌劇「ジュディッタ」より「友よ,人生は生きる価値がある」(シャーガー),⑪クライスラー/フレッツベルガー編「ウィーン奇想曲」~「愛の悲しみ」(バイチ),⑫J.シュトラウス2世/フレッツベルガー編「シュトラウス一家の作品によるメドレー」(シャーガー&バイチ)です

出演は,昨年の東京・春・音楽祭のワーグナー「ジークフリート」でタイトルロールを歌い,圧倒的な存在感を見せつけたオーストリア生まれのテノール,アンドレアス・シャーガー,ロシアのサンクトペテルブルク生まれで世界的に活躍するヴァイオリ二ストのリディア・バイチ,管弦楽はトウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア,指揮はウィーン生まれのマティアス・フレッツベルガーです

 

       

 

自席はD列19番,左ブロック3列目の右通路側です.開演時間2分過ぎ,会場はすでに埋まっているのに,通路を挟んだすぐ右のセンターブロックの最前列の席が空いています.いや~な予感がしました 予感は当たるものです.やってきました,背中に大きな荷物を背負ったサスペンダー爺さん いつものように草履を履いての登場です.「また あんたかよ」という感じです.しかもすぐ近くの席だし そうでなくても目立つのに ほとんど目の前なので絶望的な景色です

さて,トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアの面々が登場し,配置に着きます.コンマスは東響コンマスの水谷晃,他にもどこかで見た顔がちらほら見受けられます それもそのはず,このオケは国内外のオーケストラやソロで活躍する日本人の若手演奏家の集団で,「トウキョウ・モーツアルト・プレイヤーズ」がその前身です 20人ほどのメンバーがステージ所狭しと並びます.指揮者マティアス・フレッツベルガーが登場し 早速1曲目のモーツアルトの歌劇「フィガロの結婚」序曲の演奏に入ります.コンマス水谷の大きな動きに合わせて軽快な音楽が進行します

ここで,お待ちかね,昨年のハルサイ・リング「ジークフリート」でお馴染みのアンドレアス・シャーガーの登場です 多くの聴衆が昨年の「ジークフリート」を聴いた経験者らしく,熱狂的な拍手が送られました シャーガーは満面の笑みです まず手始めにモーツアルトの歌劇「魔笛」よりタミーノのアリア「なんと美しい絵姿」を歌いましたが,しょっぱなから度肝を抜かれました 前から3列目という好条件を抜きにしても,あまりの迫力です あの声だったら 3人の侍女の力を借りなくても 声の迫力で大蛇を倒すことができるだろうと思うほどです

次いで,ピンクの花模様のドレスを身にまとったリディア・バイチが登場しモーツアルトの「ロンド  ハ長調K.373」を演奏しました ヴァイオリンの音色が美しいと思ったら,オーストリア国立銀行から貸与されている1732年製のグァルネリ「エクス・ギレ」とのことでした.この人には華があります

次に再度シャーガーが登場,ワーグナー作曲モットルとフレッツベルガー編曲による「ヴェーゼンドンク歌曲集」を歌いました この曲は1857年当時,ワーグナーのパトロンだったベーゼンドンク夫人のマティルデから贈られた詩に曲を付けたものです 第1曲「天使」,第2曲「とまれ」,第3曲「温室にて」,第4曲「悩み」,第5曲「夢」の5つの歌から成ります.私は,この歌は女性が歌うものとばかり思っていましたが,そうではないのですね シャーガーは曲に応じて表情を変えながら 張りのある歌声で5曲を歌い上げました 最後の「夢」では,いつの間にか登場したバイチも演奏に加わり,シャーガーの歌に華を添えていました 会場はやんややんやの喝采です

プログラム前半の最後は,サン=サーンスが1863年に作曲した「序奏とロンド・カプリチオーソ」です バイチにより超絶技巧で演奏され,大きな拍手を受けました

 

       

 

プログラム後半の幕開けはウィーン出身の指揮者・作曲家レズ二チェクが作曲した歌劇「ドンナ・ディアナ」から序曲です 初めて聴きましたが,フルートをはじめ管楽器が大活躍するテンポの速い曲で,実に楽しい曲でした 同じウィーン出身の指揮者で編曲もするフレッツベルガーの強い意志で選ばれた曲でしょう 曲が終わると「どうですか,この曲,いいでしょう」といったドヤ顔が見られました

ここで再び大きな拍手に迎えられシャーガーが登場,J.シュトラウス2世が1885年に初演した喜歌劇「ジプシー男爵」より「小さいときに孤児になり」を迫力のある歌声で陽気に歌い上げました またしても度肝を抜かれました

次いで,シャーガーとバイチが揃って登場し,リスト作曲バイチとフレッツベルガ-編曲による「愛の夢第3番変イ長調」を 歌とヴァイオリンで演奏しロマンティックな世界を表出しました

