「アジアンサンブル@TOKYO」を聴く~モーツアルト「ヴァイオリン・ソナタK.454」、ブラームス「ピアノ三重奏曲第1番」、ショパン「幻想即興曲」他:サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン
11日(火)。昨日は新聞休刊日だったので、午前中は コップに注ぎっぱなしで1時間も放置しておいたビールのように、気の抜けたような気分でした でも、その分 1週間分のワイシャツにアイロンがけも出来たし、読書も進んだのでプラス マイナス ゼロです
ということで、わが家に来てから今日で1712日目を迎え、香港の民主派団体は9日、中国本土に刑事事件の容疑者を引き渡せるようにする「逃亡犯条例」の改正案に反対する大規模なデモを実施した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
人権意識のない本土に引き渡したらどうなるか 香港政府は分かってんのかね!?
昨日は梅雨のためか寒かったので、夕食に「鶏肉のクリーム・シチュー」と「生野菜サラダ」を作りました このところ暖かかったのでシチューは久しぶりです
昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」で、「アジアンサンブル@TOKYO」コンサートを聴きました これは「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン2019」の一環として開かれたコンサートです プログラムは①モーツアルト「ヴァイオリン・ソナタ変ロ長調K.454」、②ショパン「ワルツ第9番変イ長調作品69-1”告別”」、③同「幻想即興曲嬰ハ短調作品66」、④ドビュッシー「チェロ・ソナタ ニ短調」、⑤ブラームス「ピアノ三重奏曲第1番ロ長調作品8」(改訂版)です 演奏はヴァイオリン=ハン・スジン、チェロ=宮田大、ピアノ=パヴェル・コレス二コフです
自席はC6列12番、センターブロック右通路側です
1曲目はモーツアルト「ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.454」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1784年に作曲したウィーン時代の最初のソナタです モーツアルトが「豊かな様式感と感情をもつ素晴らしいヴァイオリ二スト」と評したイタリア出身のレジーナ・ストリナザッキとの共演の機会に生まれました 1784年4月29日にケルントナートーア劇場で ヨーゼフ2世隣席のもと、モーツアルトは彼女とこの曲を初演しましたが、クラヴィーア・パートの楽譜化が間に合わなかったため、彼はメモを見ながら全曲を演奏したと言われています 彼の頭の中にはすべての音符が入っていたようです 第1楽章「ラルゴ~アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグレット」の3楽章から成ります
ヴァイオリンのハン・スジンとピアノのパヴェル・コレス二コフが入場し配置に着きます プログラム冊子のプロフィールによると、韓国生まれのハン・スジンはザハール・ブロン、チョン・キョンファ、アナ・チュマチェンコら世界的に超一流の指導者に師事しており、いくつかの国際コンクールで優勝しています 韓国の若手実力者といったところです 一方、パヴェル・コレス二コフはシベリア生まれで、エリザベート王妃音楽学校ではマリア・ジョアン・ピリスに師事したとのことです 年齢不詳ですが、見た目がすごく若い青年です
演奏を聴いた印象は、ハン・スジンは素直で変な癖がない演奏で 音楽の流れが自然です 一方、コレス二コフの演奏はやや音が大きすぎるきらいがあり、時にヴァイオリンの音を消してしまいます 越後屋、おぬし若いのう
2曲目はショパン「ワルツ第9番 変イ長調 作品69‐1 ”告別” 」です この曲はフレデリック・ショパン(1810-1849)が1835年にドレスデンの友人・ヴォジンスキを訪ねた際、娘マリアに恋心を抱き、彼女に贈った作品です コレス二コフの演奏は ややもたれ気味で、癖があります 彼は間を置かずに次の「幻想即興曲 嬰ハ短調 作品66」の演奏に入りました この曲は1834年頃に作曲された作品ですが、「幻想即興曲」というタイトルはショパンの死後、出版にあたり付けられたものです この2曲はほぼ同じ時期に作曲されましたが、コレス二コフは2曲を続けて演奏することによって一つの物語を語っているように思いました すなわち、ショパンがワルツ第9番に託したマリアへの想いは実らなかった(要するに振られた)ため、そのやるせない思いを幻想即興曲にぶちまけたように感じさせる演奏でした 私には、彼が”通俗名曲”の「幻想即興曲 嬰ハ短調」を単独で演奏するようには思えませんでした
4曲目はドビュッシー「チェロ・ソナタ ニ短調」です この曲はクロード・ドビュッシー(1862-1918)が1915年に作曲した作品です 第1楽章「プロローグ:ゆっくりと」、第2楽章「セレナード:ほどよく快活に」、第3楽章「フィナーレ:快活に」の3楽章からなります
チェロの宮田大、ピアノのパヴェル・コレス二コフが登場し、さっそく第1楽章に入ります 宮田大のチェロが良く歌います ピアノとの丁々発止のやり取りも見事です 第2楽章はチェロのピッツィカートで開始されますが、全体的には「闇の中の魑魅魍魎」といった不気味さを感じさせる音楽です 第3楽章は一転、躍動感あふれる音楽が展開しますが、チェロのあらゆる技巧をフルに活用した超絶技巧曲です この曲ではコレス二コフのピアノは出過ぎることもなく調和が取れていました
休憩後のプログラム後半はブラームス「ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 作品8」です この曲はヨハネス・ブラームス(1833ー1897)が1853年から翌54年にかけて作曲、その後、1889年から翌90年にかけて改訂した作品です 私はブラームスの室内楽ではこの曲が一番好きです。第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「スケルツォ:アレグロ・モルト」、第3楽章「アダージョ」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります
私が最も注目するのは第1楽章冒頭のピアノのテンポです これが速過ぎたらすべてがアウトです。コレス二コフによる演奏は理想に近いテンポです ピアノに導かれてチェロが第1主題を奏でますが、宮田大の演奏が素晴らしい そして、ヴァイオリンが加わって三重奏になりますが、ハン・スジンのヴァイオリンが素晴らしい この曲でもコレス二コフのピアノが若干大きすぎるきらいがありますが、微妙なところです ピアノがいいな、と思うのは第3楽章冒頭です ピアノが静かに和音を奏で、弦楽が呼応するのですが、ピアノも弦楽も美しい 抑制された美しさを感じます。第4楽章は推進力に満ちた曲想で、アグレッシブなフィナーレを迎えます
大きな拍手を受け、宮田大が「日本人を代表してご挨拶いたします(笑)。サントリーホールは『チェンバーミュージック・ガーデン』という室内楽の祭典を開いて下さっていて有難く思っています 室内楽というと、とっつきにくく、入るのが大変というイメージがあるようですが、一旦この世界に入ってしまうと病みつきになるところがあります これからも室内楽をお聴きください アンコールに今 演奏したブラームスの第2楽章『スケルツォ』を演奏してコンサートを締めくくりたいと思います」とあいさつし、アンコールの演奏に入りました
この日の収穫は何と言ってもブラームスの「ピアノ三重奏曲第1番」が素晴らしい演奏で聴けたことです