人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

クス・クァルテットのベートーヴェン・サイクルⅢ(弦楽四重奏曲第10番、第11番、第12番)を聴く~ ただ今 ライブ録音進行中:サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン

2019年06月09日 07時50分05秒 | 日記

9日(日)その2.よい子は「その1」も見てね。モコタロはそちらに出演しています

 

         

 

昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」で、クス・クァルテットの「ベートーヴェン・サイクルⅢ」を聴きました これは「サントリーホール  チェンバーミュージック・ガーデン2019」の一環として開かれたコンサートです プログラムはベートーヴェン①「弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 作品74 ”ハープ” 」、②「同第11番 ヘ短調 作品95 ”セリオーソ” 」、③「同第12番 変ホ長調 作品127」です

 

     

 

6日の朝日夕刊のコラムmusic&theater」欄にクス・クァルテットが取り上げられていました 今回の「ベートーヴェン・サイクル」では、日本音楽財団が所有するストラディバリウス・コレクション「パガニーニ・クァルテット」(ヴァイオリン2挺、ヴィオラ、チェロ)が彼らに貸与されているとのことです これらはパガニーニが所有していたもので、かつて東京クァルテットが愛用していたことでも知られています 今回のチェンバーミュージック・ガーデンでは元東京クァルテットのメンバー、ヴァイオリンの池田菊衛、ヴィオラの磯村和英の両氏が演奏に参加しています ”再会”したら感慨深いものがあるのではないでしょうか

ステージ上の4人の譜面台の後方には集音マイクが林立しています そういえば、ロビーのCD売り場に「本日の公演はライブ録音中。CDの詳細はQRコードから」というお知らせが出ていました どうやら全曲ライブ録音CDを出すらしいです

1曲目は「弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 作品74 ”ハープ” 」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770ー1827)が1809年に作曲、フランツ・ヨーゼフ・フォン・ロブコヴィツ侯爵に献呈されました この作品は「ハープ」という愛称で呼ばれていますが、これは第1楽章でのピッツィカートによる印象的な奏法がハープのように聴こえることから付けられたものです 第1楽章「ポコ・アダージョ~アレグロ」、第2楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ」、第3楽章「プレスト」、第4楽章「アレグレット・コン・ヴァリアツィオー二」の4楽章から成ります ベートーヴェンの弦楽四重奏曲で唯一、終楽章に変奏曲を置いているのが特徴です

4人の演奏で第1楽章に入りますが、ラズモフスキー弦楽四重奏曲の厳しさとはすっかり変わって、全体的に明るさと優しさに満ちています 第1楽章が楽しく、第4楽章の主題と6つの変奏曲も楽しめました

2曲目は「弦楽四重奏曲同第11番 ヘ短調 作品95 ”セリオーソ” 」です この曲は1810年に作曲され、1814年5月にシュパンツィク四重奏団により初演されました ベートーヴェンと親交のあったハンガリーの作曲家ニコラウス・ズメスカルに献呈されています 標題の「セリオーソ」は「真面目な、厳粛な」という意で、べート―ヴェン自身が自筆スコアに「クァルテット・セリオーソ」と書き込んでいます

第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アレグレット・マ・ノン・トロッポ」、第3楽章「アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ・マ・セリオーソ」、第4楽章「ラルゲット・エスプレッシーヴォ~アレグレット・アジタート~アレグロ」の4楽章から成ります

第1楽章は4人の奏者の速いテンポで展開する丁々発止のやり取りがスリリングで、緊張感に満ちていました この曲を聴いていて いつも違和感を感じるのは第4楽章のフィナーレです それまでの「厳粛な」路線が、突然、楽観的な曲想に転化し慌ただしく終曲に向かいます 曲を献呈するズメスカルに対する何らかの配慮があったのだろうか 不思議なフィナーレです


     


最後の曲は「弦楽四重奏曲第12番 変ホ長調 作品127」です ベートーヴェンは、「ミサ・ソレムニス」や「第九交響曲」を作曲した後、弦楽四重奏曲に絞って作曲活動を進めたのですが、第11番「セリオーソ」から10年以上経過した1823年から24年にかけて、ロシア貴族ガリツィン公爵からの委嘱により第13番、第15番とともに作曲されたのがこの作品(後期の第1作)で、1825年3月6日にシュパンツィク四重奏団により初演されました。第1楽章「マエストーソ」、第2楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・カンタービレ」、第3楽章「スケルツォ:ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります

