人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ボローニャ歌劇場来日公演、ロッシーニ「セヴィリアの理髪師」を観る ~ アントニーノ・シラクーザ、セレーナ・マルフィ、ロベルト・デ・カンディア、マルコ・フィリッポ・ロマーノにブラボー!

2019年06月25日 07時10分31秒 | 日記

25日(火)。わが家に来てから今日で1726日目を迎え、北朝鮮の朝鮮中央通信は23日、金正恩朝鮮労働党委員長に米国のトランプ大統領から親書が送られてきたが、正恩氏は「立派な内容が盛り込まれている」と評価したと報じた という記事を見て 手紙の内容を想像するモコタロです

 

     

               「金ちゃん  俺たち独裁者同士で気が合うね  またどこかで飲もうよ」トランプより

     

         

 

昨日は涼かったので、夕食に「クリームシチュー」と「生野菜と生ハムのサラダ」を作りました シチューは豚ブロック肉と野菜です。胡椒を振って食べると美味しいです

 

     

 

         

 

昨日、渋谷のオーチャードホールでボローニャ歌劇場来日公演、ロッシーニ「セヴィリアの理髪師」を観ました 出演は、アルマヴィーヴァ伯爵=アントニーノ・シラグーザ、フィガロ=ロベルト・デ・カンディア、ロジーナ=セレーナ・マルフィ、ドン・バルトロ=マルコ・フィリッポ・ロマーノ、ドン・バジジオ=アンドレア・コンツェッティ、ベルタ=ラウラ・ケリーチほか。管弦楽・合唱=ボローニャ歌劇場管弦楽団・合唱団、指揮=フェデリコ・サンティ、演出=フェデリコ・グラッツィ―二です

そもそも、私がこの公演のチケットを買おうと思ったのは、ロジーナを歌うセレーナ・マルフィを生で見て聴きたいからです METライブビューイング2016-17シーズンのうち2016年10月22日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたモーツアルト「ドン・ジョバンニ」でツェルリーナを歌った時の映像を観て、すっかりファンになりました セレーナ・マルフィはイタリアのナポリ生まれで、サンタ・チェチーリア音楽院で学び、2009年にチューリヒ歌劇場でサリエーリ「トロフォー二オの洞窟」でオペラデビュー。以後、パリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、英ロイヤル・オペラなどに出演、METには2014年エド・デ・ワールト指揮「フィガロの結婚」のケルビーノ役でデビューしました

イタリア、シチリア島出身のアントニーノ・シラグーザは何度か聴きました 印象深いのは2011年9月24日のボローニャ歌劇場来日公演のベッリーニ「清教徒」です 声帯の異常により来日不能となったフアン・ディエゴ・フローレスに代わってアルトゥーロを歌いました この年は3月に起きた東日本大震災と東電の原発事故の影響で、ヨナス・カウフマンも来日せず、同じ年に来日したメトロポリタン歌劇場でも、アンナ・ネトレプコはじめ有力な歌手が来日しませんでした 私もフローレスとネトレプコでは悔しい思いをしました なお、シラクーザは新国立オペラでも「セヴィリアの理髪師」のアルマヴィーヴァ伯爵を歌っており、これも聴きました 有料プログラムに掲載のインタビューによると、シラクーザは「アルマヴィーヴァ伯爵」を340回も歌ったそうで、日本だけでも十数回歌ったということです あらまぁビヴァ・イタリアと叫びたくなります。息子の学校で「お父さんの職業について」という宿題が出た時、「僕の父はセヴィリアの理髪師をしています」と書いたそうです。”利発”なお子さんですね

ロベルト・デ・カンディアはイタリア南部プーリア州の出身で、1999年に新国立オペラで「マノン・レスコー」のレスコーを歌って以来、来日が多くなっています 最近では、昨年11月に新国立劇場で「ファルスタッフ」のタイトルロールを歌い、喝さいを浴びました

 

     

 

「セヴィリアの理髪師」は、ジョアッキーノ・ロッシーニ(1792-1868)が1816年に作曲した2幕4場からなる喜劇オペラです

原作の戯曲はフランスの作家ボーマルシェにより1775年に書かれました 「セヴィリアの理髪師」はモーツアルトが1786年にオペラ化した「フィガロの結婚」の登場人物たちの若い頃が描かれています 時系列で言うと、モーツアルトの作曲から30年後にロッシーニが作曲したという関係になります この2作品は、後に書かれた「罪ある母」と合わせて「ボーマルシェ3部作」と言われています

舞台はスペインのセヴィリア。アルマヴィーヴァ伯爵はプラドで見かけた娘ロジーナに一目ぼれし、パルコニー下でセレナードを歌うが、あえなく失敗する そこへ”町の何でも屋”フィガロが登場する。彼は伯爵に、ロジーナの後見人の医師バルトロが彼女を妻にしようと目論んでいることを告げる 伯爵は窓辺に現れたロジーナに、正体を隠して貧乏な学生のリンドーロと名乗る そしてフィガロに、礼金をはずむから手を貸してくれと頼む。ロジーナはリンドーロとの結婚に希望を抱く 音楽教師バジリオは、バルトロの恋のライバルとなる伯爵の中傷を流そうと提案する そこに酔いどれ兵士に変装した伯爵が乱入する。しかし、騒ぎすぎたため軍隊がやってきて大騒ぎになる(以上、第1幕)

