人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

クラシック音楽の日 〜 昨日だったけど / 吉田大八監督「騙し絵の牙」を観る 〜 作家・塩田武士が大泉洋をイメージして書いた小説の映画化 / 芥川賞・直木賞の舞台裏 〜 NHK BSプレミアム

2021年09月05日 07時19分53秒 | 日記

5日(日)。昨日の朝日朝刊にユニバーサル・ミュージックという会社の全面広告が載っていました その一角に「私のお気に入り」コーナーがあり、6人の演奏家らがお気に入りの音楽を語っています ジャズ・ピアニストの上原ひろみさんはホルヘ・ボレットの「愛の夢〜リスト:ピアノ名曲集」、小曽根真さんはフリードリヒ・グルダの「モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番・第21番」、桑原あいさんはカルロス・クライバーの「ブラームス:交響曲第4番」といった具合です いずれのCDも持っているので親近感が湧きます コメントで同感できたのは小曽根真氏の「モーツアルト」です。彼は次のように語っています

「楽譜を通して出逢ったモーツアルトの音楽は、型にはまらず自由でウィットに富み、余分な自己顕示は全くない素晴らしい音楽 そのスピリットはジャズ屋の僕らが目指す究極の音楽そのもの その至高の音楽は、実は楽譜に書かれている音符さえ、即興で演奏するのと同じように その瞬間に生まれる音楽であることを教えてくれた    だからモーツアルトは僕が心から尊敬する恩師

とくにフリードリヒ・グルダの演奏で聴くと、一層 小曽根氏のコメントの通りだと感じます

ところで、この全面広告の一番目立つ右上のところに「9月4日はクラシック音楽の日」と書かれていました 「いったい誰がいつそんなことを決めたんだ? おれ、聞いてねーし」と思って、ネットで調べてみました それで判ったことは、「日本マネージャー協会(現・日本クラシック音楽事業協会)が1990年8月19日に、創立40周年を記念して、『ク(9)ラシ(4)ック』の語呂合わせから9月4日を『クラシック音楽の日』と制定した」ことが分かりました それにしても、日本は語呂合わせによる「〇〇の日」が如何に多いことか 9月だけでも2日=クジの日、4日=櫛の日、6日=クロスワードの日、9日=救急の日、29日=保険クリニックの日・・・と5日もあります もういい加減にしてほしい 語呂合わせや駄洒落は嫌いです

ということで、わが家に来てから今日で2430日目を迎え、菅義偉首相が不出馬を表明した自民党総裁選は、首相の立候補を念頭に動きを控えていた有力者が出馬する公算が大きくなったことから構図が一変することになる  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     誰が総裁になっても管よりマシという現状では  一番困るのはバラバラな野党だろう

 

         

 

昨日、新文芸坐で吉田大八監督による2021年製作映画「騙し絵の牙」(113分)を観ました

出版不況の波にもまれる大手出版社「薫風社」では、創業一筋の社長が急逝し、次期社長の座をめぐって権力争いが勃発した そんな中、専務の東松(佐藤浩市)が進める大改革によって、売れない雑誌は次々と廃刊のピンチに陥る カルチャー誌「トリニティ」の変わり者編集長・速水暉也(大泉洋)も、無理難題を押し付けられて窮地に立たされるが、次々に起死回生の奇策を打ち出していく

 

     

 

【以下、ネタバレ注意】

この映画は、作家・塩田武士が大泉洋をイメージして主人公を「当て書き」した小説を、大泉の主演で映画化した作品です それだけに、騙し騙されの連続の中で最後に出し抜くのは主人公の速水だと思い込んでいましたが、見事に裏切られました まさか若手編集者・高野恵(松岡菜優)に大ベストセラーを持っていかれるとは思いませんでした 高野と言えば、恵の父・高野民生(塚本晋也)は街の小さな書店を営んでいますが、顧客との間で印象的なシーンがあります ある日、母子が絵本を買いに来ます。あいにくその絵本は売り切れて店にはありません しかし、民生は「明日届きます」と伝えます。母親はそれを待つことにしますが、街の小さな書店で、注文の翌日に本が届くことはあり得ません 出版社と書店の間には取次会社(日販、トーハン等)があり、書店に届くまで数日かかるからです。恵が「明日届くわけないでしょ」と言うと、民生は図書カードを見せて「今から紀伊国屋に行って買ってくるわ」と答えます 恵が「それじゃ、利益が出るどころか交通費分持ち出しになってしまうでしょ」と言うと、「こんな小さな本屋にわざわざ買いに来てくれるんだから、有難いと思わないと」と答えます。このシーンを見て、街の本屋さんの地元の読者への愛情を感じました IT技術の進歩に伴い活字離れが進み「本が売れない時代」となって長い時間が過ぎました 現代は書店に行って本を買わなくても、1クリックするだけで欲しい本が自宅に届けられる Amazon 全盛の時代になっています ますます書店経営の難しさを感じます しかし、本作で高野恵は「高くても良いものは売れる」という信念のもと、自分の選んだ良書を揃えて書店を開きます その店がいつまで続くか、応援しながら見守りたくなるラストでした

 

         

 

ちょうどタイミング良く、昨夕7時半からNHK BSプレミアム「決戦!タイムリミット」という番組で、今年7月14日の「第165回芥川賞・直木賞選考委員会の舞台裏」を放送していたので、思わず最後まで観てしまいました 番組では最初に、現在1か月の間にまったく本を読まない人が5割近くに達しているという出版業界の危機的状況が指摘され、その後、今回の両賞の舞台裏が紹介されました 芥川賞・直木賞は出版業界にとっては大きなビジネスチャンスです 6月に両賞の候補作=5社10作品が発表されて以降、受賞を見越した各出版社や書店は水面下でどういう戦略を取ってきたのか? さらに編集者、印刷会社、製本会社はどのような対応を図ってきたのか? 結果の発表を待つそれぞれの作家の思いはどんなものか?ーなど、NHKは全国14カ所33台のカメラとインタビューで その舞台裏に迫っていました 最後まで観て一番印象に残ったのは、問題作と評される犯罪小説「テスカトリポカ」で直木賞を受賞した佐藤究氏が語っていた「黙っていても本が売れる時代は良かったが、今はそういう時代ではない    本が読まれなくなった現在、出版業界は自ら変わっていかなければならない」という言葉です

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