次にバイチが再登場し,リストの「ハンガリー狂詩曲第2番嬰ハ短調」を超絶技巧で鮮やかに演奏しました

次いで,シャーガーが三度登場,レハールの喜歌劇「ジュディッタ」より「友よ,人生は生きる価値がある」を,またしてもド迫力で歌い上げ 会場を興奮の坩堝と化しました

次に三度バイチが登場,クライスラー/フレッツベルガー編「ウィーン奇想曲」と「愛の悲しみ」をニュアンス豊かに演奏しました

プログラムの最後は,まずバイチが登場し,J.シュトラウス2世/フレッツベルガー編「シュトラウス一家の作品によるメドレー」を演奏,途中からシャーガーが加わり,シュトラウスのオペレッタのアリアを歌い華を添えました

これで用意されたプログラムは終了ですが,指揮者のフレッツベルガーがニコニコ顔で聴衆に「サムシング・ワン・モア?」とアンコールを暗示します.もちろん聴衆は大拍手です すると「サムシング・ワーグナー?」と訊くので聴衆は熱狂的な拍手を送ります

会場割れんばかりの拍手の中シャーガーが登場,ワーグナー「ワルキューレ」から「冬の嵐は過ぎ去り」をヘルデンテノールで歌い上げ 会場を圧倒しました

次いでバイチが登場,ヴァイオリン曲のアンコール・ピースとしてお馴染みのモンティ「チャルダーシュ」を鮮やかに演奏し,大きな拍手を受けました

ここで誰も帰らないので,フレッツベルガーが「ワンモア?」と2曲目のアンコールを暗示するので,聴衆はさらに大きな拍手で応えると,フレッツベルガーは「ワン!」と最後の1曲であることを強調し,シャーガーとバイチを迎えました レハールの「メリーウィドウ」から「閉ざされた唇に」をバイチとオケの伴奏でシャーガーが歌い,熱狂的な拍手とブラボーが飛び交う中,コンサートを締めくくりました

このコンサートはS席8,700円,A席7,200円と 小ホールでの公演としては決して安くない料金でしたが,このコンサートを聴いた聴衆のほとんどは,それ以上の価値を見出していたと確信します  特に「最強のヘルデンテノール」アンドレアス・シャーガーの歌が聴けたことは最高の喜びです まだ3月ですが,今のところ今年のマイベストです

 

                         

 

さて,ここで気持ちよく終わりたかったのですが,どうしても書かなくてはならないことがあります.サスペンダー爺さんのことです

公演が終わって,聴衆が帰ろうとしているとき,最前列の中央席のサスペンダー爺さんが荷物を背負って立ちあがり隣のおばあさんと話を始めたので,客席前方の通路が塞がって人々が通りにくくなってしまったのです 皆「じゃまなんだよ この爺さん」という顔で爺さんを避けて通って行きます.それを見かねた係りの女性が飛んできて爺さんに注意をしていました 本人には背中に背負った荷物が見えませんから,他の人に迷惑をかけているとは夢にも思っていないのでしょうね 自己中を絵に描いたような爺さんです.この爺さん,草履を履いて 大きな荷物を背負って あちこちのコンサート会場に開演直前に登場して最前列に座るパフォーマンスで有名ですが,その有名は  famous  ではなく notorius の方だということを本人だけが理解していないようです   自己顕示欲と承認欲求の固まりの爺さんには多くの音楽愛好家が怒るとともに困り果てています

あ~やだやだ,毎回こんなことを書かなければならないなんて

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大友直人+萩原麻未+群馬交響楽団でチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」,ラフマニノフ「交響曲第2番」他を聴く

2017年03月20日 09時12分18秒 | 日記

20日(月)その1.わが家に来てから今日で902日目を迎え,ドイツで開かれていたG7財務相・中央銀行総裁会議が共同声明を採択して閉幕したが,最大の焦点だった貿易分野で,これまでの声明にあった「保護主義に対抗する」という文言が入らなかった,というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

         結局はアメリカの言いなりだな ほかの国もすべて保護主義に徹したらどうなるの?

 

  閑話休題  

 

昨日午後3時から すみだトリフォニーホールで「群馬交響楽団東京公演」を,7時から東京文化会館小ホールで「Voice 'n Violin~アンドレアス・シャーガー&リディア・バイチ」聴きました ここでは群馬交響楽団の公演について書きます

群馬交響楽団と言えば,1955年に,この楽団をモデルに製作された映画「ここに泉あり」で有名なオーケストラ.当ブログでもこの映画をご紹介しましたね

プログラムは①千住明:オペラ「滝の白糸」序曲,②チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調」,③ラフマニノフ「交響曲第2番ホ短調」です ②のピアノ独奏は萩原麻未,指揮は群響音楽監督・大友直人です

 

       

 

自席は1階9列7番,左ブロック左から6つ目の席です 残念ながら通路側は押さえられませんでした.会場は9割方入っているでしょうか

オケのメンバーが入場し配置に着きます.このオケはオーソドックスな編成をとります.左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという並びです 団員名簿によるとコンミスは伊藤文乃さんです

ライオン丸,もとい髪の毛がライオンのような形の大友直人が登場し指揮台に上がります.大友が楽員に向き合い,まさに演奏を始めようとした時,会場左ブロック前方で紙をカサカサする大きな音が響き渡りました 当然指揮者の耳にも入り,大友は上げた手を一旦下ろし,音が止むのを待ちました

