人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

クス・クァルテット「ベートーヴェン・サイクルⅣ」を聴く ~ 弦楽四重奏曲第15番、同第13番「大フーガ付」:サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン

2019年06月12日 07時19分04秒 | 日記

12日(水)その2.よい子は「その1」も見てね。モコタロはそちらに出演しています

 

         

 

昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」で、クス・クァルテット「ベートーヴェン・サイクルⅣ」を聴きました    プログラムはベートーヴェン①「弦楽四重奏曲 第15番 イ短調 作品132」、②「同第13番 変ロ長調 作品130『大フーガ付』」です

 

     

 

ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲は第12番から第16番までですが、構成楽章は作曲順に第12番 作品127(4楽章)、第15番 作品132(5楽章)、第13番 作品130(6楽章)、第14番 作品131番(7楽章)、第16番 作品135(4楽章)となっています   これからも分かるように、後にいくにしたがって楽章が増えていき、最後に元の4楽章に戻っています これだけを取っても、いかにベートーヴェンが最後まで実験精神を失わなかったかが分かります

サイクル4日目の1曲目は「弦楽四重奏曲 第15番 イ短調 作品132」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1824年から25年8月までに作曲し、25年11月6日にウィーンでシュパンツィク四重奏団により初演されました 作曲中に持病が悪化したため一時中断されましたが、その後回復し作曲が再開されました 終楽章は当初第9交響曲の第4楽章として構想されていたと言われています

第1楽章「アッサイ・ソステヌート~アレグロ」、第2楽章「アレグロ・マ・ノン・タント」、第3楽章「(病癒えた者の神への聖なる感謝の歌)モルト・アダージョ ~(新しい力を感じて)アンダンテ」、第4楽章「アラ・マルチャ、アッサイ・ヴィヴァーチェ~ピゥ・アレグロ」、第5楽章「アレグロ・アパッショナート」の5楽章から成ります

第1ヴァイオリンのヤーナ・クスのリードで演奏に入りますが、全体を通してイマイチ乗り切っていない”違和感”を感じます   これは第1日目、第2日目の前半にも感じたことです    4人はストラディバリウス・コレクション「パガニーニ・クァルテット」を借り受けて演奏していますが、十分に弾きこなされていない、つまり楽器が思うように鳴っていないような気がします これは私だけなのかどうか、分かりません そんな中で、第3楽章「(病癒えた者の神への聖なる感謝の歌)モルト・アダージョ ~(新しい力を感じて)アンダンテ」は、ベートーヴェンが病気から快復したのは神のお陰という、神への感謝の気持ちが表れていて とても癒やされる演奏でした


     


プログラム後半は「同第13番 変ロ長調 作品130『大フーガ付』」です この曲は1825年8月にウィーンで完成し、1826年3月21日にシュパンツィク四重奏団により初演されました 第1楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ~アレグロ」、第2楽章「プレスト」、第3楽章「アンダンテ・コン・モート・マ・ノン・トロッポ」、第4楽章「ドイツ舞曲風に。アレグロ・アッサイ」、第5楽章「カヴァティーナ:アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ」、第6楽章「大フーガ」の6楽章から成りますが、各楽章の長さは極端に異なります アルバン・ベルク四重奏団のCDを例に取れば、第1楽章:約10分、第2楽章:約2分、第3楽章:約7分、第4楽章:約3分、第5楽章:約7分、第6楽章:約16分となっています   ベートーヴェンが いかに自由に書いているかが分かります

なお、この曲は当初この日の演奏のように、終楽章に「大フーガ」を置いて演奏されましたが、当時の聴衆には難しすぎたため、出版社は楽譜の売れ行きを心配し、ベートーヴェンの仲間を通じて別のフィナーレを書くように依頼した結果、彼はこれを受け入れ、軽快なアレグロのフィナーレを作曲し、「大フーガ」は作品133として単独で出版されました

4人の演奏で第1楽章に入りますが、どうしたことでしょう 前半の第15番とは打って変わって、冒頭からフィナーレまで、4人のアンサンブルは素晴らしく、楽器が良く鳴っていました

この曲はスケルツォあり、ドイツ舞曲あり、カヴァティーナありと各楽章に大きな変化があり、目先がクルクル変わるので聴いている方は楽しくてしかたがありません 第5楽章のカヴァティーナは何度聴いても感動します 宗教的な極致に達した音楽と言えるかもしれません また、第6楽章「大フーガ」は、冒頭から緊張感に満ちた演奏が展開し、ベートーヴェンの厳しさと包容力の大きさを感じました