 第1楽章は重厚な和音による短い序奏で始まりますが、後期の傑作の幕開けを告げるかのような堂々たる曲想です 第2楽章のアダージョは素晴らしいですね 私は弦楽四重奏曲に限らず、ベートーヴェンの作品で最も優れているのはアダージョ楽章ではないかと思っています 第13番の第5楽章「カヴァティーナ」にしても、第14番の第6楽章「アダージョ」にしても、しみじみと沁み込んできます かつて、マーラーの交響曲のアダージョ楽章だけを集めたコンピレーションCDがありましたが、ベートーヴェンのアダージョ楽章だけを集めた「ベートーヴェン・アダージョ」コンピレーションCDを作ったら売れるのではないか、と思います

それにしても、と思うのは、この当時ベートーヴェンは難聴で、ほとんど耳が聴こえていなかったはずです。それにもかかわらず、これほど素晴らしい作品群を残していることに驚きを禁じ得ません

3回目のサイクルのこの日、演奏する側のクス・クァルッテットの4人も、聴いている側のわれわれも、会場の雰囲気に慣れてきたように思います

    

     

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「Enjoy!室内楽アカデミー・フェロー演奏会1」を聴く~メンデルスゾーン「弦楽四重奏曲第2番」第1楽章、シューベルト「弦楽四重奏曲第13番」第1楽章、ブラームス「ピアノ五重奏曲」第1楽章他

2019年06月09日 07時23分13秒 | 日記

 9日(日)その1.わが家に来てから今日で1710日目を迎え、陸上の全米大学選手権が7日、テキサス州オースティンで行われ、男子100メートル決勝で、サニブラウン・ハキーム(20)=フロリダ大=が9秒97(追風0.8メートル)をマークし3位に入り、日本記録を0秒01更新した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     昔々その昔 ご主人様は高校2年の大会で100メートル11秒6で予選落ちしたそうだ

 

         

 

昨日、サントリーホール「ブルーローズ」で、午前11時から「Enjoy!室内楽アカデミー・フェロー演奏会1」を、午後7時からクス・クァルテットの「ベートーヴェン・サイクルⅢ」を聴きました ここでは、「Enjoy!室内楽アカデミー・フェロー演奏会1」について書きます 

「サントリーホール室内楽アカデミー」は2010年10月に開講しました フェロー(受講生)たちはファカルティ(指導者)から演奏技術や室内楽奏者としての基礎を学んでいきます その成果を発表する機会の一つがこのチェンバーミュージック・ガーデンの演奏会です

プログラムは①メンデルスゾーン「弦楽四重奏曲第2番 イ短調 作品13」より第1楽章、②シューベルト「弦楽四重奏曲第13番 イ短調 D.804”ロザムンデ”」より第1楽章、③ヤナーチェク「弦楽四重奏曲第1番”クロイツェル・ソナタ”」、④スメタナ「ピアノ三重奏曲 ト短調 作品15」より第1・第3楽章、⑤細川俊夫「開花」、⑥ブラームス「ピアノ五重奏曲 ヘ短調 作品34」より第1楽章です 演奏は、サントリーホール室内楽アカデミー・フェロー、ピアノ=練木繁雄夫です


     


自席はC6列12番、センターブロック右通路側です

1曲目はメンデルスゾーン「弦楽四重奏曲第2番イ短調作品13」より第1楽章「アダージョ~アレグロ・ヴィヴァーチェ」です この曲はフェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)が1827年に作曲した作品です

演奏するチェルカトーレ弦楽四重奏団は、第1ヴァイオリン=戸澤采紀(藝大1年)、第2ヴァイオリン=開朋岳(東京音大特待生)、ヴィオラ=中村詩子(藝大3年)、チェロ=牟田口遥香(藝大2年)というメンバーです

4人は、メンデルスゾーンの短調の曲に特有のほの暗い情熱を醸し出していました 4人とも良かったと思いますが、特に戸澤さんと中村さんの演奏が印象に残りました

2曲目はシューベルト「弦楽四重奏曲第13番 イ短調 D.804 ”ロザムンデ”」より第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」です この曲はフランツ・シューベルト(1797-1828)が1824年に作曲した作品です 第2楽章に付随音楽「キプロスの女王ロザムンデ」作品29・D797の音楽を借用しているので、この通称で呼ばれています

1曲目と同じチェルカトーレ弦楽四重奏団により演奏に入ります 冒頭のメロディーを聴くと「シューベルトは何と哀しい音楽を書くのだろうか」と思いますが、次第に明るみを帯びてきます シューベルトらしく冒頭のテーマが手を変え品を変え何度か繰り返されますが、不思議と飽きが来ません 演奏を聴きながら、多くの名曲を残して31歳の若さで逝ったシューベルトのことを想いました

