21日(金)その2。 昨夕、サントリーホールでNHK交響楽団の第1917回定期演奏会(Bプロ)を聴きました プログラムはメシアン「トゥランガリラ交響曲」です 演奏はピアノ=ロジェ・ムラロ、オンド・マルトノ=シンシア・ミラー、指揮=パーヴォ・ヤルヴィです
ピアノ独奏のロジェ・ムラロは1959年リヨン生まれ。パリ国立高等音楽院でオリヴィエ・メシアンの夫人、イヴォンヌ・ロリオのクラスに入学しメシアンと出会い、作曲者本人から激賞され、メシアン弾きの第一人者として活躍するようになりました 一方、オンド・マルトノ独奏のシンシア・ミラーはイギリス出身の女性奏者ですが、世界各地のオケでメシアンのこの曲の独奏を担っています
「トゥランガリラ交響曲」は、オリヴィエ・メシアン(1908-1992)がクーセヴィツキ-財団の委嘱によりボストン交響楽団のために1946年から1948年にかけて作曲し、1949年12月2日にレナード・バーンスタイン指揮ボストン交響楽団による演奏で初演されました 委嘱者のクーセヴィツキ-はメシアンに「望むだけの楽器を使って、望むだけの長さの作品を」書くように言ったということで、通常の楽器編成に、ピアノ、チェレスタ、オンド・マルトノ、タムタム、シンバル、大太鼓などが加わった大編成オーケストラとなり、演奏時間も80分に及ぶ大曲になりました なお、トゥランガリラとはサンスクリットで「愛の歌」というような意味です
この曲は第1楽章「導入部」、第2楽章「愛の歌 第1」、第3楽章「トゥランガリラ 第1」、第4楽章「愛の歌 第2」、第5楽章「星たちの血の喜び」、第6楽章「愛の眠りの園」、第7楽章「トゥランガリラ 第2」、第8楽章「愛の展開」、第9楽章「トゥランガリラ 第3」、第10曲「終曲」の全10楽章から成ります
弦楽器は左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、その後ろにコントラバスという編成ですが、指揮者のすぐ左にピアノが、その後方にチェレスタとジュ・ドゥ・タンブル(グロッケンシュピールの仏語)が、反対の右側にはオンド・マルトノがスタンバイします オケの後方には打楽器群が左右に広がっています コンマスはミュンヘン・フィルのコンマスを務めるロレンツ・ナストゥリカ・ヘルシュコヴィチです
最初に正直に告白しておくと、私がこの曲を聴くのは生まれて初めてです CDは4000枚、LPは1500枚持っているというのに・・・・モーツアルトはCDとLP合わせて1000枚近く持っているというのに・・・・ベートーヴェン交響曲全集はフルトヴェングラー、クレンペラー、チェリビダッケ、セル、ワルター、スイトナー、ブロムシュテット、ケーゲル、コンビチュニー、クリュイタンス、ヘルシェン・・・・と10数種類も揃っているというのに・・・・メシアンは1枚も持っていません この片寄りようはどうでしょう ある曲が気に入ると、異なる演奏家のLPやCDを集めたくなる収集癖のせいです ”CDの百科事典”と言われるNAXOSのCDが売り出された時には、新発売のCDを片っ端から買い集め、カタログに掲載のCDを赤線で消していったものです 同じ曲で別の指揮者のCDを買わないで、NAXOSのCDだけをあのまま買い続けていれば、これほどの偏りは生じなかったと思います 今となっては後の祭りです
したがって早い話が、予習なしのぶっつけ本番で80分に及ぶこの曲を聴くことになったわけです 事前に「プログラム・ノート」を懸命に読み込むのはもちろんのこと、演奏中も「今どこを演奏しているのか」を確認しながらオケの発する音に耳を傾けることになります 特に、オンド・マルトノはスピーカーの前に拡声マイクが付けられているにも関わらず、音が良く聞こえないので、演奏者の指の動きを見ながら、いま鳴っている音がオンド・マルトノの音であることを確認することになります 自席が演奏者の左手の動きが見える位置なので良かったです
演奏を聴いていて、「プログラム・ノート」に書かれていた「この交響曲には4つの循環主題がある。トロンボーンの提示する重々しい『彫像の主題』、クラリネットの奏でる優しい『花の主題』、弦楽器あるいはオンド・マルトノが歌う恍惚とした『愛の主題』、そして、さまざまな響きの母体となる和音の連続である『和音の主題』。これらのモチーフが中心である」ということは、おぼろげながら分かりました
メシアンにおける適切なテンポはどの程度か よく分かりませんが、ヤルヴィは比較的速めのテンポでメリハリを付けながらサクサクと演奏を進めていったように思います 特に印象に残ったのは、ピアノ独奏のロジェ・ムラロの演奏です オケに負けない力強い演奏の一方で、第6楽章「愛の眠りの園」で示したような、煌めく星座のような弱音の魅力を活かした音楽作りがとても印象に残りました
私の課題は、次に「トゥランガリラ交響曲」を生演奏で聴く時は、事前にCDを買って予習しておくことです