前述の通り、ベートーヴェンは周囲からの説得により、終楽章の「大フーガ」に代わる「アレグロ」の軽快な音楽を、最後の弦楽四重奏曲「第16番ヘ長調作品135」の後に作曲しました 私は「大フーガ」と同じくらいこの軽快な「アレグロ」が好きです したがって、私の希望としてはサイクル第5回目(最終回)にマントヴァーニの作品を入れるより、第13番の第6楽章を「アレグロ」版で演奏して、「大フーガ」は単独の作品として演奏してほしかったと思います

 

     

 

ところで、休憩後にクス・クァルテットの4人がステージでスタンバイし、第13番の演奏が開始されようとしていた時のことです 彼らが弓を上げようとした時、会場の後方から「ピ ピ ピ ピ ピ」というアラーム音が鳴り出しました ケータイの電源、あるいは時計のアラーム・スイッチを切っていない証拠です ステージ上の4人にもはっきりと聴こえたようで、第1ヴァイオリンのヤーナ・クスさんに至ってはクスっと苦笑し、ヤーナ人ね という表情を見せていました くれぐれもケータイの電源や時計のアラーム・スイッチは事前に切るようにしましょう


     

コメント (4)
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METライブビューイングでプーランク「カルメル会修道女の対話」を観る ~ イザベル・レナード、カリタ・マッティラ、エイドリアン・ピエチョンカ、エリン・モーリー、カレン・カーギルにブラボー!

2019年06月12日 07時04分38秒 | 日記

12日(水)その1.わが家に来てから今日で1713日目を迎え、麻生太郎金融担当相は11日の閣議後の記者会見で、老後の生活費が2000万円必要だと明記した金融庁の報告書について、「正式な報告書としては受け取らない」と述べ、受理しない考えを明らかにした というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                 報告書を受け取ろうが受け取るまいが 年金だけだと2000万円不足なんでしょ!?

 

         

 

昨日、夕食に「牛肉とブロッコリ―のオイスター炒め」と「トマトとレタスの卵スープ」を作りました 牛肉はカルビでなくハラミを使いましたが、柔らかくて美味しいです

 

     

 

         

 

昨日午前10時から新宿ピカデリーでMETライブビューイング、プーランク「カルメル会修道女との対話」を、午後7時からサントリーホール「ブルーローズ」でクス・クァルテット「ベートーヴェン・サイクルⅣ」を聴きました ここではMETライブ「カルメル会修道女との対話」について書きます

METライブビューイング 2018 -2019 シーズンの最後を飾る、プーランクの歌劇「カルメル会修道女との対話」は、今年5月11日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です   キャストは、ブランシュ・ド・ラ・フォルス=イザベル・レナード、クロワシー夫人/修道院長=カリタ・マッティラ、リドワーヌ夫人(新修道院長)=エイドリアン・ピエチョンカ、コンスタンス=エリン・モーリー、マリー修道女長=カレン・カーギル、ド・ラ・フォルス侯爵=ジャン=フランソワ・ラポワント(ドゥウェイン・クロフトの代演)。管弦楽・合唱=メトロポリタン歌劇場管弦楽団、同合唱団、指揮=ヤニック・ネゼ=セガン、演出=ジョン・デクスターです


     


「カルメル会修道女の対話」はフランシス・プーランク(1899-1963)が1956年に、ドイツの作家ル・フォールの小説「断頭台の最後の女」を原作にジョルジュ・ベルナノスの台本により作曲したオペラです フランス革命期の恐怖政治下のパリで、宗教弾圧により殉教した16人の修道女たちを描いた史実に基づく悲劇です

時は1789年4月、フランス革命勃発直前のパリ。暴徒に襲われ、命からがら逃げ帰った母から生まれたド・ラ・フォルス侯爵の令嬢ブランシュは、極度に怯える性格だった 俗世間での生活に不安を覚えたフランシュは、父の許しを得てコンビエーニュにあるカルメル会の修道院に入り、修道院長と同じ「キリストの死の苦しみのブランシュ」という修道女名を授かる 修道女仲間のコンスタンスは、ブランシェに「私たちは同じ日に死ぬ予感がする」と告げる。ブランシェは、病室で修道院長のクロワシ―夫人が神を呪って絶命する場面を目撃する(以上第1幕)