伯爵がバジリオの弟子に化けてバルトロ邸にやってくるが、変装がばれて追い出されてしまう さらに、バルトロはロジーナに「リンドーロはお前を伯爵に売るつもりだ」と嘘を吹き込み、落胆した彼女はバルトロとの結婚を承諾してしまう 嵐の夜、フィガロとリンドーロに扮した伯爵はロジーナの部屋に忍び込む。そして伯爵がリンドーロは自分だと正体を明かすとロジーナは大感激する 2人はバジリオから取り上げた書類に署名し、結婚が成立する バルトロは兵士を連れてくるが、伯爵は無駄な抵抗を止めるように命令する。最後はバルトロも諦め、皆で2人を祝福して幕が降りる(以上、第2幕)

 

     

 

自席は1階9列13番、センターブロック左通路側です 9列といっても、オーケストラ・ピットが7列までを占めているので、実質的に2列目です。かなり理想に近い席です セレーナ・マルフィ―を見て聴くために根性で押さえました

指揮者フェデリコ・サンティが指揮台に上がり「序曲」が演奏されます この序曲は旧作「パルミラのアウレリアーノ」からの転用ですが、まるで「セヴィリアの理髪師」の内容を凝縮したかのように軽快で、ロッシーニ・クレシェンドの魅力に満ちた音楽です この演奏を聴いただけでも、このオーケストラが極めて優れていることが分かります。とくに弦楽のカンタービレがとても美しく響きました

幕が開くと、極めてシンプルで原色を強調した舞台が現われます

第1幕での聴きどころは、まずアルマヴィーヴァ伯爵がロジーナの部屋の窓辺の下で歌う「もしも私の名を知りたければ」です シラクーザは自らギターを弾いて情感豊かにカンツォーネを歌います

次にフィガロが登場し、自己紹介のアリア「町の何でも屋に道を開けろ」がロベルト・デ・カンディアによって威勢よく歌われます このフィガロは存在感があります

そして、いよいよロジーナの登場です セレーナ・マルフィはカヴァティーナ「今の歌声は」を魅力的な深いメゾソプラノで歌い上げます 歌は申し分ないのですが、鬘のような重めのヘアスタイルとポップ調の軽めの衣装がアンバランスに感じ、本人に可哀そうな気がしました 彼女の”素材”を活かしたナチュナルなヘアスタイルと衣装が似合うように思います

次の聴きどころは、ドン・バジリオのアリア「陰口はそよ風のように」です アルマヴィーヴァ伯爵は悪い奴だという噂をフェイクニュースとして広めようというアリアですが、フランケンシュタインのような容貌にメイキャップしたアンドレア・コンツェッティがドスの効いた声で歌うと、噂が次第に力を増して伯爵が致命的な打撃を受けるような気になります

そして、バルトロのアリア「私のような医者に向かって」がマルコ・フィリッポ・ロマーノによって早口で畳みかけるように歌われます これには聴いている方が舌を巻きます

 

     

 

第2幕での聴きどころは、まず、酔っ払いの真似をした伯爵とバルトロによる二重唱「平和と喜びがあなたにありますように」です このシーンはいつ見ても笑ってしまいます

次いで、ロジーナが歌のレッスンで歌うアリア「愛に燃える心」をセレーナ・マルフィが技巧を凝らして情熱的に歌い上げます

女中のベルタが唯一歌う「年寄りは妻を求め」は年老いた女性の悲哀を歌った短いアリアですが、ラウラ・ケリーチは滑稽ながらも寂し気に歌いました

このオペラの最大の聴きどころは、フィナーレ直前の伯爵のアリア「もう逆らうのはやめろ」です ロッシーニ・テノールのシラクーザは裏切りません 超絶技巧の長い長いアリアを見事にクリアします 会場は拍手喝采、阿鼻叫喚、千客万来(何のこっちゃ)で、拍手とブラボーの嵐が鳴り止みません ついに、「今日は東京での最終公演だからやっちゃおうか」とばかりにアンコールに応えます シラクーザは日本語で「ちょっと待って」と言って、息を整え、もう一度、超絶技巧アリアを歌いました 途中、舞台脇でピーナッツ(?)を食べながら聴いていたフィガロ役のカンディアが客席に向かって手拍子をリードしたので、聴衆は「ウィーン・フィルのラデツキー行進曲かい」と思いながらも、その気になって手拍子に打ち興じました 2回目を歌い終わったシラクーザはその場にへたり込んで犬のようになっていました 2日後の福岡公演大丈夫かな、と私は密かに心配したのでございました

オペラはその後、フィナーレに入ります 合唱付きのアンサンブルで「かくも幸せな結び付きを」が全員で歌われ、楽しい楽しいオペラの幕を閉じました

この日の公演はセレーナ・マルフィが聴ければ良いと思っていましたが、主役級の歌手陣が揃って好調で、オーケストラの演奏も良かったので、全体的には満足の公演でした

セレーナ・マルフィはモーツアルトやロッシーニを得意としていますが、現在レパートリーを広げつつあるようです プログラム掲載のインタビューで「いまロッシーニやモーツアルトを歌う機会が多いですが、近い将来,ドニゼッティ、あるいは『ウェルテル』『カルメン』などフランス・オペラも歌いたいと思っています 歌い始めたころと比べて声が発展し、大きく力強くなりましたからね でも、ロッシーニやモーツアルトは歌い続けますよ」と語っています。個人的な希望を言うと、まず今以上に演技力(とくに自分が演技をしていない時の演技力)を磨いた上で、ロジーナ路線ではモーツアルト「フィガロの結婚」のスザンナを歌って欲しいと思います ウィットに富んだ魅力的なスザンナになるでしょう その後、ビゼーの「カルメン」を歌って欲しいと思います 魅惑的な世界最強のカルメンになると思います

 

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