いったいどういうつもりなんでしょうか これはハッキリ言って演奏妨害です 前日のケータイ着信音を演奏中に鳴らすバカ者といい,この日の紙でカサカサ音を出すバカ者といい,あまりにもバカが多すぎます 人に迷惑をかけているという自覚がないのでしょうね,バカだから

さて,気分を変えて話を本筋に戻しましょう 1曲目の千住明:オペラ「滝の白糸」序曲の演奏に入ります.このオペラは原作者・泉鏡花の故郷である金沢市とオーケストラ・アンサンブル金沢の委嘱により作曲され,2014年1月に初演されました 今回は改訂版による序曲が演奏されます

聴いた印象を一言で言えば「NHK大河ドラマ」のテーマ音楽に相応しいような日本的でスケール感のある曲でした 演奏後,会場にいた千住明氏がステージに呼ばれ,大きな拍手を受けました

2曲目は,私にとってはメインの,萩原麻未がソリストを務めるチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調」です この曲はチャイコフスキーが34歳の,1874年11月から12月にかけて作曲されました.完成した曲の批評を親友で大ピアニストのニコライ・ルビンシテインに求めたところ「演奏不能」として酷評されたというエピソードは有名です チャイコフスキーは「1音たりとも変更しない」と宣言したそうですが,そうは言うものの,演奏されないのではお話しにならないので,細部に若干の手直しを入れたとのことです 意外なのは,この曲の初演がチャイコフスキーがアメリカへ演奏旅行に行った際,1875年10月13日にボストンでハンス・フォン・ビューローのピアノ独奏によって行われたことです 私はてっきりロシアで初演されたのだとばかり思っていました.今更ですが

さて,ソリストの萩原麻未は広島県出身で,2010年の第65回ジュネーヴ国際コンクール・ピアノ部門で日本人として初めて優勝し脚光を浴びました 広島音楽高等学校を卒業後,文化庁海外新進芸術家派遣員としてパリ国立音楽院に留学,修士課程を首席で修了し,同音楽院室内学科,パリ地方音楽院室内学科,モーツアルテウム音楽院を卒業しています.私が一押しの若手ピアニストです

グランド・ピアノがステージ中央に運ばれ,ソリストの登場を待ちます.萩原麻未が白の鮮やかなステージ衣装で登場,ピアノに対峙します 大友の合図で第1楽章序奏部の勇壮なテーマに入ります 自席から萩原麻未の演奏する運指が良く見えるのですが,思わず見入ってしまいます 彼女が速いパッセージを弾く時は聴いている私の身体が熱くなってきて胸がドキドキしてきます こういうピアニストは過去に1人しかいません.それはマルタ・アルゲリッチです 演奏を通じて人を自分の音楽に巻き込む力を持っているのです もう一つ 二人の共通点を挙げるとすれば,演奏に「天性のひらめき」があることです ただ単に弾くのが速いとかスケールが大きいとかいったことではなく,そこには詩情が漂っています.そんな彼女の演奏する第1楽章のカデンツァは萩原麻未の独壇場でした

そうした特徴は,第2楽章でも第3楽章でも変わりはありません 特に第2楽章「アンダンティーノ・センプリーチェ」では弱音による演奏が素晴らしく,音は小さくても芯があるので訴える力があります フィナーレは圧巻でした

萩原麻未はアンコールに,バッハの「無伴奏パルティータ」の「ガボット」(ラフマニノフ編曲版)を演奏し,会場いっぱいの拍手を受けました

 

       

 

プログラム後半は,ラフマニノフ「交響曲第2番ホ短調」です ラフマニノフ(1873-1943)は作曲家である前に大ピアニストとして有名でした 大きな手を生かしてヴィルトゥーゾ・ピアニストとして活躍していました したがって彼が作曲したピアノのための曲はすべて自分自身が演奏するための作品でした そんなラフマニノフが作曲した交響曲は3曲ありますが,この日演奏する第2番が一番演奏される機会の多い作品です

私がこの曲の良さを初めて知ったのは,数年前の5月,東京国際フォーラムのホールAで聴いたドミトリー・リス指揮ウラル・フィルによる演奏(ラ・フォル・ジュルネ音楽祭)です スケールの大きなダイナミックな演奏にすっかり魅了されてしまいました

この曲は4つの楽章から成ります.第1楽章では後の楽章で活躍する重要なテーマが顔を出します 第2楽章「アレグロ・モルト」は実質的にはスケルツォです.元気の良いホルンの演奏で開始されます 第3楽章「アダージョ」はこの交響曲の一番の聴きどころです ヴァイオリン・セクション,クラリネット,オーボエ,イングリッシュ・ホルンなどによって奏でられるロマンティックなメロディーが印象に残ります 特に弦楽合奏は見事でした.第4楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」はエネルギーに満ちた音楽が展開します 群響は弦楽セクションを中心にスケールの大きな音楽を展開しました

この後,上野の東京文化会館に向かいました.この続きは「その2」をご覧ください

 

       

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