コンスタンスは、修道院長の死は誰かの運命だった辛い死を代わりに引き受けたのではないかと漏らす 修道院長の死により、リドワーヌ夫人が新たに修道院長となる。やがて革命の不穏な空気は修道院にも伝わり、ブランシェの兄は妹に家に帰るよう勧め、彼女は動揺する 政府は修道院の解散と建物の売却を決め、司祭は追放され、修道女たちは棄教を迫られる(以上第2幕)

カルメル会の存続と国の救済のため、修道女たちは殉教を決意する。怯えたブランシュは逃亡し屋敷に戻るが、父の侯爵は捕らえられ処刑された 屋敷を占拠した暴徒たちの下女としてこき使われるブランシェは、カルメル会の修道女たちが逮捕されたことを知る。処刑の日、次々と断頭台に上がる修道女を見守る群衆の中から、ブランシェが現われる(以上第3幕)


     


実は、6年以上前にオペラ座研修生修了公演でこのオペラを観たことがあるのですが、初めて観るオペラであり、歌い手が研修生で、舞台も極めて簡素だったこともあり、あまりの退屈さに嫌気がさして第1幕だけ観て帰ってきてしまいました そういうこともあって「カルメル会修道女との対話」は私にとって苦手なオペラになっていました 今回のMETライブは休憩10分を含めて3時間17分と長丁場なので、最後まで観ていられるかどうか不安がありました しかし、その不安は指揮者ヤニック・ネゼ=セガンの見事な統率力と優れた歌手陣とシンプルながら重厚な舞台作り・演出によって払拭されました

ヒロインのブランシュ・ド・ラ・フォルスを歌ったイザベル・レナードは、1982年ニューヨーク生まれのメゾソプラノですが、華のある美貌に恵まれ、歌唱力・演技力ともに説得力があります ロッシーニやモーツアルトの歌劇での喜劇的な役柄も似合いますが、今回のような悲劇のヒロインもピッタリです

驚いたのはクロワシー夫人/修道院長を歌ったカリタ・マッティラです フィンランド生まれのドラマティック・ソプラノですが、強靭な美声と迫真の演技力で聴衆を圧倒します 今回がタイトル・デビューだそうですが、とても信じられないくらい堂に入った演技力です

リドワーヌ夫人(新修道院長)を歌ったエイドリアン・ピエチョンカは1963年まれのドラマティック・ソプラノですが、強靭な中にも温かみのある歌唱が魅力です

コンスタンスを歌ったエリン・モーリーは1980年アメリカ生まれのコロラトゥーラ・ソプラノですが、伸びのある美しい高音が心地よく響きます

マリー修道女長を歌ったカレン・カーギルはスコットランド生まれのメゾソプラノですが、恵まれた体格から出るパワフルな歌唱は余裕さえ感じさせます

降板となったドゥウェイン・クロフトに代わってド・ラ・フォルス侯爵を歌ったジャン=フランソワ・ラポワントはカナダ出身のバリトンで、今回がMETデビューとなりますが、情緒不安定な娘を持つ父親を見事に演じ歌いました

特筆すべきは 2018-2019シーズンから MET音楽監督を務めているヤニック・ネゼ=セガン指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団の演奏です 歌手にしっかりと寄り添いつつ、メリハリのある音楽作りで聴衆を飽きさせません 幕間のインタビューでは歌手陣からの信頼の声が寄せられていました

今回初めてこの作品を通して観て思うのは、研修所公演などでこのオペラを上演してはならない、ということです 「オペラ」というより「受難劇」と言った方が相応しい 宗教を扱った作品だけに、歌手陣、演出・舞台、指揮者のすべてが一定レヴェルを超えていないと、聴衆はすぐに飽きがきます

「カルメル会修道女との対話」をもってMETライブビューイング2018‐2019シーズンも終了です 今秋から始まる2019‐2020シーズンのラインアップは下のチラシの通りです 最大の呼び物はアンナ・ネトレプコがタイトルロールを歌うプッチーニ「トスカ」でしょう 指揮者と演出家の組み合わせではヤニック・ネゼ=セガン指揮、フランコ・ゼフィレッリ演出によるプッチーニ「トゥーランドット」でしょう このほか、全10作品のうち5作品が新演出での上演というのもMETの意欲を感じさせるラインアップです


     

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