ここでヴィオラの中村さんがマイクを持って挨拶し、アカデミーの現状について「第5期生として、昨年9月から月2回のペースでファカルティからレッスンを受けている」旨を説明し、次の演奏曲目ヤナーチェク「クロイツェル・ソナタ」について、「この曲はヤナーチェクがトルストイの小説『クロイツェル・ソナタ』に触発されて書いたものですが、その小説はベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ『クロイツェル』に触発されて書いたものです 音楽から文学へ、文学から音楽へという珍しい連関があります」と解説しました カンペを見ながらの説明でしたが、非常に落ち着いていて分かり易く 好感が持てました

3曲目はヤナーチェク「弦楽四重奏曲第1番 ”クロイツェル・ソナタ” 」です この曲はヤナーチェク(1854-1928)が1923年に作曲した作品です 第1楽章「アダージョ~コン・モート」、第2楽章「コン・モート」、第3楽章「コン・モート~ヴィーヴォ」、第4楽章「コン・モート(アダージョ)」の4楽章なら成ります

演奏するアミクス弦楽四重奏団のメンバーは、第1ヴァイオリン=宮川奈々(N響)、第2ヴァイオリン=宮本有里(藝大フィルハーモニア)、ヴィオラ=山本周、チェロ=松本亜優です

この曲を聴くのは初めてですが、非常に面白い曲だと思いました とくに第3楽章の冒頭では、ヴァイオリンが美しいメロディーを奏でていると、ヴィオラがそれを邪魔するかのように”汚い”音で強く演奏されます この部分は小説の中の何かのシーンを想定しているのだろうな、と思ったりしました

演奏後、チェロの松本さんが、マイクを持って次の演奏者と曲目を紹介しましたが、スメタナの曲は娘の死の直後に作曲されたそうです

次の曲はスメタナ「ピアノ三重奏曲 ト短調 作品15」より第1楽章「モデラート・アッサイ」、第3楽章「フィナーレ:プレスト」です。この曲はスメタナ(1824-1884)が1855年に作曲した作品です

演奏するトリオ・デルアルテのメンバーは、ヴァイオリン=内野祐佳子、チェロ=河野明敏、ピアノ=久保山菜摘です このトリオは昨年から私が一番評価しているユニットです とくにヴァイオリンの内野さんは会田莉凡さん以来の逸材ではないかと思います

第1楽章はヴァイオリンの独奏から入りますが、内野さんのヴァイオリンの音の大きさと演奏技術の巧さに圧倒されます その辺のヴァイオリニストとはスケールが違う、という印象を与えます この楽章は「慟哭」のひと言です。ピアノの久保山さんも負けていません。もちろんチェロの河野君も前に出ます。このトリオは素晴らしいです


     


休憩後のプログラム後半の1曲目は細川俊夫「開花」です 前半の最後に演奏したピアノの久保山さんがマイクを持って、「この曲は細川先生が2006年に作曲した作品で、仏教に所縁のある花、蓮が土の中から外に出て花を咲かせる有様を描いたものです」と説明しました

演奏するタレイア・クァルテットのメンバーは、第1ヴァイオリン=山田香子、第2ヴァイオリン=二村裕美、ヴィオラ=渡部咲耶、チェロ=石崎美雨で、東京藝大在学中の2014年に結成されました

曲は弱音を多用した緊張感に満ちた作品で、抑制された演奏がとても印象に残りました

最後の曲はブラームス「ピアノ五重奏曲 ヘ短調 作品34」より第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」です この曲はヨハネス・ブラームス(1833-1897)が1861年から1864年にかけて作曲、1868年にパリで初演されました

演奏は第1ヴァイオリン=宮川奈々、第2ヴァイオリン=宮本有里、ヴィオラ=山本周、チェロ=松本亜優、ピアノ=練木繁夫です

さすがにベテランのプロが入ると引き締まります 練木氏のピアノが全体に安定感をもたらします 4人の若者たちは練木氏の手のひらの上で演奏しているような感じです それでも、ピアノとの、あるいは弦楽器同士の丁々発止のやり取りは聴きごたえがあり、思わず演奏に合わせてメロディーを口ずさんでしまいました

午前11時に始まったコンサートは、20分の休憩を挟んで、午後1時5分に終演となりました 将来有望な若手演奏家の演奏を聴けて良かったです


     

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